表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/208

第27話 クソ坊主

 騒動そうどうおさまって、かたづけられたテントの中。

 テーブルをかこむようにこしを下ろした私達は、さきに口をひらいたベルザークさんに視線しせんそそいだのです。


「さて。色々(いろいろ)とありましたが、あらためて、この貴重きちょう会合かいごう再開さいかいするといたしましょう!」

「どうしてベルザーク殿どのが、この仕切しきっているのですか?」

「おしませんか? とはいえ、このにおいてもっと公平こうへいに話をすすめることができるのは、私だと思うのですがねぇ」


 両手りょうてひろげながら得意とくいげにげたベルザークさん。

 でも、カルミアさんはまだ納得なっとくしてないみたい。


 実際じっさい、どうなのかな?

 彼が公平こうへいに話を進めることができるなんて、思えないけどなぁ。


「おい、こりゃあ一体いったいどういうことだよ」

「アタシ達を、その貴重きちょう会合かいごう招待しょうたいするなんて……やはり、邪教徒じゃきょうとのすることは理解りかいくるしみますね」

「それはおたがいさまというものでしょう。もっとも、そのような者共ものどもですら、われらが解放者様リリーサーさまは、対等たいとうはなしきたいとのぞまれているのです。感謝かんしゃするのですね」

「はっ。だれがこんな小娘こむすめ感謝かんしゃするかよっ」


 小娘こむすめだなんて、失礼しつれいしちゃうよねっ。

 私の分身ぶんしんちゃんにけたくせに。

 まぁ、今も2人の背後はいごには分身ぶんしんちゃんを待機たいきさせてるから、いつでもねむらせることができるんだ。

 うん、だから今は、冷静れいせいになろう。


おこっても仕方しかたないしね。それに、このおちゃ美味おいしいし。ブッシュさん。カルミアさん。美味おいしいお茶、ありがとうございます」

「気に入ってもらえたのなら、良かった」

陛下へいかおっしゃとおりです。それに、先ほどは我々(われわれ)を守ってくれたのですから。これくらいなんてことも」

「おい、いつまで能書のうがきをつづけるつもりだ? はじめるなら早くしろよ」


 くろいお兄さんは、せっかちさんなんだね。

 一瞬いっしゅん、ベルザークさんが彼をにらんだけど、すぐに私の視線しせんに気が付いて笑顔えがおもどった。

 その笑顔えがお、ちょっとこわいんだけど。


「さて。なおして、今度こんどこそ再開さいかいいたしましょう。まず、今回こんかい会合かいごう目的もくてきを、簡単かんたん整理せいりしておきたいと思います」


 目的もくてき

 そんなものがあるの?

 準備じゅんびとかなくて、きゅうはじまった気がするけどな。


「まず! ブッシュ国王こくおう陛下へいか。あなた方はいやしくも、リグレッタ様をだまし、彼女の叡知えいちちから搾取さくしゅしようとたくらんでいた。その事実じじつみとめますか?」

「きっ! 貴様きさま!? ベルザーク! 無礼者ぶれいもの!」

「おいおい、どのあたりが公平こうへいなんだよ」

「やはり邪教徒じゃきょうとですね」


 やっぱり。公平こうへいなんて無理むりだよね。

 ベルザークさんってかなりの変人へんじんなんだろうなぁ。

 さっきの騒動そうどうで、結構けっこうたたかえる人だってことは分かったし、私達にはやさしくしてくれる。

 でも、基本的きほんてきに、人に対する対応たいおうがおかしいんだよね。


 あぁ~。もう。

 おこったカルミアさんとベルザークさんが、喧嘩けんかはじめちゃいそうだよ。

 これ、めれるのは私しかいないかんじだよね?


「ちょっと、ベルザークさん。ブッシュさんは私をだましたりしてないよ。おねがいがあるって、ちゃんと言ってたし。おちゃだってくれたんだから。それとカルミアさん。ちょっといてください。カルミアさんまでねむらせたくはないんです」


 どうせねむるなら、私がねむりたいよ。

 何も考えず、ぐっすりとね。

 そう言えば、ハナちゃんがさっきから欠伸あくびをしてる。

 目元めもとなみだかべて、可愛かわいいなぁ。


「……左様さようですか。リグレッタ様がそうおっしゃるのであれば、仕方しかたがありませんね。ブッシュ国王陛下こくおうへいか。先ほどの発言はつげんさせていただきます」

