Episode80
村で一番貧乏な家が燃やされた。
これは見せしめでもなく、何かの代償でもない。
ただの口減らしである。
「お母さん! お母さん!」
火は勢いを増すばかりで、ボロい木造の家一つなんて簡単に燃やし尽くしてしまうだろう。
少女は強すぎる火の手に抗えず絶望することしか出来ない。
ただ呆然と燃え行く我が家を見つめる。
普通の家の普通の母だったら逃げ延びていただろう。
でもこの少女の母は自力では既に歩けないところまで足を悪くしており、外へ逃げ延びたなどとは到底考えられないのだ。
「おかあ、さん...」
膝から崩れ落ちる。
地面に落ちている石ころが当たって少し膝を擦り剥くが、そんなことを感じる余裕もなく止まることを知らない涙は少女の頬を流れ続ける。
「なんでいつもうちだけのけ者にするの!なんで?今日もクロエは一生懸命に仕事したよ。みんながしたうんちとおしっこをちゃんと大穴まで運んだよ。なのになんで、うぅ...なんで。」
クロエの父は村で狩りをする仕事をしていた。
その狩りの途中で厄介な魔物と遭遇してしまい、命をおとしてしまったのだ。
それはまだクロエが産まれたばかりの頃の話だ。
同じように狩りをする男たちは、次々と死んでいき数を減らしていった。
だが、村の中だけで生活している女 子供だけでは到底食料の確保は難しく、年々食料の供給と消費が合わなくなっていく。
それが5年・6年と続けばもう男の数は当時の10%を切っており、子供だけが増え食糧危機が加速する一方だった。
これに堪えかねた村長は苦渋の決断をする。そう―――口減らしだ。
村で仕事を持たない大人から、数を減す。
そうすれば必然的に消費される食料も減り、需要と供給の天秤が水平になるまでこれを続けようという結論に達したのだ。
その最初の犠牲者がクロエの母だった。
この女の夫は6年前に狩りから戻らずそれ以降この女は娘を育てるために頑張って働いたが、とある大雨の日崖から滑り落ち足を駄目にしてしまったのだ。
それ以降娘が変わりに働きだしたが、まだ幼いこともあり仕事の効率は大人の半分といったところだろう。
それ故にこの家がターゲットとなってしまった。
娘も一緒にとの村人の意見もあったが、村長にも同じくらいの歳の孫が居りどうも気が進まず、先ずは母親からとなったのだ。
村長命令と言うことを知る村の人たちは皆見て見ぬふりをしている。
「お母さんとお家が燃えちゃってるのに皆なんで無視するの!! なんでこんなに冷たいの? 冷たい。みんな冷たくなって死んじゃえばいいのに。みんな死んじゃえええ!!」
次の瞬間クロエの初めての魔法が発動する。
いやこれは暴発したと言う方が正しいのかもしれない。
それは、村全体を飲み込み全てを凍て付かせる極めて大規模な氷の魔法だった。
絶対零度
後に語り継がれ恐れられる厄災の魔女クロエ。
彼女がもたらす最初の災害は自分の住んでいた村だったのだ。
狩りに出ていた数人の男は無事だったものの、村での生存者はたった一人の少女のみ。
彼女ら数人を残して村は壊滅すると言う未曽有の大災害をもたらしたのであった。
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