Episode41
魔力ポーションを飲み干すレイナに近づく影があった。
「レイナさんちょっとよろしいでしょうか?」
最前列でミノタウロスを殲滅して一息入れていたレイナに、シュヴァルツが話しかける。
「ん?」
「失礼ですがレイナさん、なぜあの時の技を使わないのですか?」
「雷刃のこと?」
「名前は分かりませんが、桃色の刃に変化した技のことです。」
「今の私では、雷刃を常に発動するのは無理。魔力を上手く扱えないから。」
「だから、いざという時の隠し玉として取っておいている訳ですね。」
「そう。」
「ちょっとその刀を貸していただけますでしょうか?」
「うん。」
レイナは雷切をシュヴァルツに渡す。
シュヴァルツは雷切を受け取ると鞘から引き抜く。
使用者の魔力を一定量吸い続け、刃に電流として変換し流す。
それは青紫色に薄く光り、電流を纏っている。
「ここからどうすれば?」
「魔力を抑え均一化して、一定の周波で魔力を波のように弱くして強くしてを繰り返すの。」
シュヴァルツは、左手を刃に滑らせ魔力を抑え均一化していく。
通常青紫色だった刃も今では薄い桃色に変化した。
雷刃とは刀の刃部分を極小の電流を一定の間隔で流すことで、超高速での振動を生み出し、この振動により物体を切削するため、通常の刃物を遥かに越える切れ味が出せるという技だ。
レイナはこれを習得するのに膨大な月日を費やした。
習得しても最長使用継続時間は5分であり、その後も使用する度に継続時間が短くなる傾向がある。
レイナが現在持つ最大の切り札であり、最強の攻撃手段なのだが、それを簡単にシュヴァルツがやって見せたのだ。
「凄い...」
「レイナさんこれは魔力だったり、生命力の問題ではないようですね。」
「ん?」
「魔力制御をし続ける集中力であったり、技術の問題のように感じます。」
「うん。私は魔力操作は苦手なの。」
「これは最後の隠し玉ではなく、普段の戦闘中でも常時発動できることを目標として訓練したら良いかと。恐れ入りますがミノタウロスを倒しているだけでは、それ以上の上達は難しいのではないかと思いました。レイナさんは既に剣術の極地に至っておりますので。」
レイナは驚いた。いや本当は心の何処かでは分かっていたのかもしれない。
雷刃の魔力制御はとても難しいのだが、それ以前にレイナは魔力操作が大の苦手なのである。
天は二物を与えずとはよく言ったもので、レイナは剣を握らせたらこの世界には右に出る人間は居ないだろう。それだけの素質があり、そこに血の滲むような努力が彼女を剣の高見へ登らせたのだ。
だが魔力操作は昔から駄目だった。どんな初級魔法も、発動出来ず魔道具も上手く扱えなかった。
ただ、雷切は違った。妖刀だったからだ。
勝手に魔力を吸い取り自動で雷へと変換するのだ。
レイナにとってこの妖刀のデメリットはメリットでしかなかった。
全て自動でやってくれるのであれば、レイナは刀を振るだけ。いつも通り振りいつも通り斬るだけだった。
雷刃は最後の手段で切り札と思っていた。思い込んでいたのかもしれない。
しかし、シュヴァルツの言葉でレイナは気付いた。気付かされたのだ。
今まではノアを守るために雷刃を温存していたが、これからはシュヴァルツが居る。
蒼天やアリアなど、共にノアを慕い守る仲間が集ったのだ。
私は、まだ、強くなれる!!
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