チートなしの異世界召喚は皆断ると思う by勇者
極々平凡な人生を送ってきたと思う。中小企業のサラリーマン家庭に生まれて、気の強い母と、そんな母の尻に敷かれている父と、弟たる俺をパシリにする姉がいて、地元の小中学校卒業して、近くの高校に入学した。彼女いない歴=年齢だけど、クラスの半分ぐらいは多分そうだろう。
………要するに、
「これは異世界召喚だけど、何か欲しいスキルとかアイテムない?あと、チュートリアル要る?」
(背の高い、the神様的な格好の、金髪金眼のイケメン)
玄関開けたらこんなことになるような人生は送っていなかったということである。しかも、後ろ見ても玄関ないし。
「すいません、帰っていいですか?」
「ごめん無理。召喚したの僕じゃなくて、異世界の人族だから。」
なら如何してあんたはここにいるんだよ。
「いや~ほらさ、異世界に送るって言っても、異世界の常識とか情勢とか知らないと混乱するでしょ?最悪、言葉も通じないし………。それに、もう一生帰れないし………。だから、チュートリアルが必要かな、と思って。あとギフトはねえ、………平和な現代に生きてきた君たちをそのまま向こうに送ると、君たち、向こうの人達よりも弱いから、ソッコー死ぬでしょ?それだとやって貰いたい事、何時までも終わんないし、召喚した方もされた方も救われないから、っていう事で初めは付けたんだよ。………ところが、何処を如何間違えたか分からないけど、ソイツが"勇者"なんて持て囃されるようになって、『世界の危機には勇者を喚ぶように。』っていう伝説が残って………」
「あー、はいはい。それで今俺が召喚されている、と。」
「そういうこと。ま、一番初めに勇者召喚したの僕だけどね!」
「結局、一周回って原因はお前かよ!」
「と、いう訳で、ギフト何がいい?出来る範囲で叶えるよ。」
「………………………お前って、一応多分神様的な何かだよな?認めたくないし、こんな神嫌だけど。」
「異世界で主流の国教の主祭神やってる、創造神兼、光の神だよ。全世界の神の中でも一二を争う程に僕偉いけど?僕認めないとこの世に神居ない事になるけど?」
「こんな神が主祭神とか、その世界終わってるだろ………………。」
その世界がそこまで追い詰められているのも、お前が原因じゃなかろうな?主祭神が原因の世界の危機とか、笑えないだろ………………。コイツを知ったら崇める気がなくなるから、コイツを知らないからこその主祭神なんだろうが。
「あ、原因は僕であって、僕じゃないから。」
「どっちだよ………」
「世界がそうなるのに手は出してないけど、世界を創った、って意味での責任はあると思うし?」
初めて神が神らしいことを………………
「いやね、創った後、世界のバランスを取ろうと弄っていたら、ちょっとミスッちゃって………」
前言撤回。只の責任転嫁だった。
「………おい、その勢いで俺のギフトもミスするとかはないよな?!」
「………大丈夫、大丈夫(多分)。」
「目を見て言え!頼むから!」
「「………………(気まずい沈黙)………………。」」
「………………まあ気を取り直して、ギフト何がいい?」
もはや、この問いかけに不安しか感じない。
「不老不死とか。」
「うん、無理。」
「………じゃあ無難に、魔力無限で………。」
「うん、無理。」
「………………じゃあ、全属性魔法適性で。」
「うん、無理。」
「…………………………じゃあ、生産系のスキルMAXで。」
「だから無理!」
「………………………っ、何も出来ないじゃないか!このエセ創造神!!」
「君が無茶苦茶言うからだよ!んな、世界のバランス崩すようなスキルやれるか!」る
「ラノベの中ではやってるだろ!」
「そんなスキルやったら、世界の理が崩壊する、人間奪いあっての戦争が勃発する、どっかの種族が滅亡する、この三つの内、一つは絶対起きるわ!」
「ラノベの内では大丈夫だろ!」
「よく読めや!主人公を巡って争いが起きてるだろ!………あと、魔族倒してハッピーエンドとかあるけど、魔族も種族だわ! 更に言うなら、君が転生知識でマジ無双とかやられると、他国との軍事力のバランスが崩れるのは勿論、異世界の職人の仕事がなくなって、食い詰める奴が増えて、国全体の治安が悪くなる!」
そりゃそうだが......
