ヲタッキーズ81 テロ細胞を潰せ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第81話「テロ細胞を潰せ」。さて、今回はネットワーク型のスパイ組織が跋扈w
必死に黒幕を探るヲタッキーズの前に死んだハズのテロリストの影、そしてモノホンの黒幕の正体は?
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 テロリストの細胞
「ターゲット、尾行中。昭和通りを南下」
「デルタ・タンゴ2、次を右折しろ」
「インサイト」
真昼の昭和通り。セダンからアラビアンな女が降りる。
「目標、降車。徒歩で移動を開始」
「桔梗門7、番町2。回り込め」
「了解」
アラビアンな女はショルダーバックを持っている。
「ボギーはバックを所持。通りの南側へ横断」
「"二日酔いの猫"、アフターバーナー」
「コピー」
あらゆる諜報組織がアキバに動員されてるが…
彼等が追うのは、たった1人のアラビアン娘←
「激マズだわ、マデラ。尾行、バレてナイ?」
「いいえ。大丈夫ょ、ルイナ。みなさん、プロだから」
「とにかく、遠くからね!尾行に気づかれたら、テロ細胞の構造が変わり、私達はネットワークへの手掛かりを失う」
マデラは、SATOの司令官代理で、事件を捜査中。
その指揮官に意見するルイナは、車椅子の超天才。
「わかってるわ。"パレス"から全セクション、十分に距離をとって」
「了解。右折して倉庫に入った」
「あ。内調と公調の責任境界に潜り込まれたw」
果たして、現場から悲鳴が上がる。
「ロスト!内調がターゲットをロスト!」
「何?公調こそ、サングラスなんか掛けてるから見失うンだょトーシロ!」
「馬鹿野郎!」
最後の怒声は…何とアラビアン娘本人。内調と公調が省益?争いをしている間に、見知らぬ宅配便とケンカを始めてるw
「どこ見てンのょ?!」
「アンタこそ。このカート満載の荷物が見えないか!」
「神は偉大なり」
筋肉質だが、明らかにケンカは素人の宅配便が大ぶりで殴りかかるが、アラビアン娘はヒラリとかわし腹を蹴り上げるw
「ぐげぇ!」
「目には目を」
「強えw何者ナンだ?」
のたうつ宅配便をボコボコにwさらに!落ちていたバールに手を伸ばし、高々と振り上げて宅配便の頭へと振り下ろす?
「ヤメろ!◯◯◯◯◯だっ!バールを降ろせ!」
「何?尾行してたの?」
「問題発生。傷害致死傷の疑いアリ。緊急逮捕スル!」
◯◯◯◯◯には、内閣情報調査室と公安調査庁が入る。2人とも私服だが拳銃を構え…ご丁寧に身分証まで提示してるw
「綱紀紊乱罪の現行犯で逮捕スル!」
「ビンラディン?人違いょ」
「バールを置け!」
SATO司令部では、ルイナが泣き出しマデラは頭を抱えるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部の"捕虜"尋問室。SATOは軍事組織で、逮捕や取調べという発想はナイ。あくまでアラビアン娘は捕虜。
「貴女、大金を持って何処へ行くつもりだったの?秋葉原を狙うテロの資金だったのでしょ?」
「何なの?何で尋問官がメイド服なの?」
「ヲタッキーズだから。ねぇお金の出所は知っているし、貴女がテロ細胞の一員だと逝うコトもわかってる」
メイド服のエアリとマリレはヲタッキーズの精鋭だ。ヲタッキーズは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団。
「テロ細胞?私は、テロリストじゃないわ。兵士ょ。秋葉原が仕掛けた聖戦を戦う神の兵士」
「貴女は"ラブプリンセス"元メイド長のテモシょね?」
「私のホーリーネームは、カリラ・オサン」
「女なのにオッサン?」
「オサンょ!」
「秋葉原テロの全容を教えて」
カリラは、深く呼吸してから答える。
「全ては神の御意志。誰にも止められない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部では、車椅子の超天才ルイナが落ち込んでるw
「ルイナ。内調も公調もあの状況では止めるしかなかった」
「でも、マデラの命令を無視したわ」
「人の命を救うためょ」
ルイナを慰めるのは、SATO司令官代理のマデラ。
「その結果、秋葉原に集う何千というヲタクの命が危険に晒された…ヲタッキーズの尋問は?何か成果があった?」
「お手上げみたい」
「ムダだと思う。どの道、彼女の持つ情報じゃ足りないわ。テロ細胞は、自律分散ネットワークなの。複数のパーツが集合体として働くけど、個々のパーツに横のつながりは無い」
「つまり?」
「例えば、半島の偉大なる領袖様の前で行われるマスゲーム。1人1人はパネルを掲げるだけ。全体像は、設計者が決める。個人は、全体像を知らされズ、ただ指示された通りにパネルを掲げるだけ。文字が完成したら任務は終了。テロ細胞も同じ仕組み。個人は自分の任務しか知らない」
自虐的につぶやきつつ、ホワイトボードに今回のネットワーク図を描いて逝くルイナ。アチコチに空白のBOXがアルw
