Episode137
一万の兵士が取り囲むのは地方に建てられた、とある田舎の貧乏貴族の邸だ。
邸も大した規模では無く、こじんまりとしている。
日の出から更に少し時間が経ち、完全に太陽が昇りきったころ。
軍のメイジ部隊が、邸に向かって一斉に攻撃を始める。
「「ファイヤーボール」」
全方位から絶え間なく飛び続ける火球は邸の窓を割り、壁を焼き全てを焼き尽くす勢いだ。
「変だな。」
「出てこないね。」
ルナとノアは違和感を感じていた。
少なからず、二世代の吸血鬼が数名は出て来て抵抗しても良いものだと思っていたからだ。
だが、現状は一方的だ。
おかしい...そう思っていた時、軍が動き出す。
「突撃ー!!」
軍の司令官が、吸血鬼が出てこないことに堪え兼ねて突撃命令を出したのだ。
「駄目だ。カイン、中止させるんだ!」
「「おおおおぉぉぉぉぉ!!!」」
突撃の合図で全軍が邸に向かって雄叫びを上げながら進む。
その騒音に掻き消されて、ノアの声はカインへ届かない。
「くそっ! エリアヒーリング。」
ノアは急ぎ邸より大きな特大エリアヒーリングを発動させる。
しかし、遅かった。
邸付近に兵士が密集したと同時に、邸が大爆発を起こしたのだ。
邸の破片などが、爆発の熱風と共に飛んでくる。
「プロテクトシールド。」
ノアは自分の前にシールドを張り、後ろへルナを隠れさせる。
同じように、カインとレオにもシールドを張る。
それくらいしか出来なかった。
貴族の邸と一万の兵士は、大爆発により完全に消失し、大地は半球状に抉れている。
「くっそ。何があっ.....」
「大丈夫か、カイン。」
腰を抜かしていたレオが、目の前で只呆然と立ち尽くしているカインに声を掛ける。
だが、レオも同じ光景を見て言葉を失う。
それもそうだろう、邸を中心とした直径約1キロの範囲が、地面ごとごっそりと消え去っていたのだ。
「何だこれ...は!?」
「こ、これは...」
言葉にならない二人。
「レオ、カインを連れて逃げろ。」
!?
「何て?」
爆発の衝撃で二人共耳鳴りがしていてよく聞こえていないようだ。
「逃げろ!」
普段冷静なノアが、取り乱している姿と今目の前で起こったことを含め、ただ事ではないと判断したレオはカインを連れて離れていく。
「あの中心に何か、何か居たぞ。あれは生存者かも知れない!」
逃げることを抵抗するカインの顔面を、レオは殴りつける。
「しっかりしろ! あの爆発で生きている者が人族であるものか! 今は、生き延びることが最優先だ。」
「す、すまない。」
「取り敢えず考えるのは後だ。今はなるべく遠くへと逃げるぞ。」
そう言って無理やりにでもカインを引っ張る。
昨晩ノアたちが休憩に使ったテントなどは全て吹き飛んでしまっているが、少し離れた所にノアたちが乗ってきた馬が二頭逃げられずに繋がっている。
「これはありがたい。乗れるか?」
「あぁ、もう大丈夫だ。」
警戒している馬を宥め、ロープを切り走り出す。
これは今後語り継がれることになる、カイン王子唯一の敗走となった。
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