表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/208

第22話 折り鶴の加護

 みじか金髪きんぱつと、きたえ上げられた身体からだ

 それだけを見れば、彼は騎士きしなんだろうと思うところです。


 だけど、先日せんじつウチにやって来たカルミアさんと、この彼には大きなちがいがあるんだよね。


 満身創痍まんしんそういになってたおれてた彼は、よろいを身にまとっていなかった。


 カルミアさん達と会ったから知ってるけど、この森はそとの人たちにとって危険きけん場所ばしょなんだよね。

 それなのにどうして、この人はよろいずに森に入って来たのかな?

 おまけに一人だし。


 あれかな?

 元々(もともと)沢山たくさん仲間なかまがいたけど、道中どうちゅうではぐれちゃったって感じかな?

 それなら、納得なっとくできるかもだね。


 なんて私が考えてると、ベッドの上にたままの男の人が、声をけてきた。


わたしの名はベルザーク。いやぁ、お二人のおかげで、命拾いのちびろいしました。感謝かんしゃいたします」

「ベルザークさん。もうしゃべっても大丈夫なんですか?」

「はい、これくらいなんともありません」

「いや、死にかけでしたけどね?」

「ははは。そうでしたね」


 なんなんだ、この人は。

 でもまぁ、しゃべっててもいたそうな顔とかしないし、大丈夫なのかな?

 それに、話し方も丁寧ていねいだし、変な人ではなさそうだよね。


「ハナです。よろしくおねがいします」

「ハナさん。こちらこそ、よろしくおねがいします」

「私はリグレッタです。ベルザークさん、色々(いろいろ)とおはなしを聞きたいんですけど、大丈夫ですか?」

「えぇもちろん。私もうかがいたいことがありますので」


 小さくうなずいて見せるベルザークさんに、私はいくつか質問しつもんしてみることにした。


「えっと、ベルザークさんはどこから来たんですか?」

「私はこのもりきたにある国、フランメ民国みんこくより、解放者様リリーサーさまさがしてここまで来ました」

「フランメ民国みんこく……」


 カルミアさんとはちがう国だね。

 じつほかの国の人も森に入って来てたりするのかな?

 まぁ、それをベルザークさんに聞いても、知らないよね。


「ベルザークさんの仲間なかまはどこに居るんですか?」

「私の仲間なかま、ですか?」

「はい。実は少し前に東の……えっと」

「ブッシュ王国?」

「そう、それです。その国からも人が来たんですよ。その人たちは大人数おおにんずうで森に入ってたので。ベルザークさんも同じなのかなぁと」

「いいえ、私は1人で森に入りました」


 1人で森に入って、よろいずにここまで辿たどいたの?

 それって、結構けっこうすごいことなんじゃないかな?

 私も、森のひがしはしまでは行ったことあるけど、北には行ったことないし。


「よく無事ぶじにここまで来られましたね」

 感心かんしんしながら、思わずそうつぶやいた私に、ベルザークさんは小さくうなずきながら応えてくれた。

「えぇ。それこそ、リグレッタ様のご加護かごがあったがゆえです」

「私? 私はただ、ハナちゃんと一緒いっしょに家まではこんだだけですよ?」

「そんな謙遜けんそんをなさらないでください。この地まで私がたどり着けたのは、間違いなく、リグレッタ様のおみちびきがあったからでございます」


 私、そんなこと何もしてないんだけどなぁ。

 でも、ベルザークさんがうそいてるようには見えないし。

 考えても分からなさそうだし、面倒めんどうだから直接ちょくせつ聞いてみよう。


「どうして、私がみちびいたと思うんですか?」


 そういかけると、ベルザークさんはおだやかな笑みをかべた。

「私のくびがっているペンダントを、取ってください」


 まだ手をうごかすことができないらしいベルザークさん。

 そんな彼の胸元むなもとにあるペンダントに、私がれるのは危険きけんだよね。

「ハナちゃん、おねがいしても良いかな?」

「うん!」


 そんな私のおねがいを聞いてくれたハナちゃんが、ベルザークさんの胸元むなからペンダントを取り出してくれた。

 それにしても、随分ずいぶん大胆だいたんうでっ込んで取ったね。

 さすがのベルザークさんも、ちょっと困惑顔こんわくがおだったよ。


「はい。リッタ」

「ありがとう」

 テーブルの上にかれたペンダントを、私は手に取ってみる。


けてください。リグレッタさまであれば、問題もんだいありません」

 ベルザークさんの言ってることは、いまいち分かんないけど。

 えず、ペンダントの中身なかみを見てみよう。


 中には何が入ってるのかな?

 ちょっとワクワクするよね。


 なんて思いながらペンダントをけた私は、意外いがい中身なかみを見て、思わず小さな声をらしちゃった。

「え? これって……」

「やはり、言い伝えは本当だったのですね」


 やっぱりベルザークさんが何を言ってるのかは分かんないや。

 でも、中に入ってた“それ”のことは、私も良く知ってる。


 折りづる


 もりそとものを取りせる時に、私達が使うじゅつの1つだ。

 大体だいたいいつも、折りづるが持ちかえってくるのは、植物しょくぶつたねが多いんだけどね。

 そんな折りづるを、どうしてベルザークさんが持ってるんだろう。


 そんな疑問ぎもん視線しせんめて、彼を見た私。

 すると、ベルザークさんは小さな微笑ほほえみをかべながら、告げたのです。


「私はフランメ民国みんこくのクレイン教会きょうかいからやってまいりました。司祭しさいのベルザークです。このたびは、われらをおみちびくださっている解放者様リリーサーさま、リグレッタ様をおむかえに上がるため、はせさんじました」

「ん? え? おむかえ? すみません、良く分からないんですけど」

混乱こんらんされていることは承知しょうちしております。ですので、1つずつ説明せつめいをさせていただきたい」


 そこで言葉ことば区切くぎったベルザークさんは、長々(ながなが)と話を始めました。


 はなしについて行けなかったのかな、ハナちゃんはベッドに顔をうずめてちゃってるよ。

 そんなこともおかまいなしに、はなしをつづけるベルザークさん。


 なんか、まわりくどい言い方をしてるけど、まとめるとこんな感じみたい。


 このづるのおかげでベルザークさん達の先祖せんぞくにを作ることができた。

 さらに、まずしい北の地で生活せいかつできているのもづるのおかげ。

 おまけに、この森をたった一人で突破とっぱできたのも、この折りづるがあったおかげ。


「ホントかなぁ……これにそんな力があるとは思えないんだけどなぁ」

「またまた、ご謙遜けんそんを」


 私がなにを言っても、謙遜けんそんだって言ってくる。

 なんていうか、変な人だよね、ベルザークさんって。


 なんにせよ、外の世界に影響えいきょうあたえちゃったのは、私だけってわけじゃなさそうだ。

 うん。それが分かっただけでも良いのかな。

 これでむねって、花火はなびち上げてよかったと思えるし。


「リッタ……おなかいた……」

「そうだね。私もあたまを使ったから、おなかいちゃった。ベルザークさん、おはなしの続きは、ごはんあとで良いですか?」

「私にかま必要ひつようなどありません。あ、ですが、お茶をいただければありがたいです」

「分かりました。じゃ、ハナちゃん。支度したくしようか」

「うぃ~!」


 けてくハナちゃんの後を追って、私もキッチンに向かう。

 ところで、お客様きゃくさまに出せるようなごはん、あったかなぁ?


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