「っ……陛下へいか。よろしいのでしょうか」

「かまわん。けば彼は、北方ほっぽうのクレインきょうものだとか。であれば、うたがわれるのも無理むりはあるまい」

「分かりました。リグレッタ殿どの。取りみだしてもうわけありませんでした」


 うん。

 なんか良く分かんないけど、ブッシュおじいさんは気にしてないみたいだね。

 良かった。

 これでなんとか喧嘩けんか回避かいひできたね。


 でも、このままベルザークさんに話をまかせるのは、あぶない気が……。

 あ、もうはなはじめちゃってるし。


「ではつぎいやしくも襲撃しゅうげき仕掛しかけ、あっけなくとらわれたお前らの目的もくてきは、ズバリ、リグレッタ様のいのちであろう?」

「おいクソ坊主ぼうず。どのツラげて仕切しきってんだ? あぁ?」

「今のながれで、どうしてき下がれないのかしら? やはり、邪教徒じゃきょうと空気くうきめないのですね」


 うん。

 これはベルザークさんがわるいと思うよ。

 いや、私に視線しせんげられても、こまるんだけどさぁ。

「はぁ。もう、面倒めんどうくさいなぁ。えっと、ベルザークさんにまかせるとワケ分かんなくなるから、私が話を進めるね」


 ……誰も異論いろんはないみたいだね。

 ベルザークさんも異論いろんがないのは、何でなのかな?

 まぁ、いっか。

 それじゃあ、つづけよう。


「ブッシュさん。万能薬ばんのうやくが欲しいんですよね? その理由りゆう必要ひつようかず書面しょめんにまとめてもらってもいいですか? その内容ないようを見て、ちょっと考えますね」

承知しょうちした。リグレッタ殿どの感謝かんしゃする」

「いえいえ」


 まだ何もしてないしね。

 それじゃあ次は、おにいさんとおねえさんのほうだね。


「えっと、くろいおにいさんと、しろいおねえさん。2人は私にようがあるみたいだけど、何がしたかったの?」

「はぁ? んなの、お前のいのちに決まってるだろうが」

「私のいのち? ってことは、私にんでほしいってことでってる?」

「さすが、邪教じゃきょう根源こんげんですね。普通ふつう、そんな冷静れいせいかえせる話じゃないですよ」


 なんか、白いおねえさんにおどろかれちゃった。

 そう言えば、さっきから白いお姉さんが『じゃきょう』って言ってるけど、何のことだろ?

 それは後で聞くとして、う~ん。どうしようかな。


べつに、んであげてもいいんだけどさぁ。今は色々(いろいろ)いそがしいから、もう少しっててくれないかな?」

「「「……は?」」」


 テントないみんなこえかさなった。

 なんか、おどろかれてるけど、どうしたのかな。


「え、えっと、リグレッタさま? なにを言って」

「リグレッタ殿どのんでもいいというのは、どういう意味いみなのでしょうか?」

「え? そのままの意味いみだけど」

「けけけっ。おいクソ坊主ぼうず。やっぱりお前らの崇拝すうはいしてるやからは、イカレテやがるじゃねぇか!」


 どうしてかな、白黒しろくろの2人はちょっとうれしそうな顔してる。

 よっぽど私に死んでほしいんだね。

 まぁ、仕方しかたないんだろうなぁ。


「リ、リグレッタ様。そのようなこと、ゆるされるはずがありません! あなた様が、そんな簡単かんたんいのちとすなど」

「そうなの? でも、私はもりそとの人たちにとって、危険きけん存在そんざいなんでしょ? だったら、んでほしいってねがう人がいても、へんじゃないと思うけどなぁ」


 死神しにがみ

 そうばれてるくらいだからね。

 少なくとも、かれてるワケじゃないでしょ?


「みんな、絶対ぜったいにいつかはぬんだし。別にへんなおねがごとじゃないでしょ」

「そ、それは……」


 少しだけ口ごもったベルザークさん。

 すると、かれは何かに気が付いたように、口を開いた。


「ハナちゃん。ハナちゃんは、リグレッタさまが死んでも良いのかな?」

「ん~? どういうこと?」

「リグレッタさまがいなくなっちゃうんだ」

「……いなくなっちゃう?」

「そう。ハナちゃんは一人、あの家に、いてけぼりにされちゃう。それで良いのかな?」


 ベルザークさん。

 それはズルいんじゃないかな。


 しずまりかえったテントの中、私とベルザークさんを見比みくらべたハナちゃんは、半開はんびらきの目を少しずつひろげていった。

 そして、大粒おおつぶなみだこぼはじめる。


「……やだ。いやだぁ! リッタ、どこにもいかないでぇ!」

「ちょ、ちょっとハナちゃん。いて。ね。わたしはどこにもいかないよ」


 きながら、両手りょうてひらいたりじたりしてる。

 多分たぶん、何かにしがみ付きたいんだよね。

 ごめんね、こういう時、きしめてあげられなくて。

 私のわりに、シーツとほうきってあげてる。


 そんな彼女の様子ようすを見たベルザークさんが、ぽつりとげた。

「リグレッタ様。やはりあなたは、きるべきです。そうは思いませんか?」


 彼の言葉に、なんてかえせばいいのか、私がなやんでいると。

 くろいお兄さんがボソッとつぶやいたのでした。

「……このクソ坊主ぼうずが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