表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/208

第25話 険悪な雰囲気

「そなたが、解放者リリーサーのリグレッタか」

「はい。私がリグレッタです。えっと、おじいさんは誰ですか?」

「っ!? リ、リグレッタ殿どの、その方は!」

「よいのだ、カルミア隊長たいちょう

「ははっ」


 その方?

 あれ、もしかして、このおじいさんってえらい人だったりするのかな?

 見た目は本に出て来るおじいさんって感じだけど。


「ごめんなさい。私、何か失礼しつれいなことを言っちゃいましたか?」

「いや、気にせんでよい。それよりも、自己じこ紹介しょうかいがまだであったな。わしの名は、ブッシュ・カルドネル・バルドルドだ」

「ブッシュ……あれ、カルミアさんのんでる国って、そんな名前じゃなかったっけ?」

「そのとおりです。リグレッタ殿どの


 なんか、カルミアさんが目でうったえかけて来てる気がするよ。

 でも、ごめんね。良く分かんないや。

 取りえず分かることは、カルミアさんが私にわせたかったのは、このひげのおじいさんってことだよね。


「おひげ、すごいね」

「そうだね。きっとえらいおじいさんだから、失礼しつれいが無いようにしようね」

「うん!」


 ヒソヒソとはなしかけて来るハナちゃんに、私がそうかえしたところ、カルミアさんがひたいに手を当てて項垂うなだれた。

 もしかして、聞こえたかな?

 ううん、結構けっこう小さい声で話したから、聞こえてないはずだよ。

 そのはずだよね。


 まぁ、おじいさんはやさしい表情ひょうじょうで私達を見てるから、問題もんだいなさそうかな。


「あの、カルミアさんからブッシュさんにうように言われたのですが、何か私に用事ようじでもあったんでしょうか?」

用事ようじとな。ははは、そうだな。わしはそなたに用事ようじがある。それはたしかなことだ」

「その用事ようじってもしかして、ハナちゃんの村をおそったっていう、りゅうのおはなしですか? あ、ハナちゃんっていうのは、この子のことで。んでたいえこわれちゃったから、今は私と一緒いっしょんでるんですけど」

「ハナです! 5さいです!」

自己紹介じこしょうかいえらいねハナちゃん」

「いしし」


 ちょっと緊張きんちょうしてたのかな。

 ハナちゃんの笑顔えがおがいつもより少しだけかたい気がするよ。


「そなたと、その子のことについては、カルミア隊長たいちょうからはなしを聞いている。今日はそのけんとはべつで、用事ようじがあって来たのだ。ただその前に、これを受け取ってもらいたい」

 そう言ったブッシュおじいさんは、手で合図あいずをした。


 すると、2人の騎士きしはこって私達の前に出て来る。

「それはくに騎士きしたすけてもらったれいだ」

「お礼ですか?」


 ゆかかれたはこを手にして、ふたをけてみると、ほのかにいいかおりがただよって来た。

 中に入ってるのは、おちゃみたいだね。

が国でれた果物くだものから作った、茶葉ちゃばだ」

「良いかおりのおちゃですね。んだことないものみたいです。ありがとうございます」


 ブッシュおじいさんは、おれいえらぶセンスがいいみたい。

 あぁ、はやく家に帰って、んでみたいなぁ。

 あまそうなかおりだし、きっとハナちゃんも好きだろうなぁ。

 果物くだものから作ったって言ってたけど、その果物くだものは何なんだろう。

 出来れば、果物くだもの名前なまえと、タネと、そだて方が知りたいなぁ。

 あとでカルミアさんにでも聞いてみよう。


 そんなことを考えながら、はこふためた時、ブッシュおじいさんが咳払せきばらいをする。

「さて、ここからが本題ほんだいなのだが。そなた、カルミア隊長たいちょう怪我けが石化せきか半刻はんこくもかからずになおしてしまったと聞いているが、それは本当か?」


 カルミアさんの石化せきかといえば、はじめてった日のことだよね。

 たしか、万能薬ばんのうやく傷薬きずぐすり治療ちりょうしたっけ?


「はい。何にでもくすりがあるので、それを使っただけですよ」

「何にでもく……つまり、万能薬ばんのうやくと言うコトか?」

「そうですね。私もそうんでます」


 私がそう答えたら、テントの中にいた騎士達きしたちざわめきはじめた。

 万能薬ばんのうやく。そんなにおどろくことなのかな?