「せめて、激運とか神の加護とか………………」
「………………………それ、何の冗談? そんな事したら、僕、絶対、せっちゃんに、殺される………………!!」
あっなんかコイツ青くなった。
偉い偉い創造神なのに、殺されるのか?
いや、そもそも死ぬのか?
そして、創造神を殺せる"せっちゃん"て何者?
「………一つずつ答えていくと、
1,殺されます。不老不死だから、即復活するけどね。最上位の神以外には、神殺しの武器が効くけど、僕は最上位の神だから効かない。だから、僕を殺せるのは同格・・・最上位の神が神器を使った時だけだね。
2,死んでも復活するから、なんとも言えない。
3,せっちゃんはね………う~ん、色々肩書き持ってるけど、一言で言えば、"破壊神"かな?名前は、セツラ・シルヴァリアって言うんだけど、闘神よりも強いよ。僕の対。あっ、別に対立とかはしてないよ。」
「セツラ、って日本名かよ………」
もう、突っ込むのにも疲れてきた………
これが最上位の神で大丈夫かとか、神器使って殺されそうになるのに対立していないのかとか、魔力無限よりも加護や激運はまずいのかとか、一回死ぬならそれは不老不死と言えるのかとか突っ込みたい事は沢山あるけど、体力も気力も足りない………
「よく分かったね………!? 確かにせっちゃんは元,人間で、確か日本人の血も入ってるって言ってたけど………」
『 マ・ジ・か………』
驚きすぎで声にならない………
もしかして、異世界行って、神まで成り上がった実例!?
ラノベの中の主人公のその後?!じゃあ、俺にも希望ある?
チーレム作っての、成り上がりとか出来る?
そもそも、どんなスキルとアイテムを貰っていたらそうなる?教えろ!
「せっちゃん、異世界行った訳じゃないよ。親はただの人間だったらしいけど、神の血を引く家系だったからか、先祖返りしたせっちゃんは相当濃く神の血を引いていたんだよ。しかも、生まれた時代が時代だったから、生き残る為に神力使って戦いまくって、結果として神様になっちゃった、らしい。」
現実なんて、こんなものである。
………どうせ、ラノベの主人公だって、やれ平凡だ、やれ普通だと言ったって、実は~家の子供で~とか、実はこんなスキル持ってて~とか、実は~の才能があって~っていう、裏設定がある。
要は、平凡だ普通だと言っていても、絶対に、平凡ではない。
「でしょーね………………。」
「ドンマイ♪」
「………今、無性にイラッとした………」
「と、いう訳で、大分時間も過ぎちゃったし、異世界へgo!!」
「俺のギフトはどうなった!」
「ああ、あれね。君が言った中に現実的な物がなかったから、『異世界召喚ギフトパック:勇者用』付けといた。」
「選択権はどうなった!!」
「消えて無くなった?」
「コノヤロッ………!」
「それじゃ、行ってら~。」
「よし、成功したぞ!!」 『『よっしゃあぁぁぁぁぁ!!』』
杖を振り上げる頭のさみしい老人。雄叫びを上げ、抱き合い、踊り出すローブの集団。その様子は狂喜を通り越し、狂気を感じる。それを見て、ドン引きしてる鎧の方々。うん、当たり前の反応だと思う。
「今日は打ち上げじゃぁぁぁぁ!!」
「それって、魔導師長の奢りですか?」
『『『よっしゃあぁぁぁぁぁ、ゴチになります!』』』
「なんてことを言うんじゃ!?んな訳なかろう、自分の食った分ぐらい自分で出せぃ!!」
「魔導師長、ケチであります!」
『『『そうだそうだ~』』』
なんか、追い込み明けたリーマンみたいだわ………
混沌だ………………………。
「ああ勇者君!召喚されてくれてありがとう!これで儂もクビにならずにすむ! ………ところで異世界召喚初めてなんじゃけど、指とか内臓とか欠けてない?」
咄嗟に手足を見る。欠けてない、はず。
「………欠けるリスクあるんですか?」
「空間魔術では、よくあることじゃ。」
おい、聞いてないぞ創造神もどき。
「ま、後は適当に頑張ってくれればいいぞ。」
「魔王倒さなくて良いんですか?」
「ううむ、アレがいると魔物の被害は増えるが、国や国民の纏まりが良いんじゃよな~。あと、冒険者の仕事が増えるから、失業者と盗賊落ちへの対策になるしのぅ………。ぶっちゃけ、程々に抑えておいて、倒さんでもらった方が………」
現実なんて、こんなもんだよ…………
「まあ、そこは儂の管轄じゃないから、王に聞いてくれ。」
「その王様はどこでしょうか?」
「………………その、一人だけやたらハイテンションで踊っている、全身鎧の者がいるじゃろ?ほら、あれじゃ、あれ。で、その脇に赤髪で緑の目の、腰に剣をつけた男がおるじゃろ?」
いますけど。
なんか一人、魔術師達よりもハイテンションで手拍子に合わせて踊ってる全身鎧の人いますけど!
