表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/208

第170話 悪人の特徴

 このまちからえるうみそらは、とても綺麗きれいなのですよ。

 それがなぜだかっていますか?


 水の源(オーデュ・スルス)


 いにしえ時代じだいからそのばれつづけているこのせいなるみやこは、みず主神しゅしんプルウェアさままういえだとわれているのです。


 つまり、プルウェアさまはこのみやこから世界せかい浄化じょうかしているといってもつかえはいでしょう。


 このみやこかこうみも、そそあめも。

 なにもかもが、プルウェアさまによる浄化じょうかなのです。


 それがたとれるあらしであろうとも。


 きっと、この世界せかいからよりおおきな邪悪じゃあくったのですね。

 プルウェアさま感謝かんしゃしなければなりません。


 あらしったあと、そのようなことを談笑だんしょうすることがわたくしたちにとっての恒例こうれいになっています。


 とはいえ、いまわたくしにそれほどの余裕よゆうはないのですが。


「ソレイユさま! こちらもおねがいいたします!」

「わかりました! このかた治療ちりょうわったらすぐにそちらへかいますので、もうすこしおちください!」


 疲労ひろう無数むすうきずよこになっているこの殿方とのがた治療ちりょうしたら、またつぎのテントにかわなければなりませんね。


 いのりこそが、わたくし使命しめいなのですから。


 プルウェアさまよりさずかった『いのり』のちからのおかげで、わたくしはこのまちおおくのかたたすけることが出来できています。


 これ以上いじょうしあわせが、一体いったいどこにあるというのでしょう。


 すくなくとも、わたくしにはつけることが出来できそうにありませんね。


 それにしても、りになってかえって方々(かたがた)様子ようすからさっするに、あのうわさ本当ほんとうだったのでしょう。


 死神しにがみがこのくにんできている。

 かんがえるだけでもおそろしい事態じたいです。


 蔓延はびこっているという悪人あくにんなかでも、もっと残虐ざんぎゃくおそろしい存在そんざい


 そのようなものんでくるのならば、わたくしはそのしてたたかわねばなりません。


 ……そのはずなのですが。

 わたくしはまだまだ未熟みじゅくなのでしょう。


 ふるえているこのをストレンにられたら、きっとわらわれてしまいますよね。


『プルウェアさまあいされている貴女あなたが、おそれをいだくのはなぜですか?』


 きっと、そんなふう叱責しっせきされてしまうコトでしょう。


「しっかりしなくては……」


 想像そうぞうなかのストレンのとおり、わたくしはプルウェアさまあいこたえなくてはいけません。


 いまいるこのテントのなかのけがにんは、全員ぜんいん治療ちりょうえましたね。

 それでは、つぎまいりましょう。


 はやる気持きもちとともにテントからつぎのテントを目指めざします。


 こういうとき司祭しさいのローブはあしまとわりついて邪魔じゃまですね。

 いますぐにててしまいたいところですが、そんなことはできないのです。


 それはおこないではありませんから。


 わたくしおおきく手招てまねきをしている修道女しゅうどうじょもといそぎます。


 そうしてまねかれたテントのなかには、さきほどとおなじように大勢おおぜい兵士へいしたちがよこになっているようでした。


「これは……」

きりもりなかで、ウルフのれにおそわれたようです」

早速さっそくはじめましょう」


 ざっとかぎりでも、うで深手ふかでっているかた数名すうめいいらっしゃるようです。


 それでも、深手ふかでうでだけだったからこそ、ここまでびることが出来できたのでしょう。

 もしあしはらなどにらいつかれていれば、げおおせることなどできなかったはずですから。


 あと何人なんにんのけがにん治療ちりょうすれば、わるのでしょうか?


 もしかしてオーデュ・スルスのそとにいる悪人あくにんを、すべほろぼすまでつづくのでしょうか。


 ―――それは、本当ほんとう可能かのうなことなのでしょうか?


 ふと、そのようなかんがえにいたったあたまって、けがにん意識いしきもどそうとしたそのとき


 わたくしまえよこたわっているけがにんうえに、1ぴき小鳥ことりったのをにしたのです。


 ことのないとり

 なんという種類しゅるいとりなのでしょう?


