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俺は、何故か疎遠になった幼馴染の心が読める  作者: さーど
アフターストーリー
29/42

その三【乾杯】

「恋人成立!おめでとう!!」


 <パチパチパチパチ……>


「いや静か!?」


 父さんは一人で何をしているんだ……

 呆れた顔を父さんに向けながら、俺は他の親三人の拍手を受け取っていた。


 あれから一時間と少し。

 しずくさんが赤飯を炊き、テーブルを二つ使った7人でのお祝いだ。


 両家父母がローテーブルに、俺と瑞希みずき、そして俺の妹の千冬ちふゆの子供三人がダイニングテーブルに座る形となっている。


「……あのさ。私もそっちに行った方がよくない?居心地悪すぎるんだけど……」


 (千冬)が父さんに向かって、冷めた口調でそう問いかけていた。

 ……当然の反応だと思う。なぜ自分だけ主役の隣で座るのだ、と俺だと思ってそうだ。


 そんな冬の反応に、父さんは笑い声を返す。


「いいじゃないか千冬。妹、または義妹として上手くやれるよう今から特訓だ」

「今じゃなくても良くない?」


 そうギロッ、と睨む冬。父さんがふざけすぎている為、とても擁護できそうにない。

 それに……そのつもりではあるけれど、義妹は些か気が早すぎるのではないだろうか。


──冬ちゃんってこういう子だっけ……?


「……そういえば冬。瑞希や要さんたちの前では、猫を被るのを辞めたのか」

「え?猫?」


 脳内の瑞希の疑問を解消するよう、俺がそう訊くと冬は睨んだ目のままこちらを向く。

 なぜ俺まで睨まれているのかは、全く分からない。


「……まあ、将来的に家族になるんだから、今のうちにね」


 父娘揃って些か気が早すぎるのではないだろうか。確かにそのつもりだけどさ。


「へ〜。ギャップすごいね」


──意外〜


「……俺と父さんの前だけだけどな」

「お兄ちゃんの言う通りだよ〜?……だから猫被ってるって言い方やめてくんない?」


 瑞希には笑い、俺にはギロッ、と睨む。

 それが俺の言ってる事の気がするんだけど……まあ、「はいはい」と頷いておく。


「雑談はさておき、早速食べようじゃないか。

 ……じゃあ、愁くんと瑞希の恋人成立を祝して、乾杯」

「「「「「「乾杯!」」」」」」


 要さんのその宣言で、それぞれ前のカップ手にを取って近くの人のそれにぶつける。

 その後に父さんが少し寂しそうな顔をしていたけど、気にしない方が良さそうだ。


「ついこの間まで愁が瑞希ちゃんの事を全然話さないから、付き合うとは思わなかったわ〜」

「えっ……」


──しゅーくん……?


 母さんのその言葉で、瑞希が絶望するような顔になった。俺は呆れた顔で口を開く。


「……瑞希が()()()()()()の為に俺と関わらないようにしていたからだよ。

 ……俺だって、本当は話したかったさ」


 前までのことを思い出して、最後は少しだけ涙ぐみながらも俺はなんとかそう答える。

 すると瑞希、箸を持ったまま俯いた。


──………。


「でも、今では付き合うことが出来たんだ。

 今はもうそれをあまり気にしてはいないよ」

「……そっか。ありがとう」


──しゅーくん……


 俺が瑞希に微笑みかけて言うと、瑞希が顔を上げて微笑みを返してくれる。


 その微笑みは……とても視線を外したく無くなってしまうようなものだった。

 濡れて煌めくヘーゼルカラーの瞳も口角の上あがった唇も、美しいと感じてしまう。


 ……だから数秒間、俺はその微笑みを、瑞希を。じっと見つめてしまっていた。


「……私本当にそっち行った方が良くない?」

「そうだな……千冬の好きにしてくれ」


 瑞希と違って冬が淀んだ瞳でそう言うと、父さんも諦めたように頷く。

 その会話ではっ、と見つめあっていたことに気づき、俺たちは慌てて顔を離した。


「………」

「………」


──思わずしゅーくんに魅入っちゃってた……恥ずかしい……っ!


「……同感だ」

「……そっか」


 俺たちは二人して俯いて、そう呟いた。


 恥ずかしくはあったけど……やはり瑞希の微笑みは美しかった。そう、強く思った。

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