で、その脇に、赤髪で緑の目のイケメン。爆ぜろ!
「あれが王様ですか?」
「いや……………その………………
あの赤髪の者は王ではなく、王の護衛の部隊長じゃ。王は…………その、踊っている全身鎧の方じゃ………。」
大丈夫か、この国?踊る全身鎧なんかに命運を任せて。大丈夫か、俺? こんな国に召喚されて?
「そ、その、あれでも、ちゃんと国を治めているのだぞ?」
「そうですか………。」
不意に全身鎧がこっちを見た。そして、迷わず、こっちに向かってくる。踊りながら。
「やあやあ勇者君、召喚されてくれてありがとう!詳しい事は、魔導師長に聞いてくれ!」
「儂に丸投げするでない!第一儂はこの後、打ち上げに行くんじゃ!!」
「奇遇だな、俺もだ!」
「王はお断りじゃ!ばれたら大変な事になるじゃろう!」
「ケチー。」
「三十路過ぎた男がんな事言ったって、可愛くないわい………。」
駄目じゃないかこの国?
「そんな訳で勇者君、ステータスの内容を教えてくれ!適正も何も知らないと、訓練計画が立てられないのでな!」
「どんな訳ですか。………………《ステータスオープン》?」
マジであのベタな呪文でステータスが出てきたよ………
しかもベタな半透明の板。
鈴木 和輝 16歳:男
レベル:1
体力:25/25
魔力:40/40
攻撃:15
防御:15
素早さ:15
知力:15
運:15
チュートリアル:この世界のレベル1の人族のステータスの平均は3~5、勇者は15~30。ただし、16歳の人族のレベル平均は25~30。
称号
ミスター平均 姉の下僕 童貞 非リアの会会長 召喚された勇者 創造神の被害者
スキル
異世界召喚ギフトパック:勇者用
アイテム
携帯食料×10 水筒×10 まっすぐにしか飛ばないブーメラン×200
チュートリアル:詳しく見たい所をタッチしてください
やっぱり、ギフトパックの内容だろ?
異世界召喚ギフトパック:勇者用
異世界に勇者として召喚された者に送られるギフトパック。基本スキル4つとランダムでスキル3つ、基本アイテム2つとランダムでアイテム1つのパック。
基本スキル
光属性適正 剣術補正(小) 取得経験値up(極小) 言語理解
ランダムスキル
奇運 鑑定(極小) 安眠
基本アイテム
携帯食料×10 水筒×10
ランダムアイテム
まっすぐにしか飛ばないブーメラン×200
基本はともかく、ランダムで当たったものにロクなものがない!使えるの、鑑定(極小)だけかよ………。
いや、まだ希望はある。詳細を見るんだ。そして、用途を考えて、チーレムを作るんだ!!
奇運
運に関わるスキル。常時発動型パッシブスキル。このスキルを持っていると、変な人や物事に遭いやすく・関わりやすくなる。
安眠
眠っている間のみ発動する、条件発動型スキル。目が覚めた瞬間、効果がなくなる。効果は、睡眠時における絶対防御。音や震動、衝撃はあるものの、物理攻撃、魔法攻撃から、盗みまで無効化する。ただし、気絶は睡眠時に含まれない。
まっすぐにしか飛ばないブーメラン
まっすぐにしか飛ばないブーメラン。ブーメランは本来、手元に戻ってくる物なので、これは不良品。
………“安眠”は意外と凄いスキルだった。もっとも、睡眠時のみ絶対防御=攻撃されてたら、起きた瞬間死亡、だろうな。
結論、ロクなスキルがない!あのエセ神!!
