表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/208

第135話 迷子

 ってのとおり、おれはそんなにあたまいわけじゃないっス。


 戦闘力せんとうりょくたかくないし、身分みぶんたかいわけでもい。


 だれかに自慢じまんできるようなモノってうと、このうすよごれたくらいっスかね。


 それも、同業者どうぎょうしゃにしかつうじないわけだけど。


 でもおれは、自分じぶんのことをなさけのないやつだなんておもったことないっスよ。

 おれおれで、精一杯せいいっぱいきてるんだ。


 だからっスかね。

 だれかのことをたすけたい。

 だれかのために、なにかをしてあげたい。


 そんなことをやつのことを、こころのどこかで馬鹿ばかにしてたっス。


“それ”をるまでは。


 おれいま神樹しんじゅハーベストの中心ちゅうしんるっス。


 なんでそんなところにるかって?

 簡単かんたんっスよ。


 リグレッタと邪龍じゃりゅうベルガスクが戦闘せんとうはじめたときおれ反動はんどう空高そらたかくにはじばされたっス。


 おかげで戦闘せんとうまれることはくなったけど、これは地面じめんっこちてぬっスねぇ。


 なんてかんがえてるあいだに、うえしたからぬまま、神樹しんじゅハーベストのなかちたっス。


 正直しょうじきちどころがかったっスね。

 奇跡きせきっス。


 落下らっかしてきたおれを、どでかいエントたちめてくれたおかげで、こうしてきてるってワケなんだから。


 あとは、神樹しんじゅハーベストのなかこときを見守みまもっておこう。

 どうせ、おれ出来できることはもう、なにもないから。


 そうおもって、ハーベストの中心ちゅうしんにあるクラインのちかくで、すこ休憩きゅうけいをしようとしたとき

 視界しかいはしで、チラチラうごなにかをつけたっス。


 それは、ちいさなづるだったっス。


 なにやら一枚いちまいかみきれがはいったふくろきずりながら、地面じめん身体からだをこすりけてるづる


 意味いみからなかったけど、えず紙切かみきれをったおれは、それが手紙てがみだってことにいたっス。


『りったへ』


 つたない文字もじされたその手紙てがみ


 こんなの、だれだれてた手紙てがみなのか、おれでも理解りかい出来できたっスよ。


 どうしてこんなところにあるのか。

 そもそも、なんでこのづる手紙てがみってるのか。


 混乱こんらんするおれ背中せなかに、こえがかかったのはそのときだったっス。


 うまったカルミアと、彼女かのじょ頭上ずじょうをクうクライン。


 なんでも、おれはじばされたことに気付きづいた2人(ふたり)は、救助きゅうじょのためにてくれたらしいっス。


 やさしいっスね。

 いや、おれがサボるのを阻止そししようとしただけっスかね?


 まぁ、そんなことはどうでもよくて、おれはすぐにづる手紙てがみのことをつたえたっス。


 リグレッタの兄弟きょうらいのクラインなら、なにってるかもしれない。


 なんてことない、おもき。


 でもそれは、案外あんがい間違まちがっていなかったようで、なにかをおもした様子ようすのクラインは、あわてて地面じめんった。


 そして、リグレッタがするのとおなじように、おかなか、つまり地面じめんなかから、ちいさなはこしてせたっス。


「その中身なかみを、すぐにリグレッタのもとっていけ!! はやくするんだ!!」


 かされるままにカルミアのってうまったおれは、リグレッタのもとかう道中どうちゅうで、そのはこ中身なかみ確認かくにんしたっス。


 はいってた“それ”は、ちいさな指輪ゆびわ


 なんでこんなものが、あんな場所ばしょに?


 指輪ゆびわなんて、地面じめんめるようなモノじゃないっスよね?


 でも、おれってるっス。

 っていうか、いままでにもたくさんたっス。


 リグレッタとその両親りょうしんたちは、なにかと大切たいせつなモノを地面じめんめがちっスよね。


 今回こんかいもきっと、大切たいせつなモノにまってる。

 だって、クラインがあわててわたすようにうくらいっスから。


 あのからリグレッタにててかれた手紙てがみと、それをったづるが、このはこ反応はんのうしてたっぽいし。


 どっちにしても、指輪ゆびわ手紙てがみも、リグレッタにとっては大切たいせつなモノにちがいないっスよ。


 でもへんっすね。

 この手紙てがみはリグレッタにてられた手紙てがみなんだから、戦場せんじょうにいる彼女かのじょもとくべきなんじゃ?


