怪談話
みなさま初めまして。
鳥海 友戛いう者です。
今年の夏中に終わればよいなという、なんともやんわりとした目標で書き始めました。
初投稿となりますゆえ、生暖かく見守って頂けますと、嬉しいです。
「なぁ、こんな話知ってるか」
・
「助けてくれ。 このままじゃ死んじまう」
その男は藁にもすがる思いで、とある神社の宮司に助けを求めていた。
「あんたが腕利きだって聞いたから、わざわざ来たんだ。 頼むよ」
少し外にはねた長い髪、上品な顔立ちで嫌味を感じさせない、存在感のあるアクセサリーを身につけた、長身の男性が気を揉み、懇願してきた。
「まずは落ち着いて。 何があったのか聞かせてください」
宮司がその男に優しく聞いたところ、今までまともに取り合ってもらえなかったのか、安堵の表情と共に説明してくれた。
『呪われた』
男は呪われたから解いてほしいと尋ねてきたらしい。
それを聞いた宮司はすんなり 「わかりました」 と男が拍子抜けするくらい、あっさり快諾したのだ。
〈呪いを解く〉 と聞いて特別な手法があると身構えていた男だが、心許ないほど短時間且つ手順の少ないものだった。
「これで呪いは解けました...」
「いやあ! ホント助かりました! これで肩の荷が降りたっていうか、身軽になったっていうか! そんで、いくらっすか?」
「祈祷とはまた違うもののため、お金は頂いておりません」
その言葉を聞くと、男は「そうなんすか! 得した気分です! ホント助かりました! 」 と尋ねてきた時とは打って変わって、満悦の表情を浮かべ帰路についた。
その帰り道、彼は事故に遭い亡くなった。
・
「って話があるんだよ。」 と自慢げに話してくる悠太。
ひょんな事でオカルト研なんかに入ってから、しつこく俺にこうして怪談を聞かせたり、心霊写真を見せつけたりしてくる。
「今回のは大して怖くなかったな」
「そうだよねえ、どうせ女遊びしてたいけ好かない男が、遊んでた女に呪われて、祓った帰りに不運な事故で死んだってだけだもんね」
「でも、なんでこれが怪談として出回っていて、呪いは祓ったのに、何故男は死んだんだ。 というか誰から聞いたんだこの話」
「6chの怪談スレで、誰もいいねしてなかったから和也に話たんだあ」
「誰が聞いても怖くない怪談ってか...」
「誰が聞いても怖くないって、それ書く必要あったのかなあ。 あとこの話、僕何度か読んでるんだよね」
「どういうことだ? 6chでは有名なのか?」
「有名というか、盛り上がってる怪談の合間に知らず知らず投稿されてるし、つまらないし、誰も興味示さないって感じかなあ。 僕はみんなの作った話のオチが何となく冒頭で分かっちゃうから、暇で適当にスクロールしてたら見つけたって感じ」
「読まれようとして投稿してるわけじゃないのか」
「僕も不思議には思ってたから、印象深くて、和也に話したんだあ」
「ある意味怪談そのものより 〈読まれない怪談を投稿する人〉 のほうが怖くないか」
「確かにー」
などと二人で軽口を言い合い笑い合っていたが、俺の心には一抹の不安が小さく、でも確実に刻まれ、嫌な思考を助長させていった。
(蓋を開ければただの事故であるこの出来事が、怪談となっているのは何故)
(男が宮司の話を遮らなければ何と言っていたのか)
(男が死んだ原因は本当に不慮の事故によるものなのか)
(読まれるのが目的ではないなら、何故掲示板に投稿されているのか)
俺は漠然とした、何か形容し難いものに包まれている、そんな気配がしていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
簡単に今回のメイン登場人物を紹介いたします。
俺くん
橘 和也 (たちばな かずや)
・バイトと授業だけじゃつまらないと、ホラー映画好きもあってオカルト研に入った。
悪友?
佐久間 悠太 (さくま ゆうた)
・大のオカルト好きで、呆けているような話し方だが色々と鋭いところを持っていたり...?
少なくとも週に1日、週末に上げれるよう努めます。
そして、これから読みやすいよう、怖くなるよう心がけて参りますので、どうかよろしくお願いいたします。
鳥海 友戛