Episode4
「ちょっとぉーーー!なんなんすか今の!?こんな近くであんな雷撃見たのはじめてっすよ!ってか、その武器もそうっすけど、そもそも複数の翼竜相手に無傷で勝っちゃうなんて凄すぎっす。どうやったっすか?」
「ガンッってやってからドーンよ。」
「うお!まじっすか、全く分からなかったっす。」
興奮冷めやらぬ様子でカイはレイナに話しかけている。
そしてレイナよ。なんだその雑な返しは...
谷の手前には小さな村があり、そこで一泊し翌日谷へ入る予定だ。
***
「村の近くまで翼竜が降りて来てるんだ!もう何人かやられちまった。金なら何とかする、だから翼竜をなんとかしてくれ!」
肩で息をする男は飲まず食わずで最寄りの街まで馬で走り、ギルドへ報告したと言う。
自棄になっていたのだろう。いや、もうこれしか救われる道が思い浮かばなかった。
***
今回冒険者ギルドが提示している依頼の内容は、村付近の翼竜の殲滅。
そして竜の谷の麓まで降りて来ていると思われる上位竜を谷の奥へ追い返すこと。
若しくは、撃退・討伐となっている。
ギルドは翼竜より上位の竜が谷の麓まで降りているため、元々そこを縄張りとして生活していた翼竜が住処を追われたのだろうと予測している。
村からの依頼でS級冒険者パーティーが先行して偵察へ向かったのだが、消息を絶ったらしい。
それが理由で依頼難易度がS級まで跳ね上がり、複数のS級やA級冒険者を派遣する準備が行われている。
指名依頼としてギルドマスターから直接僕へ、その先行したS級冒険者パーティーの救出依頼が来たのだ。
まじで迷惑な話だ。S級冒険者パーティーが駄目だったんだから、もうその村諦めようよ...
一般的な下位竜の翼竜であれば、A級冒険者パーティーが束になれば討伐可能である。S級冒険者パーティーとなれば尚のことだ。
上位竜の赤竜が麓まで降りて来ていたとしても、S級冒険者パーティーが3組程度居れば討伐できるだろう。嫌な予感がするよまったく。
「さあ、先を急ごうか」
日が暮れる前には辿り着きたい。夜は怖いからね虫とか。いやマジで虫が一番苦手だから。
***
酒に酔った愚かな男が、千鳥足で闇夜を進む
谷に迷い込んだことは偶然なのか、はたまた必然なのだろうか。
谷底で静かに眠っている若い竜に、事もあろうに小便をひっかけた。
竜は激怒した。この愚行は万死に値すると。
丸まって眠っている体制はそのままで軽く尻尾を振った。
次の瞬間には男の上半身は消し飛び、血飛沫が舞う。
只の物となった下半身は後ろへ倒れ血溜まりを作る。
その後竜の動きは無かった。すぐにまた眠ってしまったのだ。相手にするまでもない雑魚だった。
弱きものに興味を示さず、強き者を見るや否や喧嘩を売り完膚なきまで叩き潰してきた。
若き竜の中でも突出して戦闘能力が高く、狡猾。
古き竜ですら一目置く存在でありながら、序列や王位には全く興味を示さない。
竜の名前はシュヴァルツ。最も戦闘を好み凶暴な竜種、 黒竜である。
***
村人の怯える生活が10日程経った。
カンッカンッカンッ!!
物見櫓から敵襲の知らせが鳴る。
「ひぃぃ翼竜が来ただぁ!!」「女 子供を隠せ!」「武器を持て!」「死にたくねぇ。」
ついに村に翼竜が襲ってきたのだ。
村の男達は女と子供を家に隠し、武器を構え死に物狂いで戦う。
10m程の崖の上から見下ろすと村が見えた。貧相な柵で囲まれただけの村。
やっと着いたな。あれから数度戦闘になったが、全てレイナが瞬殺している。
まじかっこいいわ。一生付いて行きますレイナ先輩!
「あれが竜の谷付近で唯一の村っす!??」
カイが指差す村から今まさに火の手が上がった。
ん??あれ?何か襲われてない?
遅かった~。帰ろうかなー。帰りたいなー。
「翼竜に襲われてるっすね?」
「うん、襲われてるね。しかも、3体もいる」
「ノア!」
はぁ、レイナはやる気なのね。仕方ない、行きますか。
「とりあえずレイナは翼竜の殲滅を。カイと僕は村人の救助だ。いくよ」
「「了解」っす」
レイナは崖の所々にある岩に飛び移り降りていく。
僕は崖を上手く滑り降りる。
カイは、崖を転げ落ちていった。
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