Episode81
クロエは近くの村を転々とする生活を余儀なくされた。
何故ならば、どこの村もクロエが育った村と状況は変わらなかったのだ。
そして、村を壊滅させた張本人だと逃げ延びた少数の男共から噂が広まると、他の村で受け入れてもらえるはずもなく、門前払いをされるようになってしまう。
今日は野宿だ。
いや、昨日も一昨日も野宿だった。
魔物が居る危険な森で小さな女の子が一人で野宿をしている。
常人であれば大人でも一晩と持たないだろう。
だが、今のクロエは魔力に目覚めたばかりで魔気が垂れ流しになっており、低俗な魔物風情では近付くことも叶わない存在となっている。
幸いこの森には果実が豊富に実っているため、暫くは餓死する心配はない。
次の日もまた次の日も、少しづつ森を移動しながら野宿を繰り返す。
森の最奥へと到達すると、小さな山小屋のような建物を発見する。
コンコン...
クロエは薄汚れた小さな手でその小屋のドアをノックする。
「こ...ごほっごほっ。こんにちは。誰か居ますか?」
何日間も声を出していなかったためか、クロエは声を発しようとするも、上手く声が出ず咳き込んでしまう。
だがそれも杞憂に終わる。
中からの返事はなく沈黙だけが場を支配する。
ガチャッ―――キーッ。
ドアの鍵は開いており、中を覗くも埃や塵が降り積もっており蜘蛛の巣も張り放題だ。
「誰も使ってないんだ...良かった。今日はここに泊まろ。」
村を出た時から唯一持っていた薄汚いローブに身を包み、埃で真っ白になっている床で丸くなる。
翌朝クロエは朝食の果実をかじり空腹を紛らわすと、小屋の掃除を始めた。
元々母親の足が不自由だったこともあり、村に居た時は家事も毎日のようにやっており掃除のやり方くらいは理解していたので夕方頃には子供の手でもある程度は片付いていた。
「クロエは何でも出来て凄いね。いいお嫁さんになるよ。自慢の娘さね。」
そう言っていつも褒めてくれた母はもう居ない。
いつも傍に居てくれてありがとうとも産んでくれてありがとうと言う気持ちも、何でクロエを置いて先に行っちゃったの?クロエもお母さんと一緒に行きたかったという想いも、もう言えないし伝わらない。
母を思い出して泣いて、泣きつかれて眠ってを繰り返す日々を送った。
小屋には小さな暖炉やテーブルなど少しは使えそうな家具も残っている。
暖炉があるので寒くなって来たが、ここで暫くは生きていけそうだと感じたクロエは、暖炉で燃やす手頃な木を探しに森を散策する。
そこで一人の老婆と出くわしてしまう。
「あらぁお嬢ちゃん一人かい?」
クロエは警戒して無言で逃げ出してしまう。
それも仕方が無いことだろう。
この森に逃げ込んだ理由も、災いをもたらす子だとか呪われている子だとか言われ、石まで投げつけられたのだ。
父も死に、母を目の前で失い、村を追われ、一人でこの広い森を彷徨っていた。
そこに見知らぬ人間と出会ってしまい、また罵られ痛めつけられるのではないかと恐怖が蘇りで逃げ出してしまったのだ。
クロエは真っ直ぐに小屋まで逃げ帰ると、中へ入り鍵をかけ閉じこもった。
老婆に跡を付けられているとも知らずに...
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