………て言うかこれ、『ロクなスキルがありません!→お前は勇者じゃない!→城放逐』のパターンじゃん!ここでラノベとかの主人公だったら、『使えないと思っていたスキルが~』とか、『そこで助けてくれた人が~』とか、『生産能力で~』とかがあるけど、こんなスキルのどこにも活路を見出せないし、こんなガチ平凡人間を助ける人なんているはずもない。どうしたものか。
「………使えない勇者かもしれませんが、下働きでもいいので、城において下さい。」(土下座)
「………別に、捨てたり、放逐したりしないから、頭、上げてくれんか?」
「本当ですか?」
「マジじゃ。あと、使える云々以前にまず、スキル名をいってくれ……。」
マジで?でも、嘘つくと絶対ばれるんだよな。家族からクラスメート、親友から初対面の奴まで、俺の嘘を見破れなかった人間はいない!………皆曰く、顔に出る、らしい。うん、じゃあつかない方がましだな!(開き直り)
「光属性適正、剣術補正、取得経験値up、言語理解、奇運、鑑定、安眠です………。」
「「よかった………。」」
「………どこがですか?」
もしや、これらのスキルにも、活路が………
「「デバブスキルがなくて。」」
そこ?!むしろ、あった勇者いたの?!
「二代前の勇者は、“逆成長”と言うスキルがあったらしくてのぅ。そのスキルの効果が、“レベルが上がれば上がるほど、ステータス値が高くなればなるほど、スキルを強化すればするほど、逆に弱くなり、スキルも使えにくくなる。”と言う物だったらしくてな………。レベルを上げない為に、訓練も何も無しで、大量の護衛部隊に囲まれて、即・魔王城に向かう事になったらしいんじゃ。しかも、行った先の魔王城では、四天王や魔王にすら、哀れまれたらしいのぅ………。」
とんだデバブスキルだな!!努力が逆効果とか!!
「………その勇者、勝ったんですか?」
ここまでやって負けたら報われない………。
「それがな、その代の魔王に気に入られたらしくてな、『こいつは俺のペットにする。』と言われて、連れ去られたらしいのじゃ。すぐにでも取り返したかったらしいが、『勇者と戦って、世界もある程度安定したし、今回は俺の勝ちとして、戦利品として勇者をもらう。なあに、それ以上は要求しないし、兵も引こう………。』と言われては、我が国としては二の足を踏むしかなくてのぅ………。」
あっさり、勇者見捨てられてんじゃん! そして、世界の安定って何?!
「そうこうしている間に、魔王城から、勇者を嫁にするという書状が届いたらしいんじゃ。ああ、その勇者を見たいんじゃったら、【絵画の間】に、子を孕んだ勇者が魔王と一緒に里帰りしてきた時の絵があるぞ。」
「それは果たして王城にあってもよい物なのでしょうか?」
敵国の王と元,勇者が訪ねてきていいのか?そして、敵対関係の王の絵があってもいいのか。色々と凄い国だな!
「何もやることないし、絵、見てきたら?前の勇者の絵と資料見たら、なんかあるかもよ?実際、資料と絵見ていきなり雄叫びを上げだした勇者もいるらしいし。」
怖っ!!
「そんな訳で行こうかのぅ。」
「………拒否権はありますか?」
「あるにはあるんじゃが「じゃあ行かない方向で。」
「来てもらわんと、勇者研究が進まんからのぅ………。」
ポスッ(肩叩かれる) パッ
「そんな訳で、ここが【絵画の間】じゃ。」
「………拒否権云々の話って、必要だったんですかね………」
ないなら最初から言えよ!期待したじゃないか!
「うん? 必要じゃったよ?形だけじゃったけど。」
「………!………。」
何だろうな、このやるせなさ……。この世界は微妙に俺に厳しい。
「で、これが件の勇者と魔王じゃ。」
「へっ、*ª§@#∑っ!」
ゆうしゃは おとこ だった。
椅子に座ったお腹が少し膨らんだ男(どう見ても日本人)と、その脇に角の生えた魔王らしい男が描かれていた。
「………………男、同士でも、子供、産めるんですか………………?」
それ以前にこの世界に女性は存在するのか?
BLゲーの世界とかやめてくれ!!
