Episode84
「ハッハッハッ...」
「止まるな!走り続けろ。」
父と子だろうか、人族の二人の狩人が森を駆ける。
もうどれくらい走っただろうか。
荷物も途中で捨て置き、己の身一つで森を駆ける。
その姿はまさしく、脱兎の如く。
それを追う狼の大群。
これは典型的な狩りの形である。
この森ではよく目にするホワイトウルフの群れだ。
ホワイトウルフは非常に賢く、獲物を最大限に弱らせ抵抗が出来ない状態まで追い込み仕留めるという狩猟方法を得意としている。
群れで獲物を追いかけ、ローテーションで畳み掛けるので狙われた方は休む暇なく体力を消耗させ続けられるのだ。
それが今人族の親子で行われている。
まだ森に不慣れな息子が、木の根に足を躓き転んでしまう。
「いってぇ...」
「早く起きろ、ウルフはそこまで迫って来ているんだぞ。」
「痛っ。足首をやったみたいだ。親父一人だけでも逃げてくれ。」
「何を言ってるんだ、お前を置いていけるかっ!」
「母さんや婆さんが待ってるんだ、親父だけでも逃げ帰ってくれ。」
「馬鹿者。つべこべ言わずに走るぞ。」
父親は息子の腕を自分の肩へ回すと息子を支えながら移動する。
だが、先程までと比べると格段に移動スピードは落ちており、追いついたホワイトウルフに囲まれてしまう。
「拙いな。」
「くっそぉ。」
数匹のホワイトウルフが先行してジリジリと間合いを詰めてくる。
そして二人に飛び掛かろうとしたその時、何処からともなく飛んできた何かによって飛び掛かろうとしていたホワイトウルフの頭蓋が粉砕される。
次、また次へと頭に何かしらの攻撃を受けて倒れていくホワイトウルフ。
倒れたホワイトウルフの頭を見ると、透明のクリスタルのような物が突き刺さっているのが分かる。
いや、これは氷!?
父親は理解した。何処からか鋭く尖った氷が飛んできてホワイトウルフの頭蓋を破壊しているのだ。
だがホワイトウルフは群れで親子を追いかけていたので2・3匹倒したところでまだまだ数は減らない。
「絶対零度」
何処からか聞こえた声の後に、周囲は一気に温度が下がり地面が凍り付く。
まだ過半数以上残っているホワイトウルフたちは、足が凍りその場から動けなくなっている。
そのまま更に温度は下がっていき、ホワイトウルフは全て凍り付き動かなくなった。
親子の周囲1メートルだけは一切凍っておらず、上手くコントロールされているのが分かる。
「これは...あの時の...」
「親父、なんだよこれ。」
「魔女よ! 居るのか? 出てきてくれ! 礼が言いたい!」
二人は暫く待ったが、魔法を放った張本人のクロエはとっくにその場を後にしている。
「親父どういうことなんだ。」
「実はな、昔俺はある小さい村で育ったんだ。小さい頃から今のお前みたいに親父に狩りを教わっていたんだ。その日も獲物を求め森へ入ったんだが、狩りが終わって村へ戻ると村が村人ごと凍っていたんだ。」
「え、そんな。まさか親父はあの全滅しちまったって言う村の産まれだったのか。」
「あぁ、その時の光景と今のこの光景は全く同じだ。正直俺は今ホワイトウルフなんかよりもよっぽどこの光景の方が怖い。震えが止まらねぇ。」
「親父...」
「早く村へ帰って皆に知らせないと。魔女が、魔女が戻って来たんだ。」
「は、早く行こうぜ。」
こうして親子はクロエに助けられ生還したのだが、氷の魔法を使う魔女が森に戻って来たと近隣の村々全てに伝わることとなったのである。
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