Episode126
「ククッ...やめんか。」
ノアが格好をつけ芝居がかった雰囲気を出すので、思わずルナは肘でノアの脇腹を小突き注意する。
「グハッ。」
脇腹にもろに入ったノアは、声を漏らす。
「仲が宜しいのですね。まるで恋人のようです。」
「気のせいだ。」
タルタスの言葉を即座に否定するルナだったが、ノアとは逆の方を向き赤面しているのを隠しているようだった。
「今回お二人を指名して依頼する内容は邪神教徒及びそれに関わる者の殲滅です。お二人を指名したのはこの件に最も適任だと判断したからです。その理由は先ずお二人共が不死やそれに近い者だと言うこと。邪神教徒は数が多く一筋縄では行きませんからね。そしてもう一つは人族を大量に殺さねばならないと言うことです...」
「人族など何人でも殺すことなど容易いわ。だがそれは他の者にも出来ようて...何故我らなのだ?」
「それは...」
タルタスは少しバツが悪いような表情を浮かべて黙り込む。
「罪悪感を微塵も感じないからだよ。」
「ほう...?」
「人は豚や牛を当たり前のように殺し、食べるだろ?」
「うむ。」
「吸血鬼はこの世界のカースト上位に位置する立場だから人族をエサにしか見ていないし殺すことに何の抵抗も無い。人にとっての豚や牛と同じだろ?」
「うぬ、全くないのう。死んだら食べ終わった串焼きの串のように捨てるだけだな。」
「そう、そんなルナと僕だからこそ適任の依頼っていうことなんじゃない?」
「まぁ、我は分かる。ノアはどうだ?」
「そうだね、正直に言うと僕も今はもう無いんだ。殺して後悔したら、蘇生したら良いからね。何度も蘇生をしていると、人の命の有難みなんて薄れていってしまうのかも知れないね。」
「なるほどのう。」
ルナは残っていた紅茶を飲み干す。
「どうする?」
「...我は良い。ノアが決めよ。」
少し考えた後、結局はノアの判断に任せることにしたようだ。
「じゃあ、断るよ。」
!?
目を見開くタルタスだったが、それ以上に驚いていたのはルナだった。
「そうか、わざわざご足労いただき感謝する。」
タルタスは立ち上がり、二人に一礼する。
「何故だ...?」
「何故って、相棒が乗り気じゃない依頼なんて受けないでしょ普通。それにここ何年も人を殺してないよね。僕の血を吸っているんだから。あと僕は面倒くさい依頼は受けない主義なんだ。」
「我を気遣ったつもりか? 必要のないことを...」
「なぁに、いっそのこと冒険者なんて辞めて田舎で診療所でもやるかい?」
ノアの提案に目を細めて、微笑むルナ。
「それも良いな。そんな未来もあるのだな...」
遠い目をしているルナはノアを見てはいるが、既にノアのことを見てはいなかったのかも知れない。
「受けよう。」
「良いのか? 本当に。」
タルタスは食い入るようにルナへ確認する。
「くどいぞ。」
ルナの鋭い殺気と、今までとはまるで別人のような雰囲気に気圧されるタルタスはソファーに腰を抜かすように座り込んでしまう。
「はぁ、分かった。依頼受けるよ。」
ノアが何かを諦めてため息をつく。
「助かる。本当に助かる。」
タルタスは二人に深く頭を下げ、感謝している。
だがこの選択が後の二人にどのような影響を与えるかなど、この時三人は知る由も無かった。
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