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三十一話 第三機関

 

 発掘された石版は思ったよりも大きかった。横の長さは俺の肩幅ほどで、縦の長さは俺の身長より少し短いくらいだ。


「これ、どうするの?」


 床に置かれた石版を屈んで眺めながらフィアールカが言った。こんな時に言っちゃ悪いがパンツが見えそうである。


「とにかく一度村に持ち帰って、これを読める人がいないか聞いてみよう」

「そうね。でも、読める方がいらっしゃらなかったら?」

「リザードテイルに持って帰るしかないだろ。多分エドウィンなら読めるはずだ。片割れの石版は解読してたわけだし」

「なあカッペー、持って帰るとしたらどうやって馬車に積むんだ?」

「そうだなぁ……」


 言いかけた瞬間、背中に凄まじい寒気を感じた。ボニーも同じだったらしく、険しい顔付きになってモーニングスターを構えている。

 部屋の扉の裏に、何かがいる。


「誰だ」


 俺が牽制すると、ゆっくりと黒いローブに身を包んだ男が姿を現した。頭まで目深くフードで覆われているため顔は確認出来ないが、闇の奥で赤く光る二つの目がギラついている。


「お前たちに、先を、越されたようだな」


 ゆっくり言うと、その男はこちらに近づいて来た。


「止まれ。お前は何者だ」


 俺は腰の刀に手を掛けて低い声で問う。すると男は立ち止まり、ゆっくりと俺の方を向いた。俺は全身の毛が逆立つかのような感覚に囚われる。


「コドン第三機関の者だ。その石版を、見せてくれないか?」


 物腰は柔らかいが、拒否すればどうなるか分からない。刃物のような鋭い雰囲気を男は持っていた。


「そう警戒するな。取ったりしない。少し眺めさせてくれるだけで良いのだ」


 こいつの目的は分からない。だがここで逆らうのは得策ではない気がした。俺は刀から手を離し、道を開けた。


「カッペー、いいのか?」


 ボニーが俺の方を見て驚いた表情を浮かべている。確かにこの男はどう考えても味方では無さそうだが、今は身の安全を第一に考えるべきだ。

 しばらく石版の前に立って眺めていた男は「そういうことか」と独り言のように呟いた。そして再び俺の顔を見る。


「その女を、大切にしておけ。次に会う時は、奪わせてもらう」


 フィアールカが俺の背中に隠れ、後ろで震えているのが分かった。こんな気味の悪い男に誘拐宣言をされたら怖がるのも当然だ。

 でもよく考えたら俺もフィアールカを誘拐したんだったわ。


 俺たちを尻目に、男はゆっくりと部屋を出て行った。





 遺跡を出た俺たちは、エルフの村で石版の文字を解読できる人がいないか探した。

 ところが今エルフたちが使っている文字と古代エルフの使っていた文字は完全に別物だったらしく、誰も石版の文字を読める人はいなかった。


 そこで俺たちは村長に許可を取った上で、石版をリザードテイルへ持ち帰ることにした。

 フィアールカを狙う組織が現れた以上、ゆっくりはしていられない。


次章に続く。

ただ、少々お休みをいただきます。



お読みいただきありがとうございました!


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