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最弱でも最強?

地下に通路を見つけたアムルたちは、先に進む道があると信じて探索を開始していた。


 薄暗い地下道をブラハム、そしてアムルが進んでゆく。周囲を照らすのはアムルが作り出した魔法光だけなのだが、その光量の強さから足元が覚束ないという事は無い。


「おい、アムル。そんなに明るくして、大丈夫なのかよ?」


 先を進みながら、ブラハムは後方のアムルに確認の言葉を投げ掛けた。

 普通で考えるならば、相手が人であろうが魔物であろうとも自身の居場所を知らせるような行為は控えるべきだろう。

 敵が闇に潜んでいる場合、アムルたちの方からは敵の位置が不明なのに対して敵からは自分たちが丸見えなのだ。これでは、襲い来る事は当然、不意打ちや策を弄する事など思いのままである。


「だぁい丈夫だよ。それより、死角を突かれる方が厄介だろ?」


 そんなブラハムの懸念を、アムルは笑いながら一蹴した。

 第三者が聞けば油断この上ないというセリフだが、当のブラハムはあきれ顔ながらも異論を唱えるような事はしなかったのだった。


 アムルの言う通り、この2人にとっては光の届かない死角から不意打ちされる事が何よりも面倒なのだ。

 光に気付いて正面からやって来る怪物や敵に関していえば、この2人の敵では無いのだ。

 それならば、足場の悪い地下道内で視野を狭める事の方が愚策と言える。

 もっとも、無数の敵を一蹴出来るほどの実力者たちが視界万全で進んでいるからと言って、それで魔物が寄ってこないかと言えばそんな事は無く。


「お……おい、アムル! 何か細かいのが飛んで来たぞ!」


 光に釣られてなのか、通路の奥より彼らの方へと無数の小さな何かが飛んで来る。

 不気味な羽音を響かせて、地下道の幅を完全に埋め尽くす程の小虫がアムルの指先から発している光に向かってきていた。


「ちぃ! あんなものまで!」


 それを見たアムルは小さく毒づいていた。その表情には、苦々しいものが浮かび上がっている。


「おいおい、アムル。あれがなんだかお前は知ってるのか?」


 珍しく表情を崩すアムルを見て、ブラハムはそう問いかけながら再度羽虫の方へと目を向けた。

 決して素早いという動きではなく、大きさも小指の爪ほどしかない。それでも数えきれない程の小虫が通路一杯に迫って来るのだ。これを脅威に感じない者などいないだろう。


「あ……ああ。あれは『浮遊型集団遊撃魔獣 BG―024 バグズ』だ。この城を護る魔導生物としては、面倒くさい事この上ない。侵入者に対しては効果的だと言って良いんだが、何せあの数だろう? 制御するのが実質不可能でなぁ。敵を倒して骨になるまで食らいつくすんで、使用を封印していたんだ」