「そのネットワーク図の空白、もっと埋められない?」
「マデラ。この図スラもう崩れた可能性がアルの。テロ細胞は、動的な存在。捜査がバレた今、恐らく組織全体の構造も変わってしまってる…ちょっとコモるわ、ラボに」
「まぁ。引きコモり?」
特殊部隊に護衛されラボに帰るルイナ
その後ろ姿を見送って唇を噛むマデラ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、東秋葉原の古い廃ビルの1室で、バリカンで髪を刈り上げて、ヒゲを剃る若者達。
迷彩服を着て直立不動。ニセの身分証明書用に写真を撮影、切り取りIDに貼りラミネート。
「逝け。天国で会おう」
直立不動で敬礼する"兵士"を1人1人抱擁スル"尊師"。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り地下のSATO司令部オペレーションルームw
集まった各省諜報機関の代表にファイルが配布される。
「内閣情報調査室長のライダだ。では、SATOのマデラ司令官代理から状況を説明スル」
「10日前、公調が池袋でスーパーヒロインのテロ組織アジトを急襲、PCを押収しました。解析の結果、秋葉原を狙ったテロ計画の存在が浮上。首相官邸アドバイザー、ルイナ博士のアルゴリズム分析で突き止めたのが、資金受け取り役の女、カリラ・オサン。他に2名の共謀者が存在する模様」
カリラ含めた3名の顔写真がモニターに並ぶ。
「しかし、彼女達はテロ細胞の末端と思われます。東秋葉原でスーパーパワーに覚醒後"リアルの裂け目"の"アチラ側"で訓練を受けた、元メイド長達です。SATO司令部は、ルイナ博士とさらに分析を進めます」
ライダ内調室長が引き取る。
「各機関は、引き続き全力で調査を進めるコト。諸君、脅威は現実だ。既に、我々は組織の活動資金を押収し、実行犯1名を逮捕した。総力を投じて捜査に臨み、標的を見つけ、テロを確実に阻止せよ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
会議を終えて、司令部に併設のラボへと引き上げるルイナを呼び止める声がスル。護衛の特殊部隊が…一斉に敬礼スルw
「空自のダムス1佐だ」
「官邸顧問のルイナです」
「実は、容疑者に関する情報がアルのだ、ゴスロリさん」
国宝級IQを誇るルイナには陸自特殊作戦群の護衛がつき、服装の自由が認められてるが彼女は趣味でメイド服を着用。
実は…ヲタクなのだw
「メイドさんって私?…私のゴス、似合ってますか?」
「モチロンだ」
「うれP。で、容疑者に関する情報とは?」
「例のカリラ・オサンだが、空自に入隊経験がアル」
「え。その時"神"に目覚めて改宗したとか?」
「さすが、鋭いな。貴女には、優れたロリの資質がアル。この女、マイナ・ウィン空曹。今はアルル・ドサリに改名してるが…」
「その名は初耳ですわ、御主人様」
「カリラ・オサンと同じ第2.5宇宙作戦群にいた。アルル・ドサンが改宗を勧め、同時期に空自を除隊している」
「レベル2の存在カモしれナイわ…」
「申し訳ナイが除隊までの情報しかない」
「ありがとうございます!どんな情報でも欲しいの」
「コピーをとってくれ、ゴスロリさん」
「ありがとうございます、御主人様」
「しかし、斬新だな。テロ組織をデータ解析で追跡するナンて」
「え。決して斬新じゃないわ…自律分散は、確立された研究分野なのです」
「そうか…テロとの戦いは10年になるけど、情報収集が1番だと思ってた」
「大佐が情報を集め、私が分析します。私達、最高の御主人様とゴスロリになれそうですわ。ね、御主人様?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「アルル・ドサリ!万世橋警察署だ!」
東秋葉原の中古ビルに拳銃を構えた警官隊が飛び込む。
「クリア!誰もいません!」
「見ろ。空自の偽造IDの出来損ないだ。ラミネート加工に失敗してる」
「空自の基地に潜入する気か?潜り込めば、最新兵器を奪取出来る」
警官隊は、頭をヒネる。
「恐らく制服も入手してるだろう。お前達、誰かコスプレショップに知り合いはいないか?」
「根っからヲタクのヲタッキーズに頼もう。とりあえず、空自に基地の警備強化を要請しないと」
「しかし…手遅れでなければ良いが」
第2章 アキバ補完計画
ルイナのラボはSATOの地下司令部にある。好きなだけ持ち込んだ黒板に片端から方程式を描き殴り勝手に行き詰まるw
「ルイナ。今度は何なの?」
「あ、マデラ司令官代理。今、各ポイントのコネクションを使い、捕虜にしたカリラ・オサンのテロ組織内のステイタスを調べているトコロ」
「手ごたえは?」
「ありました。私の計算が正しければ、彼女は…」
ボードに描き出したネットワーク図を指す。
「この位置にいるはずょ」
ネットワーク図の端に偽造IDの写真を貼る。
「まぁ!前進じゃないの!」
「でも、私1人で見つけたんじゃありません」