 そんな、どうでもいことをるためにとり観察かんさつしたわたくしは、おおきな違和感いわかんいだくことになりました。


「このとり……生物いきものじゃない?」

「きゃぁ! なにきているの!?」


 背後はいごからこえてきた悲鳴ひめい

 反射的はんしゃてきにテントの入口いりぐちかえったわたくしは、無数むすう小鳥ことりんできている様子ようすたりにしました。


「まさか、敵襲てきしゅうですか!!」

かりません!」


 てきなのか、味方みかたなのか。

 どちらかからない以上いじょう対処たいしょ必要ひつようです。


 とにかく最優先さいゆうせんは、けがにんまもことですね。


 そうおもい、足元あしもとのけがにん視線しせんとしたわたくしは、そのけがにんがゆっくりとからだこしたことにおどろき、おもわずこえげてしまいました。


「ちょっと!! まだがってはダメです! 傷口きずぐちが……」

「もうなおりました、ソレイユさま


 このようなことがありるのでしょうか?

 かれうように、さっきまで痛々(いたいた)しい状態じょうたいだったうでが、きれいさっぱりなおっています。


 まるで、わたくしっている『いのり』の治療ちりょうけたあとのようです。


 そのわりとっていのでしょうか、さっきかれうえった小鳥ことりが、きれいさっぱりっています。


 間違まちがいありません、ほかのけがにんたちも、小鳥ことりれることによってなおっているのをこの確認かくにんできました。


 ということは、この小鳥ことりたちはプルウェアさまつかわした使者ししゃというコトでしょうか?


 きっとそうにちがいありません。

 あぁ、プルウェアさま

 感謝かんしゃいたします。

 やはり、おこないをするものに、慈悲じひこころを―――


「やったぞ。死神しにがみれてこれたんだ」


 あまりに感動的かんどうてき状況じょうきょうに、わたくしこころなかいのりをささげようとしたとき

 けがにん一人ひとり予想よそうもしなかったことをげたのです。


「え? いまなんと」

間違まちがいない! あのとりだ! 死神しにがみを、ここまで誘導ゆうどうすることに成功せいこうしたんだ!!」

「これでむすめをぉ……ぐっ……うぅ」

ってろ! マチルダ! 今迎いまむかえにくからな!」


 どうやら、困惑こんわくしているのは治療ちりょうをしていた修道女しゅうどうじょわたくしだけのようです。


 歓喜かんきちたこえとともに、次々(つぎつぎ)がりはじめる兵士達へいしたち


 かれらのには、わたくし姿すがたなどうつっていないようです。


「ソレイユさま! あれを!!」


 一人ひとり修道女しゅうどうじょがテントの入口いちぐちからそとゆびさしています。


 ゾロゾロとテントから兵士へいしたちのながれにそとわたくしは、ひがし正門せいもん見上みあげました。


 ……見上みあげざるをませんでした。


 そらおおくさんばかりにっている無数むすうとりたち。

 そして、正門せいもんうえ鎮座ちんざしている巨大きょだいかぜのドラゴン。


 それらをると同時どうじに、わたくし脳裏のうりにはさきほどの兵士へいしたちの言葉ことばよぎります。


「あれは、まさかっ!」


 いや予感よかんほどたるとは、むかしからいますよね。


 わたくしふるはじめるとともに、予感よかん現実げんじつへとわってゆきます。


「こんにちは、わたし名前なまえはリグレッタです。死神しにがみだよ。オーデュ・スルスにんでるみなさんに、ちょっとおはなしがあるんだけど、いかな?」


 そらごとまちふるわせているわりに、くだけたかんじの挨拶あいさつ


 ですが、油断ゆだんしてはなりません。

 むかしからうではありませんか。


 うまいはなしにはうらがある。


 そうやって人々(ひとびと)あざむくのも、悪人あくにん特徴とくちょうなのですよ。

面白いと思ったら、いいねとブックマークをよろしくお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