ヒモ男
結論から話すとエドウィンはヒモ男だった。
聞けばエドウィンの奥さんは貴族の娘で非常にお金持ち。その奥さんと出会って以降、考古学の研究、調査にかかる費用はほぼ全て奥さんに頼ってきたという。まあ聞けば聞くほど清々しいほどのヒモである。
ところがそんなヒモライフに亀裂が生じたのは謎の組織に追われてからだった。命からがら家族と共にこのリザードテイルへ逃げてきたまでは良かったのだが、そこから奥さんの態度が一変したという。
「発掘調査は危険だから禁止! それからバイトでも何でもして働かない限り研究の費用も出してあげないんだから!」
そう言い放たれたエドウィンは、泣く泣くバイトをすることに決めたのだという。
「僕は生まれた時から好きなこと以外出来ない性分なんだ。その僕がバイトをさせられる事が、どれだけ苦痛か分かるだろう?」
家に向かう最中、エドウィンは俺に力説した。まあ分からなくもないが、奥さんの意見も最もだ。働きもしない夫が自分の金を使って危険な場所に赴いていくなんて、妻からしたらたまったものじゃないだろう。
「着いたよ、ここが僕の家だ」
エドウィンが立ち止まった場所は、この街によくある煉瓦造りの一軒家だった。
「エドウィン、先ずお前が一人で説得してきたらどうだ?」
そう言ったのはボニーであった。狼狽えるエドウィンに彼女は続ける。
「お前の意志はお前が伝えるべきだ。大事なことなら尚更だろう」
相変わらずこういう時のボニーの言動はブレない。エドウィンはその言葉に諭されたらしかった。
「分かった! ボニー君の言う通り自分の言葉で妻を説得してくるよ」
ピンと背を正したエドウィンは、堂々と家に入って行った。
しかし暫くすると、もの凄い音が家から響き始めた。
エドウィンの悲鳴と、奥さんらしき人の怒声と、陶器が壁に当たって割れる音だ。……、本当に大丈夫なんだろうか? そう思っていると今度はこんな声が聞こえてきた。
「あなたって人はいつもそう! そんなに遺跡が好きなら遺跡と結婚したら良いじゃない!」
「やめてマイワイフ! 僕のお尻を皿で叩かないで!」
何をやってるんだあいつは。不意に音がやんで静かになった。これがエドウィンの生命活動の終わりとかじゃなければいいが。
「やあみんな、お待たせ……」
出て来たエドウィンはまるで熊に襲われたかのようにボロボロだった。着ていたシャツは破け、ズボンは半分ずり落ちている。
「……奥さん、どうだった?」
結果は分かり切ってはいたものの一応聞いてみる。エドウィンは震える手で右手の親指を上げ、言った。
「快諾してくれたよ」
「嘘つけ!」
つづく