 神樹しんじゅハーベストのなか迷子まいごになってる場合ばあいじゃないっスよね。


 ……迷子まいご

 そうえば、宛先あてさきからなかった手紙てがみって、どうなるんだっけ?


 乗馬じょうばしているせいでいたしりをなるべく意識いしきしないように、かんがおれ


 そろそろあたま限界げんかいだとおもはじめたそのとき

 戦場せんじょう喧騒けんそうなかから、ベルザークのこえこえてきた。


「ハナちゃんが、そのようなことをのぞむわけがないでしょう!」


 なんスか、それ。

 そのかたはまるで、ハナちゃんがんだみたいじゃないっスか。


「まさかっ……!?」


 背後はいごうまあやつるカルミアも、ちいさなこえつぶやいてるっス。


 そうっスよね?

 しんじられるわけがないっスよね?


 危険きけん状況じょうきょうだったのは、たしかっスけど。

 でもっ。


「それはどうであろうか? 案外あんがい、その小娘こむすめも、のぞんでいるのではないか?」


 ベルガスクが、おれやカルミアの疑念ぎねん裏付うらづけるようなことをってる。


 ふざけるなよ。

 それじゃあ、これはどうするんスか?


 この手紙てがみ。ハナちゃんからリグレッタにてられた手紙てがみ


 つたない手紙てがみかれてるその言葉ことばを、もしリグレッタがたら。

 きっと、つらすぎてくにまってるっス。


 わたさないほうが、いっスね。

 どうせ、手紙てがみ迷子まいごになって、おくぬしもとかえろうと……。


 あれ?


 ちょっとつっス。


 ……そういうことっスか!?


 なんでづかなかったんスか! おれ!!


 そういえばこの指輪ゆびわ懐古の器(ノスタルジア)何度なんどてたっスよね!?

 リンじゃないっスか!?

 ソラリスとイージスと一緒いっしょた、リンっスよ!!


 そんなリンのもとに、手紙てがみかえろうとしてた!?

 それってつまり、そういうコトっすよね!?


 興奮こうふんのあまり、リグレッタをぼうとしたおれ

 そんなおれみみに、てならぬ言葉ことばこえてくるっス。


とはすなわち、わりのことだ。わりがなければ循環じゅんかんい。つまり、プルウェアさまおしえだ」


 なぁにが、プルウェアさまおしえっスか!

 おまえ本音ほんねを、おれってるっスよ!!

 アレが演技えんぎだったなんて、わせないっスからね!!


 リグレッタがやけくそになって全部ぜんぶこわはじめたら、収拾しゅうしゅうがつかない。

 なによりも、ハナちゃんがかなしむっスよ。


何百年なんびゃくねんってたってコトっスからね。さすがに、これを馬鹿ばかになんてできないっス!!」


 そしておれは、リグレッタにけてこえげた。


めるっス!! リグレッタ!! そいつはデッカイうそつきっスよ!! 利用りようされてるだけっス」


 不安定ふあんていうまうえがり、指輪ゆびわ手紙てがみふくろれ、づるたせる。


「それから! だれぬなって命令めいれいしたのはだれっスか!!」


 リグレッタが、ちょっとだけ文句もんくいたそうにしてるっスけど。

 まぁ、いっス。

 その文句もんくは、あとでしっかりとくっスからね。


 いまは、おもいだしてもらおう。

 彼女かのじょかかげた綺麗きれいゴトを。


「リグレッタの! おまえの! おねがごとを、あの簡単かんたんあきらめるとおもってるんスか!!」


 まさか、ぬすむことしかいとおもってたこのが、ひとなにかをとどけることが出来できるなんて。

 おもってもみなかったっス。


 フラフラとづる


 それをったリグレッタが、大粒おおつぶなみだながはじめたのは、ほんの数秒後すうびょうごことだった。

面白いと思ったら、いいねとブックマークをよろしくお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