Episode73
ルージュ・メテオノールとは、今から約500年前に魔族の頂点に君臨した魔王である。
当時ルージュ・メテオノールは紅蓮の魔王と呼ばれており、配下がミスをしようものならその者と血の繋がりがある家族や使用人、ペットまでも関係のある者は全て招集され躊躇なく骨も残らない程に焼き尽くすという慈悲もない魔王様だったと文献にも残っている。
魔族の中ではそんなルージュ・メテオノールは、気性の荒い魔族を一つに統一した唯一の魔王様だと、いつかこの魔界に復活し魔族に繫栄をもたらせてくれるのだと言い伝えられている。子供の頃からそう教え込まれて刷り込まれて育つ魔族は魔王様に対して異常なまでの執着を見せるのだ。
だが、ルージュ様の記憶が戻らなくても、配下へ申し訳無さそうに謝るこの心優し魔王様にお仕えするのも悪くないと、いやこの方こそが私達魔族の魔王様に相応しいのだと、そうセシルは思ったのだった。
***
『パンパカパーン!ヤッホーレイナ!』
「誰? ここは...?」
周りを見渡しても一面真っ白の世界。
レイナは今まで礼拝堂で魔族に囲まれていたはずだ。
『困惑しているねー? それも無理もないよね! だっていきなりこの何もない世界へ連れてこられたんだもん!』
10歳くらいの女の子は両手をパタパタとさせながら身振り手振りと楽しそうに話してくる。
「ここは?」
『ここは僕の作り出した世界。 言うならば... んー おっほん。 まぁ別世界だよ!』
「え、言うなれば何?」
『意外とそこを突っ込んでくるんだ?』
「うん。 気になって。」
『いや、カッコつけただけで、別に名前とか考えてないし。』
「そっか。 それで君は誰?」
『僕? 僕は君さ!』
「私?」
『そうだよ! この世界で生きていた僕であり、この世界へ連れて来られた君だよ。』
「分からない。」
『うんうん。 直に分かるさ』
「そう、何で呼んだの?」
『それは君に宿ったこの力を使いこなせるようにするためだよ! 強くなりたいんだろ?』
「うん。 強くなりたい。」
『何で強くなりたいの?』
「守りたい人が居る。」
『へー守りたい人ねー。 どんな人?』
「優しい人で、私を昔救ってくれた人で、大切な人。」
『ふーん。 好きなの?』
「うん。」
『愛しているの?』
「...うん。」
『そっかー。 僕はね、誰かを愛することが出来なかったんだ。』
「そうなの?」
『うんそう。 この世界からみんなのことを見るのも退屈しないんだけどさ、僕も誰かのことを愛してみたくなっちゃったんだ。』
「駄目なの?」
『ううん。 良いことだよ! だからね、一度消滅して輪廻転生してもう一度初めからやり直そうかなって思ってたんだ。 そこに君とのパスが繋がった。 君は運がいいね。 幸運だよ。』
「どういうこと?」
『君に僕の持っている全ての力をあげよう。 それで僕は消滅しちゃうけど、輪廻転生出来るからね。』
「後悔しないの?」
『後悔はずっと前にいっぱいしたからね。 もうしない。』
「そう。」
『うん。 じゃあ屈んで。』
レイナは膝をつき額を差し出す。
女の子はそっとレイナの額に触れると、レイナの中に夥しい記憶が入ってくる。
それは、魔法の使い方の記憶。そして、この子の昔の記憶。
『これで全てだ。 じゃあ僕は行くね。』
「ねぇ、名前は?」
『僕はね―――』
女の子は赤い光の粒となって舞い上がり消えていった。
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