表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/208

第154話 天然の罠

水誘器すいゆうき? ただのガラスだまにしか見えないっスけどね」

「いや、これはきっとなか液体えきたい意味いみがあるんだとボクはおもいます。ちがいますか?」

正解せいかいですわ」


 そうったシルビアさんは、おもむろに水誘器すいゆうき足元あしもときました。


 するとどうでしょう。

 かれた途端とたんに、水誘器すいゆうきころがりはじめたのです。


「おぉ! ころがってるよ! リッタ!」

「ホントだね!」

「ただこのテラスがかたむいてるだけじゃないっスか?」

「ちょっとカッツさん!? それってつまり、わたしつくったテラスが不出来ふできっていたいの!?」

「そううわけじゃないっスけど」

「リグレッタさま、このネリネはそもそもサラマンダーの背中せなかうえっているのですから、多少たしょうかたむいていてもおかしくはないはずです」

「そう! おれもそれがいたかったっス!!」


 ホントかなぁ~。

 カッツさんって、失礼しつれいなことをポロッとっちゃうところあるから、うたがっちゃうよね。


 釈然しゃくぜんとしないわたしは、シルビアさんの言葉ことばいて一旦いったん気持きもちをえることにしました。


残念ざんねんながら、かたむきによるものではありませんわ」

「そうなの?」

「えぇ。かりにここがきゅう坂道さかみちだったとしても、この水誘器すいゆうきいまおな方向ほうこうころがりつづけるのです」

「ホント!? ねぇ、それってれるの?」

べつせてもかまいませんが……おそらく、のちほどいやになるくらい見続みつづけることになりますわよ?」


 いやになるくらい見続みつづける?

 それはやっぱり、この水誘器すいゆうき使つかってきりもりすすむって意味いみだよね?


 いまいち、使つかみちかんないけど。


「それで? これがなんやくつんスか?」

「……なるほど、そういうことか」


 カッツさんとホリーくんがそうげたのは、ほぼ同時どうじのこと。

 でも、二人ふたり視線しせん全然ぜんぜんべつ方角ほうがくそそがれていたのです。


 質問しつもんをしたカッツさんの視線しせん当然とうぜん、シルビアさんにけられてるね。


 たいするホリーくんは、テラスのそとほう、もっと具体的ぐたいてきえばいけのあるほうてるみたい。


「ホリーにいさま?」

水誘器すいゆうき……みずいざう。言葉通ことばどおりではあるけど、でも、その原理げんりはどうなってるんだろう?」

にいさま!」

「え? あぁ、ごめん。えっと、いまはなしからすると水誘器すいゆうきいけ方向ほうこうかってすすんでるってことかな?」

さっしの少年しょうねんですわね。ですが、半分はんぶんハズレですわ。この地帯ちたいにおいて、みずあつまっている場所ばしょに、いけ出来できているのですから」


 ん?

 シルビアさんったら、なにってるのかな?

 みずあつまってるところにいけ出来できるなんて、そんなのたりまえじゃん。


 ほら、ホリーくんだってあきれたようなかおしてるよ。


「なんですの? そんなにアタシのはなししんじられないのでしたら、今一度いまいちどいけ水面すいめん確認かくにんしてごらんなさいな」

水面すいめんを?」


 そんなことをわれちゃったら、になっちゃうよね。


 すぐにテラスのはしかった私達わたしたちは、きりえづらいいけ凝視ぎょうししてみたよ。


 そうして数秒すうびょうくらいてたころかな、不意ふいにホリーくんつぶやいたのです。


うそだろ? 水面すいめんふくらんでる? これじゃまるで、おおきな水滴すいてきじゃないか」


 われてみれば、いけなかあたりのほう水面すいめんたかいね。

 ってうか、確実かくじつたかいね!


 気付きづいちゃったらものすごくになるくらい、水面すいめんがってるよ!


「どうなってるの!?」

不思議ふしぎ光景こうけいだわ」

「あの大量たいりょうのみずが、突然とつぜんこっちにあふしてきたりしないっスよね?」

「カッツ、そんなおそろしいことをうな。本当ほんとうにそうなったらどうするつもりだ」


 かおきつらせてるカルミアさんだけど、そんなにこわがる必要ひつよういよね。

 ネリネのなかにればきっと大丈夫だいじょうぶだし、最悪さいあく場合ばあいわたしがなんとか出来できるとおもうのです。


「このもりには、おなじようないけ無数むすうにあります。そして、周囲しゅういにはきり充満じゅうまんしている。これがなに意味いみしているかかりますか?」


 いけ正体しょうたいおどろいてる私達わたしたち背中せなかに、シルビアさんがそんないかけをげてたよ。


 この不思議ふしぎいけきりなに関係かんけいがあるのかな?


