Episode8
「おーい!紅の皆さんっすかー?」
村人総勢100名程を引き連れてやって来たのは、栗色の短髪に小柄な体格笑顔がよく似合うカイだ。
ジークも手を振り返す。
「村の人皆連れてきたっすー!」
「リリー、シンシア、2人は洞窟の中へ誘導を、ウィリアムは一定間隔で松明を渡してくれ。」
「了解」「わかったわ!」「おう!」
「カイ君、あの人は、不死王は戻ってくるのか?」
「今最後尾でこっちに向かって来てるはずっすけど、どうしたっすか?」
「いやね、ここら辺に落ちていた魔石を集めたんだが、救ってもらった身として流石に猫糞はできなくてね、これを渡そうと思ってね。」
「あ、それっすか。今回出た魔石は全てオイラが貰えることになってるっすけど、量も多いっすからそれは紅の皆さんで分けたらどうっすか?」
「いや、それは申し訳ないが嬉しい申し出だ。後で不死王に確認して不要との事なら頂こう。」
「そうするといいっす。ちょっと様子見てくるっす。」
カイは村人の列を辿って戻っていく。
「ノアさ~ん」
「ん~?どうした?」
「紅の方が、ノアさんに魔石渡すために拾い集めてたっすよ。」
「ん~僕はいらないかな。カイと紅で分けたらいいよ。」
「ほんとっすか!助かるっす!」
そう話していると洞窟の入り口が見えてくる。
紅に魔石のことを説明し、今回の村人護衛の報酬ということで、受け取ってもらった。
「さて、もう大丈夫だと思うからレイナの所へ戻ろうか。」
「了解っす!オイラも最後に村人が残って居ないか確認にいくっす。」
***
村に戻るとレイナが大量の魔石に囲まれている。
目線の先には...そうか死者が出てしまったか。
「レイナ大丈夫だったか?」
「こっちは何とか近くの洞窟へ避難が完了したっすよ!!」
「うん、でも犠牲者が...」
!!!!!!!!!!!!!!!!
その時、空からとてつもない魔気を纏い黒く大きな竜が舞い降りる。
「まじかよ...」
全身から脂汗が一気に吹き出る。そんな重く、ネットリとしたような魔気。
今まで出会ってきた中でダントツでトップクラスの魔気だ。
「カイ、逃げろ。こんなの出てきたら守ってやれる気がしない」
「わ、わ、わかったっす、お二人も良いタイミングで逃げてくださいっす!!」
魔気に当てられて身体が言う事を聞かないのだろう。
何度も転びそうになりながらカイは逃げて行った。
一番近い位置にいるレイナは、既に刀を抜いており戦闘態勢だ。
黒竜の圧倒的な魔気を前に、自分へ注意を向けようとしているのだろう。
レイナも普段は押さえている魔気を全開放している。
これはヤバイいくらレイナでも手に余る。
そもそも竜種というだけでどんなに下位竜でも依頼難易度はA級となる。翼竜もそれだ。
ましてや、赤竜クラスの上位竜が出るとなると、依頼難易度はS級となるのだ。
赤竜なんて、S級冒険者パーティーが3組程揃ってやっと討伐できるというレベルだ。
そしてこの黒竜ときたらどう見ても難易度SSじゃん...
難易度SS級となると、国に5組程しかいないランクSS冒険者が総出で倒せるかどうかっていうレベルだ。
奥の手でも隠し持っていた日には、難易度SSS級まで届いてしまうだろう。
難易度SSS級にまでなってしまうともう勝てない。勝つとかそんな話じゃ無くなる。
もう無理。逃げるしかない。ヤダ。そんな次元なのだ。あぁ、来なきゃ良かったな。
「GYAOOOOOOOOOOOOO」
黒竜が魔気を纏ったとてつもない咆哮を上げる。
腹を括るしかないね。
さて、竜殺しをはじめよう。
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