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魔法の鏡

作者: 車馬超

 とある王国に伝わる魔法の鏡は、何でもあらゆることを知っていて、前に立った人間の質問に答えてくれる。


「鏡よ、鏡よ、鏡さん……世界で最も美しい女性は私なのですか?」

「おっしゃいます通り、この世で最も美しい女性はお妃さまでございます」


 そんな魔法の鏡に、お妃さまは毎日のように自らの美貌を確認する言葉をかけては、その返事に満足してうっとりしていた。

 自らを称賛する言葉というものはいくら聞いても気持ちいいものだ。

 しかし余りにも同じ文句ばかり聞くと、ひょっとしてこの鏡はこれしか言えないのではないかという不安がわき上がってくる。


 だからお妃さまは、時折質問の仕方を変えてみることもあった。


「鏡よ、鏡よ、鏡さん……私の美しさは他の女性と変わりませんか?」

「それは違います、お妃さまは他の女性と比べても際立って美しゅうございます」


 もちろん返事こそ変われどその内容はお妃さまを称賛する言葉なのは変わらない。

 おかげでお妃さまは自分の美しさへの自信を失うことなく、安心して魔法の鏡の言葉にうっとりと酔いしれることができるのだった。

 ……その鏡の中に映る丸々と太った自らの姿を顧みることなく。


 何せあらゆることを知っている魔法の鏡が自らの美しさを肯定してくれるのだ。

 だからお妃さまは自らの美しさを保つ努力などとっくに放棄して、今では自堕落な生活を送っている。

 もはやお妃さまは本当の鏡の使い方など思い出せなくなっていたのだ……当然、鏡という物が見せる結果は、常に反転しているという当たり前の性質すらも忘却の彼方に……。


「鏡よ、鏡よ、鏡さん……世界で最も美しい女性は私なのですか?」

「おっしゃいます通り、この世で最も美しい女性はお妃さまでございます」


 今日もお妃さまは鏡に向けて問いかけをして、その答えが何を意味しているのか考えもせずにそのまま受け止めて、ご満悦に浸るのだった。

 教訓:人から言われた言葉を鵜呑みにするのは止めましょう、ましてそれが称賛の言葉なら尚更。

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