「あら。さっきから何かウキウキしてるけど、何か素敵な出逢いでもあった?」
「実は、素敵な空自の1佐サンと会っちゃった」
「まったく!秋葉原がテロの標的になってるというのに」
ココでルイナのスマホが鳴る。万世橋警察署で特捜班を率いる敏腕警部のラギィからだが、ルイナは会議アプリに切替。
「ルイナ?アルル・ドサリの住処を家探ししたら、オサンにつながる証拠が出たわ」
「ナイス。アルル・ドサリとは間違い無くネットワーク関係にあるわ。私も同じ結論ょ」
「あ、ヲタッキーズのエアリです。先週、地下アイドル通りのコスプレショップで宇宙作戦群の軍服一式を2人分購入したアラビアンがいるって。コスプレと偽造IDで何処かに潜入スルつもりみたい」
ヲタッキーズは、SATO傘下の民間軍事会社だが、異次元人絡みの事件では、よく万世橋との合同捜査に駆り出される。
因みに、カフェ勤務のエアリは、いつもメイド服だ。
「待って。そう言えば、昨夜強盗があったの。メディカル系のスタートアップで警備員が殺されてる。社名はテトロ薬品」
「スタートアップ?民間企業なの?」
「YES。でも、押し入った強盗は自衛隊の制服を着てたらしいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部からセキュリティ画像が転送されて来る。
深夜の搬入用ゲートの前に停車スル軍用トラック。
「このスタートアップは、空自の基地に洗剤や医療用の薬品を販売してる。ほら、コスプレ兵士が警備員にIDを見せてるわ。警備員は…この人、後で殺されちゃうけど、軍服とバッチだけ見てゲートを開けちゃう」
「あの車は?」
「映画の撮影用。"戦国自衛隊2025"用の改造トラック。で、先週、盗難に遭った」
「襲われた倉庫は防犯カメラはナシ。コレが帰りの映像です。書類を確認しようとして…ココで警備員は後ろから撃たれた」
画像の中で警備員が崩れ落ちるように倒れる。
走り去るトラックは、荷台にドラム缶を満載。
「犯行が6分以内?計画的だわ。盗まれたのは?」
「メチルホスホン酸ジクロリド」
「何ソレ?美味しいの?」
「毒ガスでサリンの主成分です。ただし、サリンに生成スルには、他にも薬品が必要です。トリメチル…何とかで、実は3週間前に230リットルが盗まれてます」
「何てコト!秋葉原全体を汚染スル量を生成可能だわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「秋葉原即応集団第2.5化学防護隊のバンカです」
制服に美女!コレは反則だ。例え毒ガス部隊でもw
「自分は、ガスヲタの有機化学者です。中でもサリンは推せる。優秀なの。整った分子構造で確実に目的を果たす化合物…であります」
「目的?ってか本件任務中は敬語省略で」
「はい…目的は殺人ょ。サリンは高揮発性の神経ガス。直ぐに気化スルわ」
「ガスなのね?吸うと症状が?」
「呼吸だけでなく、皮膚や目からも吸収スルの。だから、ガスが撒かれたと誰も気づかない。無味無臭で無色の毒ガス。人々が悶え苦しんで初めてワカル」
「生成には、特殊な技術が必要?」
「モチロン技術はいるけど、大学院生でも可能なレベル。重要な点は、有効期間、と言うか、ぶっちゃけ賞味期間が短いから、通常は生成直前の状態で保管して…」
「誰かを攻撃スル直前に現場で生成スル?」
「YES」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボに引きコモる車椅子の超天才ルイナ。
「兵器はサリンかもしれない」
「サリン?」
「あ、マデラ司令官代理。ラギィが標的候補を調査中です。私は脅威分析の手法で高確率の標的を探してみます」
「うーん毒ガス攻撃なら、閉鎖的な場所を選ぶわね」
「地下鉄やモールですか?」
「カモね。サリンは、使う量は多くても実行役は少人数で散布出来るのが特徴ょ」
「そっか。限られた場所で多くの死傷者を出すには、って観点から変数を追加出来そうです」
アキバの地図を広げて考え込むマデラとルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の捜査本部。
「ラギィ警部!解毒剤の在庫を増やすよう"秋葉原ER"に指示しました!」
「必要ないと良いけど」
「…警部、もう使用された痕跡が。1時間前に急患2名が緊急入院した模様。サリン中毒です!」
一気に殺気立つ捜査本部。
しかし2.5化防バンカは…
「2人だけ? 不謹慎だけど、少し物足りないわ。テロなら被害者の数はもっと多いハズ」
「その2人は、生成か運搬の担当なのかもしれない」
「テロリストの一味なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"。ラギィ警部が駆けつけると、既に病室の前には化学防護服を来た陸自の立哨がいる。
「2.5化防バンカ。御苦労。コチラは所轄のラギィ警部」
立哨が一斉に敬礼スル。バンカ、君は一体…
「意識は?聞こえてる?」
