Episode51
ノアは不思議な気分だった。
魔剣グラムを装備した時は常に頭の中に響いていたあの忌々しい声がしない。
いつもみたいに、助けて助けてと悲しみと憎悪に塗れた感情をこちらへぶつけてこないのだ。
ノアは無造作に、グラムを横薙ぎに振るう。
黒い斬撃がクリスタルに当たり吸い込まれた。
!?
ノアは再度グラムを振り、黒い斬撃を飛ばす。
黒い斬撃はクリスタルに当たり吸収される。
「そういう事か。」
ノアはまたグラムを振る。振る。振る。
するとクリスタルはピキッピキッと音を立ててヒビが入りだした。
どんどんとヒビは広がり、ついにクリスタルは蒸発するように上の方から消えだしたのだ。
「これクリスタルじゃなくて氷だ。」
「そうかだから寒かったんですね。」
「なるほど。」
「確かに。」
妙に納得してしまう、レイナやアリア達。
蒸発と共に辺りに霧のようなものが発生し視界が悪くなる。
「ノア、会いたかったっ...」
いきなり正面に現れ、飛びついてきた巨乳の美女。
それを何とか受け止め、柔らかい感触を楽しむノア。
露出度が高めの黒のドレス姿が絶妙にエロい。
「おっふ!柔らかい。エロ美人巨乳最高!」
『おっと大丈夫ですか、お嬢さん。』
下から見上げてくるあざとい仕草に潤んだ瞳、長いまつげに長い黒髪、真っ白な肌。
ふっくらとした唇に泣きほくろという大人の色気にやられ、思っていることと発言が逆になってしまった。
「触ってみてもいいわよ♪」
「ふっ、なんだ、ただの神か。」
「邪魔な霧ですね。」
シュヴァルツは竜化で翼を出現させ、羽ばたいて霧を吹き飛ばす。
「あらぁ、せっかちなのね。」
!?
「ノア。それは誰!?」
レイナは刀を構える。
シュヴァルツは既に女の真後ろへ回り込み不意打ちを仕掛ける。
「もう、おイタは駄目よ。 氷」
あのシュヴァルツが一瞬で氷漬けにされてしまう。
「嘘だろ!?」
「そ、そんな...」
ゾーイやグレースは驚きを隠せないようだ。
「くそぉ!!」
ペネロペは瞬時に女との間合いを詰めダガーを振り下ろす。
「氷柱。」
女は手からだした氷の剣のようなものでダガーを弾く。
ダガーは氷の剣に触れた所から凍り始めたため、ペネロペはダガーを捨て退避する。
「雷刃 ノア離れて。」
ノアにくっついている女を引き剝がそうとレイナも斬りかかる。
女もレイナに応戦しようと氷の剣を構える。
「辞めろレイナ、クロエ」
!?
レイナは勢いもあったためすぐには止まれなかったが、辺りを見渡してクロエの姿を探す。
「クロエが居ない!」
女は氷の剣を蒸発させるように消す。
「ここに居るわぁ、クロエは私よぉ?」
「「えぇ!?」」
ノア以外、いやノアとシュヴァルツ以外は驚きの声を上げる。
いつの間にかシュヴァルツは氷の呪縛から抜け出しており、ノアの後ろへ控えている。
女がノアに危害を加える事は無いと分かったのだろう。
「え、まさかマスターは分かっていたんですか?」
アリアの問いにノアはドヤ顔で答える。
「うん、そうだね。この谷間にある3つ並んだ珍しいほくろなんだけど、幼女クロエの胸にも同じようなものがあったからね。それから、幼女クロエは人間に似せた精霊のようなもので、高度な魔法で作られていたんだけれど、実態かそれの製作者は近くに居るだろうと思っていたからすぐ分かったよ。」
「マスター、クロエさんに出会ってすぐ胸をガン見したんですね。それで、幼女クロエの胸まで見たんですね。変態。」
アリアの冷たい視線がノアに刺さる。
「ノア、胸ならここにある。」
レイナはノアに向けてポヨンポヨンと揺らしてアピールしている。
それを横目でみるアリア。
自分の胸と見比べて絶望的な差を感じるアリアであった。
「滅びろ牛共が!」




