Episode16
シュヴァルツは生まれて初めて、危機感と言うものを知ることとなった。
目の前に召喚されたグラムと呼ばれる剣を見て、あれは間違いなく最上位呪具の魔剣だとそう確信する。
この世のあらん限りの負の感情を集めて濃縮した様な、濃く禍々しい魔気が溢れ出ているのだ。
そして、その魔剣グラムが男の手に渡ったとき、男から生命力を供給されたのだろう。
爆発的に跳ね上がる魔気を目にし、圧倒的なプレッシャーを目の当たりにして歓喜した。
我と等しく、いやそれ以上の力を持った者と相まみえることができた。
もしかしたら、我に勝てるかもしれない。
そうかこの感情が喜び、久しく感じていなかった感情が溢れ出す。
今まで何匹の竜を葬っただろうか。
何回の戦闘を重ねただろうか。
何度と恋焦がれただろうか。
我を超える可能性がある者よ。
我を殺せる者よ。
先程の人間の女も良かった。
竜の状態での我をあそこまで追い込んだのだ。賞賛に値する。
だが、戦闘に特化した形態となった竜騎士の我は、現竜王をも超えるだろう。
竜王と言えば、人間の中では5つの厄災の一つと数えられている。
それらは人間の街を滅ぼす力を持つという。
此奴が我に敵わなかった時には竜王を殺し、竜種全てを率いて人間界を滅ぼすのも面白いかもしれぬ。
「敗北を教えてやるよ。」
生意気にも男が戯言を吐く。
!!??
その瞬間シュヴァルツの目の前に、黒い斬撃が飛んでくる。
当たる寸前の所でそれを躱し、空中へ逃れる。
何だ今の攻撃は。
溜めなどの動作無しに、魔剣を振るっただけでアレが飛んできたのだ。
我の魔光と性質は同じであろう。
だが、魔光も予備動作無しで、竜の状態での高密度魔力ブレスと同等の威力を出していた。
しかし、この黒い斬撃は威力が桁違いなのだ。
信じ難いが魔光よりも3~5倍は威力が勝っているのだ。
「何処へ行った!?」
ノアを見失っているシュヴァルツの後頭部が鷲掴みにされ地面へ叩き付けられる。
そこに追い打ちをかけるかの様に黒い斬撃が3撃直撃した。
地面には直径20メートル程の巨大なクレーターが空き、中心にはシュヴァルツがうつ伏せで横たわっている。
「ぐはっ!!ゴホッゴホッ...」
血反吐を吐きながら立ち上がり、ノアを見上げるシュヴァルツ。
「しぶといな。」
ノアの姿が消え、次の瞬間後ろから深く斬りつけられる。
更にそのまま黒い斬撃も2撃喰らってしまう。
既に意識が無く、放り出された様に転がるシュヴァルツは虫の息だ。
良く見ると左手は肘当たりから先は消失しており、右手は二の腕付近から先は無い。
尾も半ばで千切れ、身体全体の鱗の様な鎧も数ヶ所酷く損傷しており、白く綺麗な柔肌が露出している。
放たれた黒い斬撃は地形を変え、シュヴァルツにも深刻なダメージを与えたようだった。
ノアはシュヴァルツへ止めを刺すべく近づく。
「死ね。」
ノアは冷たく、そう言い放った。
本領発揮したノアがかっこいい!と思った方は
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次のお話も読んで頂けたら嬉しいです♪