「揺さぶらないで。昏睡状態ですね。誰か?」
「何事なの?私の旦那に近寄らないで!」
エグい翠色に髪を染めたデーハーおばさんが立ちはだかる。
「万世橋警察署のラギィ警部です。現在。テロの捜査中」
「テロ?主人と息子は、引っ越ししてただけょ」
「どこでサリンに触れたのですか?」
「だから、お引っ越しの最中だったの。新居にね」
「リアル引っ越し?マジ?」
「マジ。パッキング中だった。主人と息子は、借りて来たトラックに荷物を積み込んでて…外に出たら主人が倒れてた。糖尿病だから低血糖かと思ったけど、息子まで…」
「糖尿病は遺伝します」
「マジ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。小型トラックの周囲は、十重二十重と黄色い規制テープが囲われ、色とりどりの防護服の男達が右往左往。
いや、女も。2.5化防バンカだw
「こちらバンカ。行きます!バックドアをこじ開けて!」
隊員がバールでドアを少し上げる。バンカ、君は一体…
「センサーを入れるわ…」
「バンカ、反応は?」
「ビンゴ!」
探査機がピーと鳴る。防護服姿の恐らくバンカがすっくと立ち上がり、胸の前でバツのサインを出す…意外に巨乳カモ←
「サリン陽性反応!全員退避!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「荷台の残留物の無毒化は完了しました。目下、鑑識が調査中です」
「このトラックを前に借りてたのは誰?」
「恐らく偽名で住所はデタラメ。今、漫画屋に似顔絵を描かせてます」
全員退避から1時間後。色とりどりの防護服の者は、全員ヘルメットを上げ素顔で作業している。ラギィに情報が集中。
「警部、鑑識です。トラック車内の指紋は、軽く100人分は超えます」
「片端からデータベースに照合ょ!異次元人総領事館とも連携して。何ならSATO経由で…あら?何?」
「警部!あそこ!」
部下が指差した時には既に頭上に"ナイトレイド"が飛来してる!夜襲専門のステルスヘリ、シコルスキーUH-60だw
「散開しろ!円周防御!全周戦闘用意!」
唖然とスル防護服の者達を尻目にヘリから飛び降りた特殊部隊が素早く展開し現場を制圧、さらに戦闘ヘリが飛び交うw
「ルイナ!何しに来たの?私の現場ょ!」
「ごめんなさい、ラギィ警部!攻撃シナリオが完成したの。標的を予測出来たわ。実に巧妙。直接説明しようと思って…」
「アプリで十分よっ!何で貴女が現場に?まさか、空自の何とか言う1佐と会えるとでも?」
「キャ!バレた?」
呆れる話だ。そんなんで出動スル特殊作戦群もどーなの?
「とにかく、解析結果は水道なのっ!他の場所より4倍も確率が高いわ」
「え。水道?でも、サリンはガスでしょ?」
「最初の状態は液体なの。だから、水にも溶かせるわ。ソレに水道の方が秋葉原中にクマなくバラ撒ける」
暫し考え込むラギィ警部。
「ちょっと来て、ルイナ」
「何?どういうコト?協力してるのょ?」
「ダメょ」
「どうして?」
「貴女は戦闘訓練とか受けてナイでしょ?既に被害者も出てるわ」
「でも、テリィたんとか、いつもウロウロしてるじゃない」
「テリィたんは良いの。ミユリがいるから…」
ココで、現場にアタッシュケース型のPCやらプリンターやらを持ち込みデータベースで指紋照合中だった鑑識が大声。
「トラックの指紋を照合したトコロ、先月の秋葉原ゲートウェイ空港の税関記録から同一指紋が出ました」
「げ。何者?」
「ジョセ・ハリズ。バビロニア国籍の大物テロリスト」
第3章 裏切り者は誰だ?
神田旅籠町の古い一軒家に忍び寄る警官隊。裏と表に回り、短機関銃を構え、ドアの左右に張り付く!
まさに突入、という時に青と紫のアラビアンコスチュームの女子2名が飛び出てベリーダンスを踊る…
ハズもなく、いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ短機関銃をロクに狙いもせズ乱射!算を乱し逃げ惑う警官隊w
「撃ち返しちゃダメ!生け捕りにして!」
「ソンな御無体なw中の様子を探れ!B班行け!」
「了解!」
裏口に回った班が、窓の隙間から先端にカメラのついたファイバーケーブルを差し入れる。
陣頭指揮のラギィ警部のトコロに、小さなモニター画面が届けられる。アンテナを伸ばす。
「何コレ?ビーカーや試験管?理科の実験室なの?…しっ!複数の話し声がスル。アラビア語ょ。誰かワカル人?」
一斉に明後日の方を向く警官隊w
「この家は…サリンの生成工場みたいね」
「警部!この歌うようなザワメキは…」
「あ。さっきのアラビアンナイトのコスプレ女子が床に突っ伏しメッカに向かって祈ってるわ!チャンス!突入!」
先頭2人にガスマスクを被せ、正面から突入スル警官隊!
「万世橋警察署!手を上げろ!」
神聖なる祈りの時間に襲われたアラビアンナイト女子は渋々と両手を上げる。
うわ、アラビアンナイトお約束のヘソ出しコスプレだ。警官隊が喜悦の表情…
そのスキに青アラビアンが隠し持ってた試験管を落とす!