きりは、なぜいけまれないのかしら?」


 おもいついたようにつぶやくハリエットちゃん。

 直後ちょくご、ホリーくんがハッといきんでシルビアさんをたのです。


水滴すいてきおおきくなるほど、いざなちからおおきくなる? そして、きりつづけるとふくかみれて、らぬひといけせられてゆく……そういうことですか?」

「まぁ、簡単かんたんうとそういうことになりますわね」


 そっか、だから私達わたしたちいたらいけ付近ふきんまよんでたんだね。


 ネリネがまっすぐすすめなかったのも、サラマンダーのおなか生活用せいかつようみず大量たいりょうんでたから、いけほうつよられたってワケなのでしょう。


「つまり、このいけ天然てんねんわなというわけですか」

「いいえ。そうではありませんわ」


 腕組うでぐみして納得なっとくしてせるベルザークさんの言葉ことばを、シルビアさんは簡単かんたん否定ひていしちゃったよ。


「このような現象げんしょうは、通常つうじょうこりないものですわ。それはみなさんもよくごぞんじでしょう?」

たしかに。どんな書物しょもつでもこんな不思議ふしぎ現象げんしょうってかったよ」

「それは当然とうぜんです。なにせこの現象げんしょう利用りようして、プルウェア聖教国せいきょうこくてき侵入しんにゅうさまたげていたのですから」


 そうったシルビアさんは、あきらかにベルザークさんのほうました。

 たいするベルザークさんはというと、くちびるかたむすんで仏頂面ぶっちょうづらしてるね。


 バチバチと視線しせんわす二人ふたり

 そんな二人ふたりのことをにせずに、ホリーくんかんがみながらげるのです。


 ホント、勇気ゆうきがあるよね。

 もしくは、空気くうきめないのかな?


「まだかってないことがあるんだ。そもそもどうして、みずせられてるんだ? これももしかして、プルウェア聖教国せいきょうこく使つかってるっていう魔術まじゅつ関係かんけいしてるとか?」

「それについてはアタシも明確めいかくにはりませんが、これだけはえるとするならば―――」


 そこで言葉ことばったシルビアさんは、私達わたしたち見渡みわたしながらげました。


「ここはみず主神しゅしんプルウェアがおさめる土地とち。その土地とちにおいて、みずかんする奇跡きせき不可思議ふかしぎではないのです。それをまえ、あらためていましょう。アタシたちれてゆきなさい」


 まるでこちらを吟味ぎんみするような視線しせんが、私達わたしたちそそがれる。


 きっと彼女かのじょはこういたいのでしょう。


 みず主神しゅしん敵対てきたいすることがどういう意味いみつのか、自覚じかくしているのかと。


 理解りかいしてなかったわけじゃないけど、たしかにあまかんがえてたのかもしれないね。


 シルビアさんのとおり、ここはもうプルウェア聖教国せいきょうこく土地とちなんだ。

 わたしたちのらないことがきても、不思議ふしぎじゃないのです。


 そんなわたしづきを証明しょうめいするように、となりってたハナちゃんがみみをピクつかせました。


なにかくるよ!」

「チッ」


 ハナちゃんが反応はんのうすると同時どうじに、キルストンさんが舌打したうちをします。


 すぐに自分じぶんたちがほう見据みすえるかれ視線しせんられて、そちらを凝視ぎょうししていたわたしは、きりなかうごめおおきなかげにしました。


 おおきさはネリネとおなじくらいかな。

 うごきはのんびりしてるみたい。


 だけど、油断ゆだんはいけないよね。

 だって、キルストンさんとシルビアさんが冷汗ひやあせながしてるくらいだし。


はやいですわね。まさか、もうるなんて」

「こっちもデカブツだから、見逃みのがしてはくれねぇだろうなぁ。むしろ、ご馳走ちそうえてるんだろうなぁ。ったく、面倒めんどうくせぇ」

二人ふたりとも! あのおおきなのがなにってるの!?」

「あれは、しんですわ」

しん?」


 いたことのない名前なまえだね。

 どんな姿すがたをしてるんだろう。


 テラスからすようにしてしん凝視ぎょうししてたわたしは、すこしずつえてたその珍妙ちんみょう姿すがた言葉ことばうしなったのです。


 わりに、カッツさんがつぶやきました。


「でっかいヤドカリじゃねぇか」


 え?

 ヤドカリってあんなかんじだったっけ?

 たしかに、はさみってたりおおきな巻貝まきがい背負せおってるけど。


 背負せおってる巻貝まきがいに、大量たいりょうのハマグリがくっついてるヤドカリなんて、たことないよ?


 さらおどろくことに、その大量たいりょうのハマグリがくちけたかとおもうと、きりきだしたのでした。


「まさか、こいつが!」

「そうですわ! これがこのもりきりおおってる元凶げんきょう! らず狂暴きょうぼうですので! ご注意ちゅういを!」

面白いと思ったら、いいねとブックマークをよろしくお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