Episode117
今度はノックも無しにドアが開く。
毎晩のようにルナがやって来ては、ノアの血液を喰らい、満足気に絡みついて眠るのでもう慣れたものだ。
「なんだ、エルフ娘のことを受け入れなんだのか。」
「受け入れるも何も、行けないって言っただけだよ。」
ノアはベッドに座り込み、俯いている。
「ふむ。行けぬ理由は言ったのか?」
「言ってないよ聞かれてないし。」
「お主、エルフ娘のことをもうちょっと考えてやったらどうだ?」
「...」
暫く続いた沈黙を先に破ったのはルナだった。
「まぁ、終わったことは仕方ないのう。じゃぁ、始めるかの。」
ベッドに腰掛けるノアに対して、向かい合わせになるようにノアの上に跨るルナ。
白く綺麗なノアの首筋に、鋭く尖ったルナの牙が突き刺さる。
「んっ...」
ゴクッゴクッと喉を鳴らしてノアの首から血を飲む音が聞こえる。
「んはっー。」
首筋から口を放し、止めていた息を一気に吸い込む。
体内に取り込んだノアの血液は、濃厚な魔力を帯びておりルナの全身を巡り染み渡っていく。
「ハァハァ...」
ルナは跳ねる心臓と上がりきった息を落ち着かせながら、今度は自分の手首に噛み付き血を口に含む。
それをノアへ口移しで少しずつ流し込んでいく。
ノアの身体には何事にも変えられないような快楽が駆け回り、瞳孔が完全に開き焦点が定まらなくなっていく。
少し硬直した後、力が抜けベッドへと倒れ込んだ。
その時には既にノアの首の傷は塞がっており、ノアをベッドに綺麗に寝かせたルナはいつものように添い寝する。
「今ここで殺せば、お主はもう我の眷族となる...信用し過ぎだ、バカ。」
そう言ってノアの頭を撫でるルナは、ノアとの出会いを思い出すのだった。
***
人間は一定量の血を抜けば死んでしまう。
それを知ったのは、ルナが初めて人間を喰らった時であった...
彼女は最古の存在、そう後に語り継がれる吸血鬼の真祖の一人であった。
その当時、貴族でありながら研究に没頭する日々を送っていたドラキュラ伯爵は、複数の魔物の血液を混ぜ身体へと直接注射することにより魔力・身体能力が共に極端に向上するということを発見する。
ただ、それを打たれた者が何らかの形で死ぬと一定時間経過後に、発作のようなものを起こし生き返るのだ。
しかし、性格は狂暴になっており、意識的に血液を求め本能的に人族を襲い喰らうといった性質が見られるため、結果的には最悪な副作用をもたらすこととなったのだ。
だがその副作用を発見する前にドラキュラ伯爵は、実験と称して複数の奴隷にそれを打ってしまっていた。
実験が成功すると、ドラキュラ伯爵は用済みとなった奴隷に毒を盛った食事を与え処分した。
息絶えた子供たちは次第に起き上がり、血液を求め彷徨う。
人知を超越した魔力と身体能力を併せ持った小さな子供たちが、世に解き放たれることとなったのだ。
ドラキュラ伯爵は自身へはその注射は打つことは無かったが、起き上がった子供の集団に襲われ死亡したという。
街で被害者が出始めると、人々は彼らをこう呼んだ吸血鬼と。
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