姉は大喜びかもしれないが、俺はノーマルだ!!
「ああ、そちらの世界では、無理じゃったな。こちらの世界では男と女でも、男と男でも、女と女でも産めるぞ?」
「女性もいるんですね…。」
よかった、本当によかった! 救われた!
「と、言うと、勇者は皆安心するようじゃが、勇者諸君の世界と違って、この世界では男女の力量の差はないのでのぅ。下手に色目を使ってきて、女性の体調の機微も分からないムサい男より、同性の方が、変な目で見ないし、悩みも共有できるし、綺麗だから好き!という女性は多いんじゃ。………こうして、ただでさえ少ない女性の競争率が上がってのぅ。貴族でもない儂らが結婚できるのは、途方もない行き遅れか、問題児だけじゃな。」
「救われねぇぇぇぇぇ!」
「あと、勇者のように魔力が高いと長生きするようじゃぞ?さらに、ずっと童貞や処女のままじゃと、もっと魔力が上がるとか。」
「ここに来ての都市伝説:魔法使い!てゆうか、それ童貞が長生きするだけじゃん!!誰得?!」
繰り返し言うようだが、俺は真正平凡組だ。モテ期は来たことないし、告白した女子は皆クラスのイケメンが好きだった。爆ぜろ。………要約。ここの美醜基準が変わってない限り、俺は、女子と、結婚できない。
なんてこった………………。
「………………戻ってこい、勇者よ。明日、旅の仲間を紹介するからのぅ、そこに女性もいるかもしれんからのぅ。………………運が良ければ………………。」
「帰りたい………。」
「先代勇者もそれ言ってたようじゃな。まあ、先代は女性だったようじゃが。」
「その人は今どこに?」
もうこのさい、多少の年齢は許容する!
「それがな、剣聖と共に魔王を倒しに魔王城へ向かったらしいんじゃがな。………十歳くらいじゃった魔王に母性でも働いたのか、魔王を倒さずそのまま魔王の親代わりとして魔王城に留まり、剣聖と結婚して、今は魔王城に住んでおる。」
「それは、人間側としても、魔族側としても、ありなんでしょうか?」
なしだろ。
「それに関しては、有名な話が残っていてのぅ。“まず勇者は人間の王の首に聖剣を突きつけて言いました。『貴様らがこれ以上私の息子に手を出すというならば、よろしい、その薄汚れた首を叩き切ってやる。』次に沸き立つ魔族達の首に聖剣を突きつけて言いました。『私は息子の味方ではあるが、この国の味方ではない。貴様らが私や息子の名をもったり、力を当てにして何かやらかそうとしたならば、やはり、叩き切る。』恐ろしい勇者を前にして、人間側は魔王に手を出さないと、魔族側は二人を利用しないと誓いました。こうして世界は平和になりました。”とな。プライドに勇者の恐怖が勝ったんじゃろ。」
「強かったんですね、先代勇者………。」
「今は子供を産んで丸くなったらしいがのぅ。ちなみに、今の魔王はその時の十歳くらいだった魔王じゃな。」
「そう考えると迷惑!!」
思い切り今につながっていた。しかも、俺の召喚の原因それじゃん!!
「というか、見逃しちゃって良いんですか?」
「特に侵攻して来たとかではないからのぅ。」
なら戦わなくていいんじゃね?!
「この世界のシステム的なあれこれでのぅ、戦ってもらわんと余剰えねるぎぃとやらで、世界が歪むらしいんじゃ。」
ミスはこれか!
「………そしてのぅ、まあ世界が歪むと………」
「歪むと?」
「うんたらかんたらがどうたらこうたらして変態が増える。」
「変態が………………」
「増える。」
それどんな欠陥?!いや、世界が滅ぶよりましだろうけどさ!
「ああそれと、勇者は歪みを直す存在だからのぅ。歪みを生じた変態が寄ってくるらしいのぅ。………まあ、ある意味ハーレム状態じゃな。」
「嫌だぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!」
これが女の子でハーレムだったら、ツンデレ素直ヤンデレ一途腹黒天然マイペース無口眼鏡っ子から元気っ子、エロフから獣耳っ子までどんと来い!だが、男の変態はノーだ!!
男の変態ホイホイとか、どんな罰ゲーム?
