Episode68
「では始めるわよ。」
祭壇に寝かされたレイナを囲むように五人は位置取りをする。
「始め。」
一斉に魔宝玉へと魔力を注ぎ込み始める五人。
寝かされているレイナの頭部付近に設置してある飾り台の上に乗った魔宝玉が魔力を帯びて淡く光り、内部で渦巻く模様がより鮮明に浮かび上がる。
セシルが片手で持ったナイフを握り魔宝玉へと数滴の血液を垂らすと淡く輝いていた光が強くなり垂らした血液が吸収されるように染み込んでいく。
「次。」
二番目はオリバーがナイフを握り数滴血を垂らすと更に光が強まる。
「次。」
三番目はヘンリーが、
「次。」
四番目はエイデン、
「次。」
五番目はジャクソンと順に続けていく。
それを二周、三周と魔宝玉が魔力で溢れてひび割れるまで続けていくのだ。
もう何周しただろうか、五人の顔色は青くなり貧血もあれば魔力枯渇もあり立って魔力を注ぎ込むこと自体が精一杯の者も居る。
「まだ、かかるのかのう。」
「黙って続けなさい。」
そのような会話が2.3度繰り返されたその時、五人の魔族はビクンと体を震わせる。
「なによこの魔気。」
「おぉ、いきなりこの城に現れおったわい。」
ヘンリーの額には大量の冷や汗が噴出し、エイデンもいつもは細い目が見開かれている。
「今のタイミングだとこの女の仲間と考えるのが妥当でしょうか。」
「は? どういうことなの? なぜ魔族でもないのにこの城に転移できるわけ?」
ジャクソンの予想は概ね正しかった。
「敵に脅されてゲートを開いたということではないか?...」
「ふざけんじゃないわよ!魔族を脅迫!? そんな強者居るわけ...」
オリバーへのヘンリーの言葉を遮り、セシルが声を荒げる。
「脅迫されたから何? それなら自爆して敵を巻き込み死になさい。 自分が勝てない敵に遭遇したらどうする? 少しでも相手に損害を与えて自害せよ! そう教えたはずよ。貴方たちも知っているわよね。」
「ど、どうするのよ! これ途中で止めちゃ駄目なんでしょ!?」
「オリバー、貴方が行って敵を葬って来なさい。」
セシルは苦渋の決断を強いられた。
本当は自分が出向いてさっさと殺してしまいたかった。
だがこの儀式と中断するわけにはいかない。
きっとこの中で魔力が最後まで尽きずに残っているのは私だろう。
そしてこの判断には私情も挟んでいる。
魔王様が復活された暁には私を最初に見ていただきたい。
魔王様の復活を私が一番近くで拝見したい。
魔族に反映をもたらせてくれるという千年に一度お目覚めになるという魔王様に私が一番近くでお使いしたい。
その感情がこの判断に影響したのである。
「分かった。」
オリバーが去った後も儀式は続いた。
***
「ここは?」
「ここは私の部屋。」
「ということはここは魔族の本拠地ということですね?」
メニダの言葉で冷静に状況判断するシュヴァルツ。
「来いグラム。」
ノアは魔剣グラムを取り出すと魔気を全開にし魔族に宣戦布告する。
「さぁ、レイナを迎えに行こうか。」
「多分祭壇に居ると思う。こっち。」
「よし行こうか。敵は俺とシュヴァルツで処理するから。」
「うん」
「承知いたしました。」
こうして敵地である魔王城に潜入を果たし、しかも堂々とレイナを探し回ることとなった三人であった。
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