第11話 手土産に花束を
クマさんを回収した私は、エントさんと一緒に家路についた。
道案内は、蜂さん達がしてくれたんだよね。
ちなみに、彼らはキラービーっていう魔物なんだって。
私の家を知ってるってことは、母さんや父さんのことも知ってたのかな?
ご近所さんなワケだし、今度、お礼に何か持って行こうかな。
家に帰ると、ハナちゃんたちが出迎えてくれた。
ちょっとだけ、心配させちゃったみたいだね。
でも、目を赤く腫らしてるハナちゃんの興味は、あっという間にエントさんに持って行かれちゃった。
別に、寂しくなんかないもんね。
興奮するハナちゃんをシーツたちに任せて、私は一足先にお風呂に入った。
森の中を走り回ったせいで、全身汗だくだからね。
夕方になる前に入るお風呂は、格別だなぁ。
もう今日は、このまま寝ちゃおうかな。
なんか、一日を贅沢に過ごしてるみたいで、罪悪感を覚えちゃうけど。
たまにはいいでしょ?
「ふぁぁぁぁぁっ~~~。良く寝たぁ……」
翌日。窓から差し込んでくる朝日に、私は起こされる。
本当に翌日だよね?
って一瞬焦りそうになるくらい、長く眠ってた気がするよ。
「ちょっと寝すぎちゃったかな? ま、いっか」
「リッタ! おはよう!!」
「おはよう、ハナちゃん」
寝室の扉を開け放ったハナちゃんは、元気いっぱいに尻尾を振ってる。
お腹が減ってるのかな?
「朝ご飯、今から準備するからね。ちょっと待ってて」
「ううん! 大丈夫だよ!」
「ん? 大丈夫なの?」
お腹減ってるワケじゃないのか。
それにしては、ちょっとテンションが高すぎる気がするけど。
「どうしたの? なにかあった? ハナちゃん」
「えへへ~。ねぇ早くキッチンに来て!」
「なぁに? キッチンに何かあるのかな?」
ちょっとだけ得意げなハナちゃん。
そんなハナちゃんの後を追いかけるように、私はキッチンに向かった。
なんだろうね。ちょっと、ワクワクする。
小走りになりたい気持ちを抑えて、キッチンに入った私は、テーブルの上に並ぶ肉料理に思わず足を止めた。
「え? これって……」
「これね、ハナがとって来たんだよ! えらい? ねぇ、えらい?」
「自分で獲って来たの!? すごいね、ハナちゃん! えらいよ~」
お腹をくすぐるようないい香りが、キッチンに充満してる。
「美味しそうだね~」
「うん! タマルンとフラパンが作ってくれたの!」
「そっか。それじゃあ、冷めちゃう前に、早く食べちゃおうか」
「うん!」
その日の朝、私達の家のキッチンに『うましっ』が響いたのは言うまでもないよね。
美味しいお肉は良いけど、そう何回もハナちゃんにお肉を獲ってきてもらうワケにもいかないよね。
今回は失敗しちゃったけど、引き続き肉狩のゴーレムに挑戦していこう。
でもその前に、キラービーたちにお礼を兼ねて、贈り物を届けなくちゃ。
「何が良いかな? お肉って食べるんだっけ? それよりも、お花が良いかな?」
彼らはハチミツを作ってるワケだから、沢山のお花を贈ったら、喜んでくれそうだよね。
「『ひでんのしょ』に何か使えそうな術は無いかな?」
食後のお茶をすすりつつ、ページをめくってた私は、それっぽいものを見つけることができた。
4冊目の37ページ。
その名も、エント・ガーデン。
エントさんの唄の応用だね。
エントさんには、自身の周囲の植物を活性化させる力があるみたい。
それをフル活用して、お花畑を作る術なんだって。
ついでに、建築で花壇っぽく仕立てれば、可愛いかもね。
それから数日をかけて、私は花壇を造り上げた。
エントさんのおかげで、お花の成長もすごく早い。
「うん。これでお花を沢山集めて、キラービーたちに届けに行けるね」
じょうろが水を撒いてくれてる横で、汗を拭ってると、話を聞きつけたハナちゃんが駆け寄ってくる。
「キラービー? リッタ、またどっかに行っちゃうの?」
「うん。迷惑を掛けちゃったから、ごめんなさいに行くんだよ。ハナちゃんは皆と一緒にお留守番をお願いね」
「や!」
勢いよくそう言ったハナちゃんは、一瞬だけ私に近寄ろうとして、すぐに足を止めた。
さすがに、私に触れちゃいけないんだって分かってくれたのかな?
安心するような、ちょっと寂しいような。複雑な気分だよ。
「また森の中に入るんだよ? 危ないよ」
「やぁだ!! 一緒に行くもん!!」
仕方ないなぁ……あれ? なんか、前にもこんなことがあったような?
甘やかしすぎなのかなぁ?
「そんなに一緒に行きたいの?」
「うん」
「そうだなぁ。まぁ、エントさんもいるし、今回は大丈夫かな」
キラービーの巣までの道も、なんとなく覚えてるから、今回は迷ったりしないでしょう。
と言うことで、エントさんの肩に乗った私達は、そのままキラービーの巣に向けて出発した。
もちろん、手土産に沢山の花束を引きずってね。
今更だけど、ハナちゃんと出会ってから、色々と遠出をするようになったなぁ。
楽しいから、良いんだけどさ。
母さんも父さんも、怒ったりしないよね?
ううん。怒るワケないか。
だって私は、後悔してないもん。
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