 父さんも母さんも、そんなふうに入って無かったけどな。


しずまれ」

 ブッシュおじいさんの一声で、テントの中に静寂せいじゃくが戻ってくる。


「リグレッタ殿どの。ブッシュ王国おうこく国王こくおうとして、1つねがいをかなえていただきたいのだが、いてはもらえぬか?」

「おねがいですか? はい。いおちゃもらったことですし。私にできる事なら、やりますよ」

「まことか! では、そなたの持つ万能薬ばんのうやくを」


 目をかがやかせたブッシュおじいさんが、そこまで言いかけた時。

 突然とつぜん、私の背後はいごから、だれかがテントの中に入りんで来た。


失礼しつれい。ブッシュ国王こくおう陛下へいかし出がましくはありますが、その話、ませていただきます」

「お前は、さっきの!?」


 突然とつぜん乱入者らんにゅうしゃおどろいた様子ようすのカルミアさんが、同時どうじ困惑こんわくしてる。

 まぁ、仕方しかたないかな。

 ついさっき、シーツに羽交はがめにされてるところを見たばかりだもんね。


 って言うか、んでくるのは失礼しつれいじゃないかな?

「ベルザークさん。どうして入って来たんですか?」

「リグレッタ殿どの。話にり込んでしまいもうわけありません。ですが、今の話、傍観ぼうかんするわけにはいきませんでしたので」


 あやまりながら深々(ふかぶか)と頭を下げるベルザークさん。

 その謝罪しゃざいは、私だけじゃなくてブッシュおじいさんにも向けられて……なさそうだね。


 騎士達きしたちがブッシュおじいさんをまもるように移動いどうしてる。

 そんなあいだに、カルミアさんがベルザークさんにって行った。


「ベルザーク殿どの。いくらリグレッタ殿どののおり合いとはいえ、貴方あなた部外者ぶがいしゃ即刻そっこくここから立ち去っていただきたい」

もうわけないが、私がそのねがいをき入れる理由りゆう見当みあたりません」


 なんかあれだね。

 カルミアさんって、いつも誰かと敵対てきたいしてるのかな?

 このあいだも、ラービさんとなかわるかったし。

 騎士きしだからかなぁ?


 また険悪けんあく雰囲気ふんいきだよ。

 どうしてみんな、そんなに仲悪なかわるいのかな?

 ハナちゃんがちょっとこわがってるから、めてしいんだけど。


 大丈夫だいじょうぶだよ。

 ハナちゃんに、そうこえけようとした次の瞬間しゅんかん


 私のすぐそばいてたほうきが、すさまじい速度そくどで1回転かいてんした。


「うわっ! どうしたの? ほうきさん。みんなおどろいちゃってるよ」

 ほうき部分ぶぶんかたいんだから、せま場所ばしょまわしたらあぶないでしょ。

 そう言おうとした私は、部分ぶぶんに1本のナイフがき立っていることに気が付く。


「え? ナイフ? ほうきさん、大丈夫? すぐにいてあげるからね」

「リグレッタ殿どの、それどころではありません! これは襲撃しゅうげきです! すぐにまも準備じゅんびをっ!」

「なにをヌケヌケと! 貴様きさま襲撃者しゅうげきしゃではないのかっ!?」


 国王こくおう陛下へいか安全あんぜん場所ばしょへ!

 そんな号令ごうれいともに、テント内があわただしくなっていく。


 でも多分たぶん

 これってブッシュおじいさんをねらった攻撃こうげきじゃないんじゃないかな。

 だって、ほうきき立ってるナイフは、私のあたま付近ふきんにあるし。


 はぁ。

 こういうことがあるから、とうさんとかあさんは、もりの外に出るなって言ってたのかな?

 やっぱり、かかわるのはやめた方が良かったのかも。


 でも、今更いまさらおそいかもね。

 だって、テントの前に、新しく2人のかげあらわれてるし。


「こりゃたまげたねぇ。今のをふせいだのが、ただのボロぼうきだとは……いやぁ、の中広いっていうのは、こういうコトなのかもしれねぇなぁ」

「ボヤいている場合ばあいではありません! このまま失敗しっぱいしてかえわけにはいかないのですから! ほら、さっさと中に入って、小娘こむすめころしてかえりましょう! そしてアタシとアナタの2人だけ、あま~い時間じかんを」

「俺があまものきらいだって知ってるだろぉ? って言うか、俺とお前は一緒いっしょんでるわけでもねぇのによ。人様ひとさま誤解ごかいされるようなことを言うんじゃねぇ」

「ひゃぅん。そんなこと言われたら、アタシ、ねちゃいますよ?」

「あぁ、あぁ、ねてろねてろ。ねんがら年中ねんじゅうねまくってろよ」

「し・ん・ら・つ。最高さいこうですね」

「そりゃあな、俺は最高さいこうな男だからよ」


 なんか、良く分かんないやり取りをしながら、その2人はテントの中に入ってきた。

 くろ装束しょうぞくを身にまとった男の人と、白いドレスをた女の人。


 だれなのかな?

 とくに、女の人と話してみたいな。

 てるドレス、とてもきれいだしね。


 でも、ける雰囲気ふんいきじゃないかなぁ。

 そんな私の推測すいそくただしかったようで、カルミアさんとベルザークさんが、さっきよりも険悪けんあく雰囲気ふんいきをまきらしはじめたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