Episode115
そんなこんなでカインとレオが酒場へ到着するとノアは食事を始めており、残りのルナとミアはいつも通りよろしくやっている。
「遅れてすまない。」
カインが謝り、レオがカウンターの奥に居る店主に二人前のランチを注文してから席に着く。
「おふぁうぇり。」
「おかえり。」
「遅かったのう。」
モグモグと口をリスのように膨らませ食べるノアと、言い合いが中断されたのでやっと料理に手を付けだすルナとミア。
「んで、どうだったのよ。」
「駄目だった。」
「だから言ったのだ。さっさと、奴隷商人を買収して関わりのある貴族共の名前を吐かせたら良い。我の暗示を使ったらすぐだろうに。」
「そうだね、俺もそうするしかないと思ったよ。もうここまできたら...ね。」
少し思い詰めているように見えるカイン。
「別にそれが悪いことだとは思わないことね。」
「悪人に悪いもの何もないであろう。」
ミアやルナは悪は悪として断罪する派のようだ。
「ノアはどう思う?」
「やり方はどうでもいいけどさぁ。奴隷売買に関わっている貴族は処分するのは決定として、逆に関わっていない貴族へはカインが後ろ盾になる代わりに、その保護した奴隷を住まわせる施設を作って運営する資金を援助して貰ったら良いんじゃない?」
「そうか、そうすればただ疑うよりもお互いの体裁が保たれる...なるほど。」
「大貴族から没落貴族まで、数も多いしそこそこ腐ってると思うけどね。」
ノアは割りと興味なさげに、言い放つ。
「ノブレス・オブリージュ。」
「何よ。パーティー名をいきなり出して。」
「違う。言葉の意味の方を考えよ。」
「え、何よそれ?」
「国王や貴族などの財産、権力、地位を持つ者は、それ相応の社会的責任や義務を負うという意味だな。」
「ああ、そうだね。僕たちは高貴たる者の義務を全うしなければならない。」
レオの言葉に、カインは同意する。
「そう言うもんなの?」
「そう言うものだ。」
「そうだ。」
「うひむ。」モグモグ
リスのように頬を膨らましたノアは、チキンをおかわりしたようだ。
***
その後、冒険者パーティー:ノブレス・オブリージュの活躍により奴隷売買に関わる貴族が炙り出され、それが明るみに出ると共に、大貴族であっても没落貴族であろうと無慈悲に取り潰しとなった。
悪事に手を染める王国の貴族は軒並み潰され、三分の一にまで数を減らしたのだった。
五大貴族にも奴隷売買に加担していた者が居り、二つが取り潰しとなって残り三家となったのであった。
この件でカインは第一王子としての才覚を示すと共に、次期王としての王位継承権を得た。
全てが片付き、王家からの報酬もノア、ルナ、ミアの三人で分配し、いよいよ明日解散となった夜。
いつもの通りに、いつもと同じ酒場で、いつもの面子が集まる。
「じゃあ臨時で組んだこのパーティーもこれで解散だな。」
「なんか、寂しくなるわね。」
「俺たち凄いことをしたんだよな。」
「そうだね、確実に歴史が動いたよ。」
「ノアはこれからどうするの?」
「ん~僕は決めてないよ。」
「それなら私の家に来なさいよ。きっと気に入るわよ。」
「なぜだ? なぜノアがお主の家に行くのだ? しかもお主の家は世界樹であろう? そんな場所にノアを行かせるものか!」
「ちょ、なんでよ? それじゃあ、貴女の家にノアを呼ぶわけ? おっとありえないわよね? だって貴女は家なんて呼べるものは無いもんね!」
「なんだと? 我はノアと共にあるだけだ。 場所など関係ないわ。」
「それなら私の家でもじゃない! いいわ、ノアに選んでもらいましょう!」
「そうだ。 ノアどっちに行くのだ?」
「選んでよ今すぐに! どっちに行くの?」
ノアは話を全く聞いていなかったため、二人が一斉にノアへ問い掛けてきたのできょとんとした顔をしている。
「え?何、聞いてなかった。」
手には食べかけのチキンを大事そうに持っている。
カインとレオは椅子から崩れ落ちそうになるのだった。
ちょっとそこのキミ。
ブックマークと★★★★★を押しなさいよっ!
じゃないと...もう私...出てあげないんだからねっ―――。
―ミア―
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