「やめろ…」
「アッラーアクバル!」
「サリンだ!退避しろ!撤退!周辺を閉鎖!」
警官隊は、再び算を乱して退却。たちまち、床に崩れ落ち、悶え苦しむアラビアンナイト女子2名。絶命までは…数分w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場のサリン反応が消えたのは暗くなってからだ。化学防護服に身を固めた警官がアラビアンナイトの遺体を搬出スル。
「薬品類は、全部消えています」
「サリンであれば、生成後直ぐに使用されるハズです」
「最悪の場合すでに兵器化されているな」
空自のダムス1佐だ。ラギィが絡む。
「水道の安全を確認しなきゃ」
「ん?水道?何故だ、警部」
「ルイナのアルゴリズム解析の結果ょ」
「そんなモノに全てを賭けるのか?」←
「だって、いつでもルイナは正しいンだモノ」
ココへ防護服を着た警官が透明な袋に入れた証拠を示す。
「警部!室内でコレが見つかりました!」
「…ねぇコレサリンの希釈表じゃないの?秋葉原を汚染スルのに必要な量とか計算しちゃう奴だわ。ダムス1佐!」
「了解した。所轄は、飲水禁止の警告を出せ。シャワーやスプリンクラーの水も、全部危険だ。我々は、サリンを探す」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。SATO司令部のラボ。
「"生成・運搬細胞"の2名は死亡」
「だから、役割分担は細分化されてるの!」
「わかったって。ヤレヤレ」
怒れる超天才ルイナをナダめるマデラ司令官代理。
「死んだアラビアンナイト2人は"生成&運搬細胞"ょ。きっと別に"実行細胞"がいるわ」
「わかったから、黒幕を見つけて。ソレまで現場に出ちゃダメ。空自のハンサム1佐もお預け」
「ええっ。みんな、わかってない。死んだアラビアンナイト2人はパズルのピースなの。もっと現場でピースを集めなきゃダメなの!」
苦悶するルイナは、ラボの黒板に数式を描き殴っては消し、描き殴っては消す。まるで賽の河原ね、と渋い顔のマデラ。
「マデラ!私、汚染方法について考えてみたの。サリンをどうやって水道に混入させるか。貯水池や用水路は、大規模過ぎて狙いにくいし、猛毒とは言え、希釈されてしまい、効果がナイ。そうょね?」
「ルイナ。ラギィから貴女を現場に出すな、と叱られたの」
「え。何で?」
「危険だから。貴女は国宝級の超天才。みんなが心配しているのょ」
「ダメ!ソレじゃ1佐と会えナイわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部では、ライダ内閣情報調査室長が吠える。
「諸官。テロリストから首相に要求があった」
「贋者では?信憑性は?」
「残念ながら高い。しかも、政治的な要求をして来てる。即ち、拘束中の異次元人テロ容疑者8名の釈放、"リアルの裂け目"からのSATOの撤退、賠償金の支払い」
憤慨するマデラ司令官代理。
「交渉はあり得ナイわ」
「つまり、テロは実行されるワケだ」
「わかったわ!」
瞬間、漂った閉塞感を吹き飛ばす、ルイナの元気な声。
アプリで接続されてるジャドーラボから話に割り込む。
「何がわかったの?」
「組織の"細胞構造"よっ!自決した生成・運搬細胞やアルル・ドサリを変数化してデータ解析をやり直したら…」
「組織の全貌が判明?!」
「ソレはムリ。ただ、トップがわかった。シャリ・フリル・マリキ。異次元人テロリストょ」
「その女で間違いないの?」
「ネットワーク構造図を逆算して遡った。彼女が黒幕ょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のメインモニターにルイナのネットワーク図。
いくつか空白はアルが中央にシャリ・マリキの顔写真。
金色ゴージャスなパーティドレス。何かの隠し撮りか?
「彼女の写真はコレ1枚だ。blood type BLUE。スーパーパワーを持つ異次元人ヒロイン。各国の諜報機関、警察組織が血眼になって探し回ってる」
「私のデータ解析とも一致スルわ」
「テロリストが釈放を要求した拘束者は、全員シャリ・マリキと関係があります。また、死亡した3人のテロリストは、いずれもマリキから異次元でテロ訓練を受けてます」
実は、僕は衛星軌道上にある第3新東京電力の宇宙発電所長をやっていて、アキバに降りて来るのは久しぶりナンだが…
「あれ?シャリ・フリル・マリキ?彼女なら死んでる。4ヶ月前、大気圏突入の際に暗殺されたょ?」
全員が一斉に僕を見る。休暇気分が消し飛ぶ。
「君が…テリィたんか?いつ秋葉原に戻った?」
「さっき。はじめまして、ですか?」
「内閣情報調査室長のライダ」
あと宇宙作戦群のダムス1佐は、対面は初めてだけど面識はアルので、軽く会釈。ヲタッキーズは…マリレとエアリだ。
ミユリさんは"変身"してナイみたいだ。御屋敷かな?