 嘆息と共に、アムルはブラハムにそう説明した。そんなアムルの顔には忌避、諦め、億劫と様々な感情が含まれている。

 アムルでさえも辟易とした感想を漏らす魔導生物の接近に、それでも彼の説明を聞いたブラハムは危機感を覚えていなかった。

 厄介で面倒で、出来れば相手をしたくない怪物ではあるが、アムルからは恐怖の念を感じないのだ。

 そこから考えられる事と言えば、単純に「面倒くさい相手である」と言う印象だった。

 アムルがそう考えているのだ。ならば、倒すだけならばそれほど問題ではないとブラハムが考えるのも当然である。


「んじゃあ、虫退治と行きますかぁ!」


 ウンザリとしているアムルを横目に、ブラハムは剣を構えて駆け出した。

 数が多いと言っても、たかが虫型の魔獣である。

 小さいという事は、防御力も高が知れていると考えるのも当然であり、それこそ群がる虫を払うのと同じ発想に至るのは当然であった。……のだが。


「お……おいっ! ブラハムッ! そいつらは凄く固い……」


「つぅぇいっ!」


 アムルが注意喚起するのと、ブラハムが剣を振るったのは殆ど同時であった。通常の刃を立てた攻撃ではなく、より多くのバグズを巻き込めるよう剣の腹での一撃だった。

 彼が攻撃した途端に甲高い金属音が地下道内に反響し、そしてその側壁にはまるで散弾の様な跡が無数に出現する。


「なっ!?」


 その異様な状況に、ブラハムは自身が行った行為にも拘らず驚き絶句し、すぐに大きく飛び退き距離を置いたのだった。

 自分の傍まで戻って来たブラハムを、アムルはまたも嘆息と共に迎えた。


「……どうなってんだぁ?」


 そんな彼の様子など気付きもせずに、ブラハムは自分の剣とはじけ飛んだ壁を何度も見比べていた。

 良く見れば、壁に埋め込まれたバグズの殆どはモソモソと這い出してきている。

 硬質のもの同士がぶつかる音が響き渡ったのだ。自身の持つ武器を気に掛けるのも当然であった。

 もっとも、彼の手にする武器は魔界最高の素材を用いたアダマンタイト製である。ちょっとやそっとでは壊れる事などありえない。

 ブラハムが怪訝に思ったのは、そんな超硬度の武器で打ち据えられても尚、その身体が粉砕されることも無く吹き飛ばされるにとどまったバグズの頑強さであった。


「だから待てって言おうとしたんだ。バグズは、攻撃力こそそれほど高くないし、動きもそんなに速い訳じゃあない。ただ、以上に頑強なんだ。……物理にも魔法に対しても、高い耐性を持っている」


 アムルの説明を聞いて、ブラハムは納得すると同時に唖然としていた。

 ブラハムの一撃は、言うなれば人界でも最強クラスの打撃(・・)という事になる。そんな最硬(・・)の武器で最高(・・)の打撃を加えても、バグズを破壊するまでには至らなかったという事なのだ。

 ブラハムが呆けてしまうのも、それはそれで仕方のない事であった。


「じゃ……じゃあ、アムル。お前の魔法でも、あれはどうにもならないって事か?」


 呆然とするブラハムは、殆ど無意識にそんな質問を口にしていた。

 本気では(・・・・)なかったにしろ(・・・・・・・)、自分の攻撃で殆どダメージを与える事が出来なかったのだ。

 物理にも魔法にも同じように(・・・・・)耐性のあるバグズに、アムルも手を焼くと考えての言葉だった。


「……アイスランス」


 ブラハムの疑問に言葉で答える代わりに、アムルは無造作と思える風情で魔法を発動した。

 巨大な氷柱が壁や床、天井と上下左右から突き出し通路を埋める。普通に考えれば、この攻撃で小さなただの虫ならば擦り潰されていた事だろう。


「バーン・ヴァーミリオン」


 ブラハムが何か言おうと口を開く前に、アムルは次の魔法を発動した。

 氷柱へと飛来した火の玉は、着弾と共に轟音を上げて渦巻く火柱を出現させた。その影響で、無数にあった氷柱は即座に蒸発し消え失せる。


「お……おい、アムル。ちょっと待……」


「グロムシュトゥルムゥ!」


 更にアムルは、ブラハムの事など歯牙にもかけずに魔法を使用した。

 火の柱の上方に出現した漆黒の魔力球から、稲妻の雨が降り注ぐ。


「お……おわっ!?」


 至近距離で高威力魔法の3連撃を見せられて、ブラハムは思わず声を上げていた。勿論、彼もアムルも防御障壁の内側に居り、魔法の影響は受けてはいない。

 しかし間近で荒れ狂う魔法を見せつけられれば、そうと分かっていても悲鳴が漏れ出るものだ。

 3種の魔法の影響で、周囲に土煙と水蒸気が立ち込め視界を奪う。しかしそれもそう長い事ではなく、程なくしてそれらは治まりを見せてきた。


「ま……まじか!?」


 そしてそこにブラハムが見たものは、先ほどと大差のない光景だった。

 魔法により蹴散らされた羽虫たちは再び集合し、地下道一杯に広がりアムルたちの方へと近寄り出したのだ。


「……とまぁ、こういう事だよ」


 動きを止めてしまったブラハムに、アムルはヤレヤレと言った態で声を掛けた。

 アムルの使った魔法は、どれも上級魔法に匹敵する威力を持っていた。それでも何匹かのバグズは葬れただろうが、その大半は無傷の状態だったのだ。


「おいおいおい……。どうすんだよ、これ?」


 攻撃の効かない敵を前にして、ブラハムは思わずそう呟いていたのだった。


異常な防御力を見せるバグズに、アムルたちが取った手段は!?

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