Episode112
翌日、ノアが泊まる冒険者ギルド別館へと黒天がやって来る。
「昨日のはぐれワイバーンの討伐は楽勝だった上に、報酬は破格だったな。」
少々興奮気味に手振り身振りで話しだすゾーイ。
「ちょっと、よそ様のお家でお金の話は下品ですわよ。」
「そうだよ。ましてやノアさんやお姉さまに聞かれるかも知れないような場所なんだから、やめようよ。」
「もう、聞かれてる。」
注意するエリザベスとペネロペに対して、諦めたように呟くグレースは頭を抑えて深いため息をつく。
「何ですって?」
「嘘だろ?」
エリザベスとペネロペの視線の先には苦笑するエミリーの姿があった。
「ふぅ、エミリーさんでしたか。」
「お姉さまに聞かれなくてよかった...」
安心する二人に対してエミリーは、何も聞かなかったことにしてあげる。
「こちらにノア様たちが居られます。」
エミリーのノック音が響く。
「黒天の皆様がお見えになりました。」
「どうぞ。」
中からはシュヴァルツのものと思われる声が返って来ると、エミリーがドアを開け中の様子が見える。
部屋の中へと案内された黒天の四人は、中で起こっていた光景に衝撃を受けることとなる。
何故か国王と王子が居り、ノアたちとテーブルに同席してしているのだ。
国王の姿を見るや否や、跪くエリザベス。
それにつられてゾーイにペネロペ、グレースも同じように跪いた。
「こちらの方々が冒険者パーティ:元蒼天の現黒天の皆様です。」
エミリーが黒天を国王へと紹介すると、国王は空席へ視線を送る。
「そう畏まらなくてもよい、同席してくれないだろうか。黒天の諸君。」
「御意。」「かしこまりました。」「はい。」「承知しました。」
ベンブルック家の使用人にそれぞれが席へと案内されると、一斉に料理が運ばれる。
「っていうかさ、ここに来るのは良いんだけど、急に来るのやめてくれないかな?」
全く王家を敬わないのノアの発言に、凍り付く黒天の四人。
「昨日はごめんよ、ノア。まさか家紋無しで来るとは思っても無かったんだ。本当にすまない。」
ノアに対して王国の王子が謝罪をしている。これはどういう状況だと困惑する黒天。
「まぁ、良いけどさ。でもあの兵士たちの態度酷かったよねー? クロエ。」
「そうねぇ、ちょっと当たりが強過ぎて、凍らせてしまいたくなったわねぇ。」
冗談交じりに言うクロエにレイナの突っ込みが入る。
「クロエそれだと兵士が死んじゃう。」
「いえ、主へ対する愚行。万死に値します。今からでも消してきましょうか?」
「こらこら。良いんだよ名乗らなかった僕等も悪いんだし。」
純粋に兵士にキレてるシュヴァルツをノアが宥める。
「すまない。国民へ対しての態度も教育の一つへと追加することにしよう。」
「ルークもあれだよ、レインと変装でもして街にでも繰り出してみるといいさ。どこぞの国王みたいにね。」
悪い顔をして国王の秘密の趣味を暴露するノア。
「フハハハ。痛いところを突かれましたな。」
「え、父さんそんなことしてるの?」
国王の言葉に驚くルーク王子。
「たまにだ、たまーに。でもいいものだぞ? 露店の串焼きなんぞ絶品じゃ。」
「あーあれね、あれはおいしいよね。」
頷くノア。震える黒天。
「是非今度、私も食べてみたいな。」
「行ってみなよ。国内の護衛はレインで十分だろうしね。」
ノアが国王や王子に無礼な態度を取るのもそうだが、国王や王子がそれを普通のことのように受け入れていることや、使用人から秘書のエミリーに至るまでの全員が何も反応することなく黒天だけが違和感に苛まれることとなったのであった。
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そうしたら私、頑張って面白いの書くから。
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