Episode82
老婆と出くわして逃げ帰って来たクロエは様々な辛かった過去を思い出し、怖くなりローブを被りうずくまって隠れているうちに眠ってしまう。
翌朝、目覚めたクロエは恐る恐る外へ果実を取りに出ると、そこには昨日出会った老婆が居るではないか。
しかも焚火をしているということはまさかここでずっと待ってたのか?
幼いクロエでもその推測に辿り着くまでにはそう時間はかからなかった。
「あら、おはよう。良く寝れたかしらぁ?」
老婆はそう言って、カゴのような物からパンを出すと焚火の上で良い匂いを漂わせている鍋の中へ千切って放り込む。
「ちょっと多く作りすぎちゃったわ、お嬢ちゃん食べるのを手伝ってくれるかしらぁ?」
老婆は野菜をヤギの乳で煮込んだ物に、パンを加えた食べ物を器によそいクロエに向けて差し出した。
良い匂いに誘われたクロエは黙って近づいて器を受け取ると、そそくさと小屋の中へと持ち帰り食べだす。
「仲良くなるには時間がかかるかもしれないわ。」
その光景をみた老婆はそう思ったのであった。
食べ終えたクロエは、久しぶりの果実以外の食事に大満足していた。
この料理は比較的代表的な食事の一つで、村でよく似た物を食べていた。
しかし、味も薄くスープとカビの生えたパンだけだったので、老婆の作った物は味も濃く、とても贅沢に感じたのであった。
小屋から出てきたクロエは、老婆に器を差し出す。
「あ、あ、あり...がと。」
「はい、どういたしまして。」
表情が強張るクロエとは対照的に、老婆は柔らかく笑って見せた。
顔のシワがより深くなり、優しい印象を受けたクロエだったがまだまだ警戒は解けないようで器を返したらすぐに小屋に戻ってしまう。
このやり取りが3日続いた。
どうやらこの老婆は近くに住んでいるようで、お昼時になると小屋の前までやって来て色々なご飯をうっかり多めに作ってしまうようだった。
流石に3日目ともなるとクロエも施しを受けているのだと察するようになる。
3日目は老婆の横に座ってご飯を食べた。
「ねぇおばあちゃん。なんでクロエにご飯くれるの?」
「あら、やっとお話してくれるのね。やだ...嬉しい。ついつい...作りすぎちゃってねぇ。」
老婆は泣いていた。
クロエが喋った、只それだけのことで泣いていた。
「どうしたの?お腹痛いの?うんちする?」
「ううん。いいえ大丈夫よ。少し嬉しかったのよ。」
「嬉しくても泣かないよ。泣くのは痛い時と悲しい時なの。」
「そうねぇ、でも大人になったらきっとうれしい時も涙が出てくるわ。」
「そうなの?」
「ええそうよ。」
「ふ~ん、おばあちゃん名前は?」
「私はね、ヨランダ。」
「クロエはね、クロエだよ!」
「よろしくね、クロエ。」
クロエが最初で最後、人族で唯一信頼した人物との出会いであった。
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