レイラ奪還作戦
この部分は一度投稿していましたが、作者が個人的に不適切であると判断した部分があったため、一度削除して再投稿しました。
既に読んでくださっていた方にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
俺は洞窟を足早に進んだ。足音が鳴らずに早く歩ける限界の速度だ。式神からの情報ではレイラのいる部屋までゴブリンは居ない。現に今、近くに生き物の気配は感じない。
分岐した道を左に進んでいくと、ぼんやりと光が見え始める。そこでふと違和感を覚える。式神を通して見ていた時に聞こえていたゴブリンたちの声が聞こえない。あまりに静かだ。まるで生きているものなど、この先に誰も居ないかのようにさえ感じる。
その時、妙な臭いが鼻をついた。俺が忍者なんてやっていなければ分からないような、かすかな臭い。しかし生臭く強烈に漂ってくるそれは確実に血の臭いだった。
俺の頬を冷たい汗が伝う。嫌な予感を飲み下し、足を速めた。
部屋に近づくにつれ、血の臭いは死臭に変わる。俺は今にも走り出したい衝動に囚われそうになるのを何とか収めた。
冷静さを失ってはいけない。レイラに傷を付けず、一気に部屋の中の敵を制圧する方法はある。出来る。
俺は革袋から白い球体を取り出し、素早く導火線に火をつけた。これは煙玉だ。人体に影響は無いが、とにかく濃い煙が出る。こんな洞窟の一室なら完全に何も見えなくなるだろう。
俺は火のついた煙玉を振りかぶり、部屋の中に投げ入れた。たちまち白い煙が通路まで湧いてくる。先ほどまで光がのぞいていた明かりは完全に見えなくなった。ほぼ同時にレイラの声が聞こえてきた。
「うわっ! けむい! けむい! 何だこれは! そうか分かったぞ! この煙は媚薬の成分を含んでいて、私をその気にさせるつもりなのだな! その手には乗らぬ! 一生懸命息を止めるぞ私は!」
どういう想定でどういう決意表明だ。と思ったがレイラが元気なことに俺は一先ず安堵した。
しかし妙なことにゴブリンたちの声が一切しない。中にいるのなら、一切の視界を塞がれて無反応なのは絶対的におかしい。レイラのほかに誰も居ないというの? じゃあ血の臭いは一体何だ……?
俺は違和感の正体を掴めないまま、目を閉じて煙の中に突入した。視界は無くとも反響する音でおおよその空間と物の位置を掴むことが出来る。
一歩踏み出した瞬間、俺は死臭の正体に気付いた。床にゴブリンの死骸が転がっている。それも一体や二体ではない。恐らくは先ほどこの部屋にいた連中が全て殺されている。誰に殺されたんだ? まさかレイラか……? 俺は部屋の奥、レイラが囚われている方へ振り返った。
「ああっ! 不味い、ちょっと息を吸い込んでしまった! やめろ! 私は淫乱になどなりたくないのだ! あ、でもちょっとづつ妙な気分になってk」
うん、絶対あいつじゃないわ。しかし犯人捜しは後だ。今はその犯人に見つからないよう、レイラを助け出して脱出するのが先だ。俺は急いで部屋の奥へ駆け寄った。
「誰だ! 誰かいるのか! こっちに来るな!」
口では強がっていても、その声は震えている。いくら彼女の気が強くても度重なる恐怖と異常事態で流石に参っているのだろう。
「レイラ様、静かにしてください。助けに参りました」
「その声はキス魔だな! こんな所まで私にキスをせがみに来たというのか! 私は屈しないぞ! 例え貴様が私の顎をクイッとして甘い言葉を囁いた後、また顎をクイックイッってしても!」
「浮き釣りか」
「おいキス魔、気を付けるのだ」
レイラが声のトーンを急に落とす。
「と、申しますと?」
「さっき不気味な男が来て、ゴブリンたちを皆殺しにしていったのだ……私は恐ろしくて声も出せなくて……」
やはりゴブリンを殺した何者かがいるのか。俺が偵察を行ってからここに来るまでの時間を考えれば、必ずそいつは近くにいる。なおさら早く逃げないとな。
俺はレイラの手枷を外し、抱きかかえた。
「うわっ! 何をするのだ! 貴様やはり私を手籠めにする気だな! このまま国の外まで逃げて禁断の逃避行とかする気なんだな!」
妄想爆弾かこいつは!
「文句は逃げた後に聞きますので!」
俺は出口に向かって一目散に走った。




