Episode85
月日は流れ季節は巡る。
現在ヨランダとクロエが住む小屋は、50人程の帝国軍によって取り囲まれている。
クロエがあの時助けた親子が村へ戻り、氷の魔法を使う魔女が出たと話して回ったのだ。
その話が帝国へと広がり、討伐隊が編成され今に至る。
「最終勧告だ。森の魔女よ、今すぐ厄災の魔女を引き渡せ。さもなくば小屋に火を放つ。二人共命は無いぞ!」
帝国軍が小屋に来てから約一時間、この緊迫した状況が続いている。
何故すぐにでも帝国軍は小屋を制圧しに行かなかったのか。
それはヨランダが十日に一度、欠かさず街へ通っていた理由が関係していた。
ヨランダは帝国の王族の元へと、魔法を教えに通っていたのだ。
王族も森の魔女ヨランダを失うには、損害が大きいと判断しヨランダと交渉し引き渡すことが出来る可能性があるうちは交渉するように。
また、魔法や武力にて抵抗があった場合には最終手段として二名の処刑を言い渡してあったのだ。
今のところヨランダとクロエは抵抗することなく小屋で籠城している状況となっている。
「ごめんなさい。おばあちゃん。ごめんなさい。私出ていくわ。」
「待ちなさい、クロエ。何か、何か良い方法があるはずよ。」
抱き合うヨランダとクロエ。
「いいのよおばあちゃん。今まで本当に楽しかった。ここまで育ててくれてありがとう。おばあちゃんまで巻き込まれることはないわ。」
「何を言っているの、クロエ貴女はもう私の娘なのよ。引き渡してみすみす殺させてたまるものですか。」
ヨランダはクロエのためならば、帝国を敵に回してでも守るという選択をするだろう。そうはさせない。
「ありがとう。大好きよおばあちゃん。」
そう言うとクロエはヨランダが外へと出ないように左の掌を凍らせテーブルへと貼り付けたのだ。
「あぁ、なんてことを。クロエ行かないで、あぁ、私のクロエ...待って、待ってちょうだい。」
「育ててくれてありがとう。お元気で。」
クロエはドアを静かに開けるとゆっくりと外へ出る。
「出て来たぞ!!」
「森の魔女じゃない!厄災の魔女だ!」
「厄災の魔女だ気を付けろ!」
「両手を頭の後ろで組んで膝を付け!」
クロエは言われた通りに跪く。
指揮官らしき人物が腰の剣を抜いて近づいて来る。
「悪く思うなよ。お前が死ねばヨランダ婆さんは助かるんだ。」
「ええ。おばあちゃんには傷一つ付けたら許さないわよ。」
「あぁ、承知した。では死んでもらう。」
指揮官が振り上げた剣をクロエに向って振り下ろしたその時、クロエは衝撃を受け弾き飛ばされる。
「いっ、何が...え? なんで...?」
クロエが居たはずの場所にはヨランダが倒れており、夥しい量の出血をしているのだ。
これには指揮官も唖然としており、周りの者も騒然としている。
「おばあちゃんっ」
駆け寄り抱き起すクロエ。
「なんで、なんでおばあちゃん、なんで。」
「親...より、先に逝く、子供が...何処に、居るんだい。全く、最後ま...で世話が...焼ける子..だっ。」
最後の言葉を言い終わる前に、ヨランダは動かなくなった。
「まって、おばあちゃん。死なないで、待って。置いてかないで...また一人に、一人にしないでよ、おばあちゃん。死なないで、お願いおばあちゃん。」
左手を見るとテーブルに貼り付けた掌の部分はこそぎ落とされている。
テーブルの上にあった果物ナイフを使い自力で脱出し、クロエを助けに飛び出したのだと予測できた。
クロエはまた、家族を失った。
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