「でも、テリィたん!絶対的に彼女が黒幕なの!私のデータ解析は完璧ょ!」
「ルイナ。ソレは疑ってナイょ。間違いなく、黒幕はシャリ・フリル・マリキ"だった"」
「"だった"?死んだの?でも、そんなハズは…」
「多分コレは、ハイジャックだ。ルイナ、ネットワーク上の各細胞は自分の役割しか知らないんだろ?」
「YES。ソレが細胞構造ネットワークの利点であり欠点でもアルの。テリィたんがお星様の中でお仕事してる間に…」
「ハンサムな1佐と出逢ったんだって?」
「意地悪。みんなには、パネルを掲げて人文字を作る例え話をしたンだけど…」
「ねぇルイナ。もし設計者がすり替わっていたら?全体像を知る者は少ないから、細胞に知られずに計画を乗っ取るコトが出来ルンじゃナイか?シャリ・フリル・マリキの設計図さえ、手に入れれば…」
「え。マリキの死後、誰かが彼女の計画を細胞ネットワークごと乗っ取った?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マズいクセに地球に戻ると無性に飲みたくなる、恐らく麻薬入りの捜査本部のパーコレーターのコーヒーを飲んでたら…
「テリィたん。内調のライダだけど、官邸は、金を払う決断をした。サリンと交換だ。受け取りの前後に4億を送金する」
「テロリストと取引するのか?」
「いいや。政治的要求は飲まない。拘束者の釈放は無い」
ギャレーでライダと話してたらダムス1佐が合流w
「最近"リアルの裂け目"界隈では良くアル話ナンだ。誰かが異次元人に誘拐されると、何処からともなくnegotiatorが現れて…」
「negotiator?」
「モチロン、仲間の異次元人だ。しかし、金を払えば人質は解放される。官邸が取引したコトにはならない」
「そんなモン?」
合点が逝かズ浜田省吾風の伊達サングラスをかける僕←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何となく居場所がなくなり、SATO司令部へ。
「マデラ、ルイナはいる?」
「ラボょ。テリィたん、話がアルんだけど」
「おやおや珍しいな」
ところで、SATO司令部はゲーセン地下に秘匿されてる関係で全員コスプレだが、マデラはロマンスカーEXの車掌だw
「あのね。ラギィが危ないってルイナが現場に出るのを禁止してるの。でも、彼女は何が危険かは自分で決めるって」
「ソレってルイナがハンサム1佐に逢いたくて…まぁソンなコトょり水道システムだょ。ルイナの解析結果ナンだろ?組織を乗っ取ったのは、水道システムに詳しい誰かだ」
「悪いけど、テリィたんソレ違うと思うな。テロ細胞の構造から言うと、みんな狭い視野しかナイの。プールの子供達を考えて。プールの中にいる親は、周囲の状況を全て把握するコトが出来ない。自分の子供を見るのに手一杯。でも、監視員なら全てを見渡せる。つまり、広い視野を確保出来る場所にいる者が乗っ取り犯ってコト」
「ソレってネットワークの外にいるってコト?」
「そーは逝ってナイ。各細胞から距離を置いてるってコト。ソレでいて、シャリ・フリル・マリキに接触してるのは?」
困り顔で考え込むマデラを見て、ってか困り果てた車掌さんを見て何となく愉快だったけど…その時、急に頭に稲妻がw
「あれ、待てょ!…ヤバ。ミユリさーん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中の万世橋地下駐車場。
「深夜までテロリスト探し。御苦労様と逝いたいトコロだけど…」
「テリィたん?」
「空自の宇宙作戦群は、シャリ・フリル・マリキを暗殺したょな。彼女のシャトルは偽装大気に突っ込み萌え尽きた」
暗い駐車場で、僕はダムス1佐と対峙スル。
「だから何ナンだ?」
「ダムス1佐。君は、捜査本部でマリキが貴官の作戦で死んだと知っててワザと秘匿した」
「私は民間人ではナイ。テリィたん、君とは違うンだょ。極秘任務は、終了後でも口外は出来ない」
「ナゼ出来ない?KLにある貴官のオフショア口座に官邸から4億、振り込まれたからか?」
ダムス1佐は、咄嗟に左右に目を凝らす。右手の暗闇に潜むメイド服はエアリ、左手はマリレ。そして僕に背を預けて…
「ムーンライトセレナーダー?!」
「じゃ歌ってもらおうか」
「わかった」
ダムス1佐は、観念して肩を落とす。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜の取調室でダムス1佐を待つのは、ラギィ警部だ。
「1佐。貴官はシャリ・フリル・マリキ暗殺任務を終了後、秋葉原サリン計画を入手し、一儲け企んだ。OK?」
「本官が黒幕だとしたら、ワザワザ所轄の愚鈍な捜査に加わると思うか?」
「官邸の4億の支払いを確実にするタメでしょ?」
「任官宣誓以来、国民のために人生を捧げて来た」
「そして、その人生を4億で売ったのね」
「…容疑は否認だ。しかし、もし仮に、あくまで例えばの話だが、私が黒幕だとしても、絶対にサリンを使わせはしない」
「どう食い止めるの?」
「水道への混入を行う"実行細胞"を殺すのさ。そうすれば、計画が実行されるコトは無い。秋葉原のヲタクは無事だ。安心しろ。そして4億は…どーせ税金だ」
意味不明のドヤ顔で挑発するダムス1佐。その時…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
部下に呼び出されたラギィは、直ぐに取調室に戻る。
「サリンが消えたわょ。貴官が歌った倉庫は空だった」
「何?そんなバナナ…じゃなかったバカな!あの倉庫にあるハズだ!」
「間抜けの…じゃなかったモヌケの空ょ。コレでも、秋葉原のヲタクが無事だと言うの?」
「…」
「もし、ヲタクが1人でも死んだら…」
「本官は黙秘スル」
第4章 ムーンライトセレナーダーの由来
「テロ細胞は、環境に適応するため、構造が動的に突然変異するコトがあり得る」
「つまり、ルイナのデータ解析では得られなかったコトが起こってるってコト?」
「残念ながら、YES」
ジャドーラボのルイナと捜査本部のラギィがアプリで会話。
「ルイナの言う"生成・運搬細胞"が潜んでた家には、細胞の2人以外にも人がいたらしいわ」
「やっぱり。何人?」
「近所の聞き込みを合計スルと4人が目撃されてる」
「既に突然変異が始まってる。仮に"実行細胞"を殺しても、ネットワークは細胞を変異させ、代わりを送り込むだけね」
「水道テロの線は、まだ生きてるの」
「脅威解析の結果は生きてる。計画は進展中」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「秋葉原特別区保健衛生部、緊急声明を発表!」
ミニコミ誌から今や世界有数のメディアに成長した"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"のニュース速報が流れる!
