Episode23
グレースはメイジとして常人では手の届くことのないランクSに到達しており、魔力の扱いに長けているのだが、その分魔力には敏感で淀んだ魔力には当てられやすくもあるのだ。
この時ノアも左翼奥側で戦っては居るのだが、距離が空き過ぎていて蒼天からはまだ発見出来ていない。
「攻撃かっ?」
「グレース!大丈夫でして?キュア!」
ペネロペは周囲を警戒し、エリザベスは状態異常回復魔法をグレースにかける。
「いったいどうしたって言うんだ?」
ゾーイはグレースの背中を撫でる。
「ごめん、魔気に当てられただけ。ヤバいのが混じってる。」
「いや、この光景は誰が見てもヤバいとは思うが、あれか?中心にいる超デカい竜か?あれは竜王だよな多分。」
「違う、竜に敵対してる方。あの黒い鎧の奴。多分この場で一番強い」
「確かに、魔力を圧縮して撃っているのか、とてつもない威力だ。」
そこで赤竜が動き出す。
30体ほどの赤竜が、一斉にシュヴァルツに向かってブレスを放ったのだ。
「流石にあれはヤバくねーか?誰かしらねーけど死んじまう。」
「いや、死なない。そんなので死ぬ様な、違う...」
数十発のブレスがシュヴァルツを直撃する。
土煙の中心には竜騎士状態で、翼のみ竜化させて自身を包み込み防御しているシュヴァルツが見える。
シュヴァルツは翼を使い空に跳ね上がり、次々と赤竜を蹂躙していく。
「まさかあの鎧、竜だったの!?しかもあの強さ、SSS級!黒い竜の騎士・・・」
「こんなの、ただの天災じゃありませんの・・・」
「あぁ、うちらが入っていける次元じゃねぇ。」
シュヴァルツはターゲットを最古の竜に変え、攻撃を始める。
「強い・・・強すぎる。圧倒的だ・・・」
ペネロペは正体不明のこの竜に対して、見とれてしまっている。
自分が憧れる圧倒的強さ。それを目の前で見せつけられ、胸が熱く高鳴っているのを感じる。
「GYAAAAAAAAAA」
最古の竜が塵となり、30センチほどの巨大な魔石が地面に落ちる。
その瞬間、翼竜は散り散りに逃げ始める。
残った数体の赤竜も戦意を無くし、谷の奥へ帰っていく。
「終わったみたいだな。」
ゾーイはグレースに肩を貸しながら、呟く。
その時、音もなく目の前にシュヴァルツが現れる。
その瞬間クレアは意識を失い、ゾーイが地面にそっと寝かせる。
「そこのゴミ共。先程僅かにですが、私に対して敵意を向けましたね?盗み見ていただけでは飽き足らず、こちらへ敵対までするとは。」
シュヴァルツが怒りと共に魔気を解放する。
グレースは失禁をしながら気を失ってしまう、ゾーイはグレースを支えながらも膝をつく。
エリザベスはこの中で一番強いペネロペだけでもと、キュアをかけている。
ペネロペは3人を背に両手を広げ、声を震わせる。
「す、すまない、強き竜よ。見ての通り我々は一切の戦意を持たない!見逃してはもらえないだろうか!」
「死になさい。」
聞こえるか聞こえないかのウィスパーボイスで、シュヴァルツは死の宣告をした。
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