Episode86
「...ばいいのに」
クロエは小さな声で何か呟く。
「...ねばいいのに」
まだ周りの帝国軍の兵士には聞こえていない。
「死ねばいいのに。」
やっと聞こえるぐらいの音量になったことで兵士たちがざわつき始める。
「お前ら全員、死ねばいいんだ。」
誰もが聞こえるくらいの大声で叫ぶと、クロエは感じられない程に抑えていた魔気を最大出力で全解放する。
「にげ...」
指揮官らしき人物が撤退の指示を出そうとするが、それも叶わず兵士は一人残らず意識を失っていく。
「貴方たちみたいな下等な人族風情が、なんでおばあちゃんの命を奪えるの? お前らなんて死ねばいいのよ。」
クロエは魔力を練り始める。
「雪の反逆」
クロエの言葉と共に、空が曇り雷が鳴り始める。
温度も急激に下がり始め雪がちらつく。
徐々に風も強くなり、吹雪と化した。
その範囲はこの森を丁度包み込むくらいの広範囲だ。
この調子だと気を失っている兵士は放っておいても凍死していくだろう。
クロエは自分の周囲だけ上手く雪が降らないようにコントロールして、スコップを使い穴を掘る。
最近流していなかった涙を流して―――。
ヨランダは言った。大人になると嬉しい時に涙を流すものだと。
クロエは思った。まだ私は子供なのだと。だってまだ悲しい時しか涙が出ないのだから。
綺麗な布に包まれたヨランダは、クロエと過ごした小屋の庭に埋められた。
永遠にあの時間が続けばいいと思っていた。
ヨランダと過ごした楽しい日々がクロエの中で蘇る。
魔法の指導は厳しいものだったがクロエは嬉しかった。掃除や洗濯、料理もヨランダから習った。
「クロエは器用になんでもこなすんだねぇ。本当に良いお嫁さんになれるねぇ。」
大好きだったお母さんと同じセリフを言ってた大好きだったおばあちゃん。
あぁ、そうか、私は厄災の魔女。全く以てその通りだ。
私の傍に居る者は不幸になるのだ。厄災が降り注ぐのだ。
止まることを知らない涙。
美人に育った顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら、埋めた土の上に木で作った十字架を突き刺す。
これからは一人で生きていこう。おばあちゃんに救われたこの命おばあちゃんのように使うのも良いかもしれない。
でも無理か。だって厄災の魔女なのだから。
そう厄災を振りまく魔女なのだ。
そうだ、厄災を振りまきに行こう。帝国へ。
おばあちゃんへの恩を、仇で返した帝国の王族を皆殺しにしてやる。
クロエは頬に伝う涙を乱暴に拭うと帝国方面へ歩き出す。
ついでにこないだ救ってやった親子が住む村も潰そう。
そうしよう。恩を感じて黙っていれば良いものを。
「あはははは。みーんな私が殺してあげるわぁ。」
ヨランダの墓には、もうすっかり雪が積もっていた。
【森の魔女 ヨランダ 永遠に。】
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