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ダークエルフの国

 

「ふー、結構暑いな」

 額に浮かんだ汗を拭いながらボニーが言った。

「ああ。この前行ったエルフの国の隣だってのに全然気温が違うものなんだな」

 俺も頬に汗が流れるのを感じながら辺りを見渡してみた。港に近い市場は活気付いて、多くの人々が行き交っている。耳は長く尖っているところを見るとエルフと同じだが、彼らの肌は一様に褐色である。いわゆるダークエルフと呼ばれる人々だ。


 ここは先日石板を取りに行ったクロノスの東に浮かぶ島国、ミーア。もっというとミーアの王都である。妖精のクーが言うことには、どうやら王都のどこかに五芒星のパーツを保有している人間がいるらしい。

「ここに住む人々は元々普通のエルフだったんだ。だけどこの島に渡って生活するようになって、日焼けしてダークエルフと呼ばれるようになったのさ」


 隣でエドがこの国の成り立ちを早口に語っている。俺は改めて道行くダークエルフ(♀)を観察してみた。なるほど確かに肌の色以外はエルフとそっくりだ。目鼻立ちが整っていて、肉付きも良い。加えて熱帯の地域であるためかみな薄着だ。これは目のやり場に困るというもの……。


 にやけているとフィアールカに脇腹をつねりあげられた。

「いてててて」

 どうやら俺の下心などお見通しのようだ。市場を通り抜けるとレンガ造りの建物が並び始めた。道のはるか先の方に金色の屋根の建物が見える。

「あの建物から気配がするわ!」

 俺の顔の周りを飛ぶクーが言った。

「あそこはミーアの王宮だよ。ってことは保有者は王族の人なのかもしれないな」

 エドがやや興奮気味に返す。


 ちょっと待て。もし中高年の王様がパーツの保有者とかだったらどうするんだ。俺が誰も得しない非常に汚い不敬罪を犯すことになってしまうのではないのか?

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。パーツの保有者は女だけだから」

 俺の気持ちを察したのか、クーが俺の肩に腰掛けて言った。

「そう、なのか?」

「まあ根拠はないけど」

「ないんかい」


「ねえカッペー、あそこに仕立屋さんがあるわ」

 隣を歩いていたフィアールカが急に俺の腕を引いた。

「あっ、おい」

 手を引かれるまま店に入ると、どうやら服飾屋のようで、色鮮やかな服飾品の数々が並んでいる。やはり生地の薄いものが多いようだ。

「カッペー。これとこれ、どちらがいいと思う?」

 フィアールカが提示した二つはどちらも、辛うじて大事な所を隠せる程度の布面積しかないものだ。ベールも付いているが生地はスケスケで、身を覆う役割を放棄していると言わざるを得ない。恐らくこれは踊り子の衣装だ。……何故俺が踊り子の衣装だと分かったのかは敢えて言わないでおく。


「どっちがいいって……どういう意味だよ」

 フィアールカは何も言わない。ただ自分の身体の前に衣装を重ねてみせ、俺の顔を楽しそうに眺めているだけだ。こいつ、人をおちょくりやがって……右手に持っている奴の方がいいです。


「おいフィアールカ、あまりカッペーを困らせるなよ」

 ボニーが来て助け船を出してくれた。

「両方ともカッペーに着せるにはマニアック過ぎるぞ」

 気のせいだった。

「ふふっ、違うわよボニー。これはカッペーじゃなくてエドに着せるつもりなの」

 おい話をややこしくするな。

「そうか。なら大丈夫だな」

 何が大丈夫なんだよ。


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