「うるさいわい!催眠!」
世界が まっくらに なった
気づいたら、朝でした。夢オチじゃない方の。今日は旅の仲間(全員男)と会うそうです。結局女の子はなしかよチクショウ!! さようなら、漢の夢。こんにちは、地獄!
「それでは入ってくれ!!」
元気だな、王様! 他人事だからって! 自分は可愛い奥さん捕まえて、子供もいるからって!羨ましいわチクショウ!!
ギィィィィイイ
地獄の 釜が 開いた
………………………………天使がいた。地獄じゃなく、天国だった。
「よろしくお願いします、勇者様。」
男とか無しだと思ってたけど、この子ならありだわ。むしろこの子無しだったら、全人類無しだわ。
「?どうされました、勇者様?」
声も天使!いや、神! ………あんな創造神じゃなく、この子が神やった方が良いんじゃない?!
「い、いや、なんでもないけど………。………君の名前は?」
冷静になるんだ、俺!!
何とかして好感を持たせろ、俺!!
好青年になるんだ、俺!!
何としてでもこの子と添い遂げるんだ、俺!!
「エルシィ・セイクリア・ミレオーネと申します。エルシィと呼んで下さい。これからよろしくお願いします、勇者様。」
「ヴィクトル・シュバルツ・エルンスト、騎士団団長だ。以後パーティーの一員となる。よろしく頼む。」
「アルベルト・フォン・バーソロミューです。よろしくお願いしますよ、勇者サマ?」
なるほど、天使の名前はエルシィと言うのか。エルシィ・セイクリア・ミレオーネ、エルシィ・セイクリア・ミレオーネ、エルシィ・セイクリア・ミレオーネ、……脳に焼き付ける!
あと、イケメン1(さわやか系。爆ぜろ。)と、イケメン2(インテリ系。滅べ。)もくっついて来るらしい。消えろ。
「鈴木和輝です。よろしくお願いします。」
………………………………こうして、俺と天使のファーストコンタクトは終わった。
3ヶ月後 魔王城への旅の真っ最中
俺たちは名前で呼び合うぐらいは打ち解けた。そして、二人の四天王と戦った。
「四天王との戦いは、心にくる………………。」
四天王との戦いと言うと、どんな戦いを想像するだろうか。2ヶ月前の俺のように、他の魔物と同じで剣と魔法で戦うと思うだろう。たがしかし。四天王は魔族、しかも貴族である。後々の禍根とか考えると殺し合いどころか、切った張ったもままならない。よって、………
「まさか、城の魔族全員とのラップバトルとはな………。」
「意外と四天王側の皆さん、お上手でしたね。」
「………………。」
………ラップバトルだった。色々と疲れた。
ヴィクトル、慣れないノリにより、珍しくも疲労困憊。どうでも良い。
エルシィ、意外にもお気に召したらしく、ご機嫌。目の保養。俺の癒し。
アルベルト、早々にして脱落。現在、半死体状態。ざまぁ。
「………………………そういえば、もう3ヶ月かぁ………。」
召喚から3ヶ月。エルシィと出会って3ヶ月。俺はいまだにエルシィに何一つ伝えられてない。もし、エルシィがこいつらに告白されたら………受け入れそうな気がする。
………………天使だから!マイエンジェルだから!!
「よし、コクろう。」
エルシィが誰かと付き合い初めたら俺は絶望で狂い死ぬと思う。四天王とラップバトルする世界だから、格好良く闇堕ちとかは期待していない。………神アレだし。
夕飯時。周りに誰もいない食堂の裏。
目の前に天使!………呼び出しておいてなんだが、来てくれた事に感動した。………幼なじみの某君よろしくすっぽかされなくてよかった………!
「どうなさいました?カズキ様。」
言え、俺!!誰かに取られる前に!!
「俺と付き合って下さい!!」
………俺の馬鹿、もっと良い言い方あるだろ!少女漫画の当て馬かよ!!
「………………………。」
終わった………………死んだ………………。
「………いいですよ?」
「………イマナント?」
「ですから、付き合いましょう?」(エンジェルスマイル)
可愛い尊い美しい愛らしい!!まさに天使!
じゃなくて、OK貰えた!今日から俺はエルシィと付き合う…………ビバ天国!!ありがとう異世界、ありがとう神!冒険も討伐も野宿も、すべては今報われた!