「現在、秋葉原地区全域に水道汚染の危険があります。原因は現在調査中とのことで、詳細や原因は不明ですが、下水管破裂の可能性がアルとのコトです。秋葉原のヲタクのみなさん、安全が確認されるまで水道水の使用を控え…」
ラギィがエネルギッシュにswitch OFF。
「下水管の破裂?よくもまぁ…いずれにせょ秋葉原は夢の中。こんなニュース、誰も見てないわ。朝になれば、普通に水を飲んで、使って、浴びちゃうわ」
「ダムス1佐は、黙秘を続けてます。このママ、逃げ切る気かもしれません」
「八方塞がりだわ…あ、テリィたん?いつ地球に…」
このタイミングで、僕は捜査本部に客を連れ込む。
「みんな。2.5化防のバンカ隊長だ」
「化学戦のプロょ。特にサリンのコトなら任せて」
「待って。ウチにも専門家が…」
構わずテーブルにアキバの水道幹線図を広げるバンカ。
「見て!秋葉原の水道規模から考えると、サリンの混入は浄水場を出た後ょ。主要配水管の何れかだわ」
「何れかじゃ困る。そもそも主要配水管に絞っても良いモノなの?」
「水量が多過ぎると、サリンの効力が弱まる。主要配水管1本でも1万5000から2万世帯を攻撃可能だわ」
「ソレにしても、全長4000キロ以上ょ?地中配管の何処で投入されるかがわからないと!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ココは単刀直入に聞くに限る←
「何処でサリンを混入スルのか教えてくれ」←
「え。私に答えろと?」
「YES。時間がない」
ダムス1佐は、即座に首を振る。
「嫌だ。ソレでは罪を認めるコトになる。あくまで、黙秘だ」
「朝になれば、何千ものヲタクが水道の蛇口をヒネる。アニヲタも、ドルヲタも、鉄ちゃんも、歴女も。サリンで皆殺しになるぞ。貴官は、華やかなキャリアを汚し、こんな形で人生を終えるのか?ヲタクの恨みは怖いぞ」
「わ、わ、わかった、教えよう。実は"実行細胞"はサイキックが率いてる。彼女は、人の心に入り込み、恐怖で"実行細胞"を支配スル恐ろしい吸魂鬼だ…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「万世橋駅だっ!いや、ecuteじゃなくて地下の方!」
夜明け前。焦燥感が募る捜査本部に駆け込む僕。
「東京地下鉄道の旧万世橋駅がサリンの混入ポイントだ。現在は廃駅だけど、確か闇のゲーセン?秘密カフェ?あ、最後はランジェリーフットボールやってたな…バンカ隊長、どんな感じ?」
「地図をモニターに出して。なるほど。芝浦水再生センターからの主要幹線に混入するワケね?しかし、ココだと水圧が強力だから、ポンプが必要だわ…待って。確か営団時代につくった隧道用の消防連結送水管の送水口がココに…」
「警部、巡回中のパトカー"練塀町5"が、御成街道架道橋下に謎の消防車を発見、直後に音信不通!神田消防に照会したトコロ、現在出動中の消防車はナシとのコト!」
「了解。決戦はエディオン前だ!」
「alright!GO!GO!GO!」
「今回のラスボスは、PSYCHO-PASS系のスーパーヒロインらしい。ヲタッキーズを投入スル。ムーンライトセレナーダー、standby」
「はい。テリィ様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は…市街戦だ!
