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3.幼馴染の侯爵令嬢

「フリージア、フリージアはいるか?」


ばん、と勢い良く執務室の扉を開けると、第一王子は愛しい恋人の名を呼ぶ。

部屋の中には侯爵令嬢と、側近である宰相の令息が居た。

二人は何故か密着するほどの距離で向き合っており、第一王子が入ってくると、驚いた顔でこちらを振り向いていた。


「こ、これは第一王子殿下。お早いお帰りで。」


そう言って、宰相の息子は恭しく一礼する。

その隣で、侯爵令嬢も焦った様子でカーテシーをしていた。


「どうしたんだお前たち?」


第一王子はそんな二人を見比べながら首を傾げる。


「いいえ、なんでもございませんわ。ただ、貴方様のお帰りが遅いと心配しておりましたの。」


「おお、そうであったか、待たせて済まない。」


第一王子は侯爵令嬢の言葉に気を良くし、彼女と共に執務室のソファへと腰掛けると、蕩ける顔で話し出した。


「ああ、嫌だ嫌だ。あの女に一瞬でも会うだけで、寿命がすり減っていくようだ。」


「まあ。」


第一王子の愚痴に、侯爵令嬢は嫌な顔一つせず、一つ一つ丁寧に頷きながら聞いてくれた。

そんな真摯な態度に、第一王子のささくれ立った心が癒されていく。


「お前とすぐにでも結婚したいが、そうすると側妃にしかしてやれない。今暫くの間我慢してくれ。」


「はい、殿下。」


「あの女と婚姻は交わしたが、私が渡りもせずこのまま放置していれば、いずれ根を上げて国へ帰るだろうさ。他国の王女などありえん。」


第一王子には策があった。

あの老魔女のような第一王子妃を、このまま何もせず放置すれば、きっと気位の高い王女のことだ、我慢しきれず離縁を要求してくるだろうと。


第一王子は、どこの国の王女も皆高慢で我儘なものだと思っていた。

暫くすれば勝手に国に帰るだろうと、信じて疑わなかった。


第一王子はその昔、外交と称して他国から訪れた王達が連れて来た、姫君たちの遊び相手をしたことがあった。

その時に、王女というものを嫌という程、理解させられた。


あんな者、淑女とは言えん、高慢で派手好きで我儘放題の女よりも、自国の貴族の娘の方が立場を弁えており、しかも英才教育もばっちりだ。


第一王子は結婚するなら、自国の貴族の令嬢だと思っていた。

そう、例えば幼馴染である侯爵令嬢のような……。


「その点、お前は気立ても良く美しい。貴族としての教養も十分で、まさに私の妃に相応しいな。」


「まあ、嬉しい。」


王子の言葉に、侯爵令嬢は嬉しそうに微笑む。

フリージアの美しい髪の毛を何度も梳きながら、第一王子は彼女との逢瀬を楽しんだのであった。


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