「ありがとう!!」
「あっ、でも、その、神子なので婚前交渉は………」
「分かりました!」
恥じらっているところもマジ天使!いや、神!語彙がなくて悲しいっ!!
………………町中で狂喜乱舞してたら、衛兵さんに捕まりかけました。
その又4か月後 王城にて
クーデター起こされそうだから一回戻って来い、と指令が来た。このタイミングでクーデター起こそうとして、魔王城前の俺達が戻る原因となった宰相と副魔導師長にはもはや、怒りしか無い。しかも、
「おう、遅かったな、勇者達よ!Hahahahahahaha!」
………戻って来たら、笑う鎧が玉座に座っていた。当然中身は王である。殴りたい、この笑顔(顔見えないけど)。
「陛下、クーデターというのは………」
「いやぁ、薄々感づいて対策してたからな、もう終わった。国民はクーデター自体知らないと思うぞ!」
ならなぜ呼んだ。
「副魔導師長と宰相様はもう牢に?」
「いや、副魔導師長はボロボロだったが、逃げたな。で、宰相…クレファスは王子のところだな。一番上の。」
「どっちもアウトォォォォ!」
片方逃げてるじゃん!立て直されたらどうする気だよ!
片方次期国王のとこじゃん!
「いや、大丈夫なんだなこれが。………どうしても気になるなら、あいつの部屋は三階だから見てくるといい。………見てきたらついでに俺にも教えろよ。」
「早く行こう、カズキ!」
「参りましょう、カズキ様!」
他人の心配をするなんて、やはりエルシィは天使だった!
あと、イケメンは黙れ。ハゲろ。
さすが第一王子、城のワンフロア、執務室・接待室・トレーニングルーム等々、全部第一王子の部屋だってさ。廊下から見ると同じ扉が等間隔に付いているだけだけど。教えて貰えなかったら、迷子一直線だな。
「王子、失礼し………
「あっ、あっ、」「ふふっ、随分素直になったね、」
………ましたー!!」 バンッ!
………………なにあれ。どういうじょうきょう?
「おい、如何して閉めた、カズキ!」
アレを開け放てと言うのか?見なかった奴は黙ってろ。
「もういい、私が開ける!」
どーぞどーぞ。俺はエルシィから中が見えないように移動した。天使にこれは見せられない&聞かせられない。
「殿下、失礼いたしまっ、申し訳ございませんでした!!」バン!
あーあ。
「………陛下に、何と、お伝えすればいいのか………。」
そりゃあ、殿下が宰相らしき人組み敷いてナニしてたらねぇ………………。
結(果)論。陛下知ってた。知ってて言ってた。
「おー。…元気にヤッてたか?」
戻って来た時の第一声がこれ。
きけば、そもそも宰相が何か企んでいる事に気付いたのは第一王子だったんだとか。その上で王子が言ったのが、
「宰相が反乱を起こしたら三日間だけ時間を下さい。」
だったそうで。
「で、三日間でお前は何をするつもりだ~っ、て聞いたら、『三日間で反乱静めてもみ消して、クレファス孕ませて嫁にします。』って笑顔でのたまった!」
「「「「………………(絶句)………………」」」」
何故、それを承認した、王?
いいのか?!それで、いいのか?!
無理矢理は犯罪だぞ?!
王子が殺されたら、どうするつもりだったんだ?!
そもそも、反乱を起こすような奴を未来の王妃にしていいのか?!………ダメだろ!!俺でも分かるわ!!
「クレファスは優秀だしな、謀反を起こさないように手綱を引けるんなら生かしておいたほうがいいんだわ。平民や下級貴族から支持されているしな。兵の立て直しは絶対できない手をあいつが打ってた………正直、エグいなと思った。」
ナニをしたんだ、第一王子。
「後、『僕無しでは生きていけない体にします♪』と言っていたから、ま、あいつは大丈夫だろ。クレファスはともかく。」
なんて事を言っているんだ、第一王子。廊下で見かけた時には優しそうな王子様らしいイケメンだったのに。
「……それでは何故、陛下は私たちをお呼びになられたのですか?」
「ん~、反乱が思ったよりスムーズに鎮圧できて、ヒマだったから?」
反乱 を 起こしたい気持ち が 少しだけ わかった。
作者は豆腐メンタルなので、アンチ、ヘイトの類いはお止め下さい。