御成街道架道橋と中央通りが交差するアキバの1丁目1番地。
架道橋下の赤い消防車を十重二十重と取り囲む警官隊だが…
「ナゼ突入しないの?サリンが混入されちゃう!」
「ソレが…近づいた連中は全員あのザマでw」
「え。吸魂鬼に魂を喰われた?」
パトカーの影に隠れた警官が指差す先に…死んだ目をした警官達が、幽霊のように立ったママでユラユラと揺れているw
「二手に分かれよう。警官隊は、地下の水道幹線に向かえ。地上のポンプ車は…ムーンライトセレナーダー、何とかカタがつくかな?」
「はい、何とか。敵のPSYCHO-PASSが姿を現さないのが気になりますが」
「手下達がポンプ接続作業中だ。今のうちにカタをつけてくれ。サリン混入が始まると厄介だ」
ムーンライトセレナーダーは、微笑んで立ち上がり、何の躊躇いもなく、スタスタと歩いて逝く。
因みに、彼女は純白のヘソ出しセパレートのコスプレで…まぁコレは巷では僕の好みとされてるw
いわゆる白ビキニって奴だね←
「貴女の霊気は効かないわ。出て来なさい、吸魂鬼」
開いたグレーチングから冷気が立ち昇り、気温が一気に10℃下がる。そして腐敗したグレーの布を纏った女が現れる。
「地獄の使いょ迎えに来たわ。地下に降りた警官の魂は、全て私が喰った。全員、廃人にしてやったわ」
「あらそう。じゃ地獄へ靴ズレね。キスしょ?」
「えっ?道連れでは?」
驚く吸魂鬼にムーンライトセレナーダーがキス!うーん普通は吸魂鬼の方からキスするみたいナンだけどwま、良いか←
「ム、ムーンライトセレナーダー!貴女、廃人になるのが怖くないの?」
「当たり前でしょ。私、ヲタクだもの」
「今まで、幾多のスーパーヒロインの魂を喰い、絶望と憂鬱の中に沈めて来た私が…でも、このトロけるようなキスは素敵w私、負けましたわ(回文)」
次の瞬間、霊気が晴れ、揺れてた警官がバタバタ倒れる中を警官隊が殺到し"実行細胞"を圧倒!
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「全員、手を上げろ!」
「"練塀町5"の仇をとれ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一件落着だ。万世橋の捜査本部では、後片付けが始まるが、その横を手錠姿のダムス1佐が蔵前橋へと連行されて逝く。
「食い止めてくれたか?」
「消防車に偽装したポンプ車、地下のタンクローリー。全て取り押さえた。危機一髪だった」
「金が目当てじゃナイ。大義があった」
おかしなコトを逝うダムス。
「大義?難儀の間違いだろ?」
「太平の安寧を貪るヲタクにテロの脅威を示した。テリィたん、君は秋葉原の持つ脆弱性や危機管理のあり方を見直してくれたまえ」
「OK。でも、ソレを貴官から教わる気はナイ。授業料の4億は払い戻したょ…連れて逝け」
うなだれて姿を消すダムスと入れ替わりに、ライダ室長。
「ダムスからテロリストの情報を得た。残党もじき逮捕だ。良くやった。では」
僕の肩をバンバン叩いて彼も去る。そして…
「ミユリさん。やっぱりメイド服が1番だね」
「ウソです。ホントはムーンライトセレナーダーのコスプレの方がお好きなのでしょ?」
「まぁ今回は地下鉄絡みだったからね。あのコスプレも最初はブラックだった。覚えてる?」
「はい。未だテリィ様の描くSFは凡庸で、私がパワーに覚醒スル前でした。ムーンライトセレナーダーは、元はと逝えばテリィ様の出世作"地下鉄戦隊メトロん5"に出て来る"悪の女幹部"でした」
「そうそう。ムーンライトセレナーデをBGMに登場しては、戦隊を毎週ピンチに追い込む…ピンチと逝えば、もしミユリさんが魂を吸魂鬼に喰われたらどうしようと思ってた。心配してたけど」
「そんな心配は御無用です…だって、その時は、テリィ様が守ってくださるのでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「ワラッタのブレーキングニュース、見た?」
「え。何?」
「水道の安全が確認されて、警告が解除されたンだって。今まで断水だったっけ?」
何も知らない常連達がバカを逝っている。
「スゴいモンだな、SATOのマスコミ操作は」
「全部マニュアルどおりナンですって…あら、マデラ。マスコミ操作が終わったの?サリンにもテロにも全く言及ナシ?」
「あら。何の話かしら…ところで、ミユリさん。貴女、どうやって廃人になる恐怖に打ち勝ったワケ?」
「ソレは…つまるトコロ、魂って脳を流れる電流という見方もアルでしょ?発電器官を持つ私には、電気は魂より強し、としか逝えないわ」
「まぁ。単にキスが上手いだけかと思ったわ」
大爆笑だ。
「とにかく、今回もムーンライトセレナーダーには、アキバを代表して御礼を逝いたい。gracias」
「え。テリィたんが姉様に感謝した?信じられないわ」
「メイドとして光栄な御言葉です。今宵は、その御言葉を抱いて寝ますわ…でも、テリィ様。いつからソンなに謙虚に?」
ミユリさんは、心の底から驚いたような顔だ。
「あのさ、ミユリさん。ヲタクだって学ぶンだょ」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"毒ガステロ"をテーマに、ネットワーク組織末端の現金輸送係、その教育係、死んだハズの大物テロリスト、彼等を追う内調室長、恋する超天才、敏腕警部、凄腕の化学防護隊長、宇宙作戦群の士官、敵方にディメンター型のスーパーヒロインなどが登場しました。
さらに、超天才のカワイイ片思いなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり日本人だけで混み合うようになった秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。