二十三話 エルフの国へ行こう
フィアールカと握手を交わしたあの日、俺はエドウィンが働いている料理屋を尋ねた。
店でウェイターをしていたエドウィンは気の毒なほど元気がなかった。
まるで母親を見失った子供のように店内を右往左往し、死後三日経った死体のような顔で俺たちの前に来て、亡霊のような声で注文を聞いて来た。働くのが嫌すぎて俺の顔も分かっていないようだった。
俺が小声で「エーテル族」と呟くとエドウィンは顔に生気が戻り、昨日と同じように元気よく服を脱ぎ始め、昨日と同じように勢いよく店長からぶっ叩かれていた。
「もう一つの石版はエルフの国『クロノス』の『ビントゥ地下遺跡』に眠っている」
厨房に連れ去られながらエドウィンはそう言った。そのエドウィンの言葉を頼りに、俺たちはエルフの国クロノスへと向かっていた。
「あー暇だ。カッペー、まだ着かないのか?」
ペガサスに引かれて空を飛ぶ馬車の中でボニーが欠伸をしている。
「リザードテイルを出て二日経つ。そろそろ、遺跡近くの村に着くとゾリグが言っていた」
「そうか、しかしエルフの国に行くのはワクワクするなあ」
ボニーは座席の下で足をバタバタと動かせてソワソワした様子だ。
エルフとは金色の髪に尖った耳を持ち、樹上で生活する美しい種族だと聞く。これから到着する村で会う機会があるだろうから、俺もボニーと同じく楽しみだった。
「しかし残念だな。エドウィンも来ればよかったのに」
もちろんエドウィンもエルフの国に来たがっていたのだが、七連勤でバイトのシフトが入っていて来られないとのことだった。
「あらぁ、エドウィンが居なくても良いじゃない。石版の在処は教えて頂けたのですから」
そう言って、俺の右隣りに密着して座るフィアールカが俺の顔を見上げてくる。ただただ微笑んでジッと見つめている。正直に言えば、その眼差しを向けられるだけですごくドキドキする。
ボニーがこの空間に居なかったら、二日間のうちに俺はどうなっていたか分からない。
「エドウィンが来ないのも意外だったが、俺はお前がついて来たことも意外だったぞ、ボニー」
俺は何とか話を逸らそうと、対面に座っているボニーに話しかけた。
「んー、まあこれも何かの縁だ。私はフィアールカの呪いを解く手助けをしたいし、何よりカッペー、私はお前のことが気に入ったんだ」
ボニーの笑顔は相変わらず眩しい。まあボニーの強さは本物だ。付いて来てくれるのは非常にありがたいことだ。
「ボニー、頼りにしてるz痛たたたたたたあ!」
突然フィアールカに脇腹を思いっきりつねられた。しかも爪で。
「どうしたカッペー! 新しい一発ギャグか!」
「何の発作だよ! いやそうじゃなくて……」
フィアールカの方を見ると、まるで何事も無かったかのように微笑んでいる。
お前、笑って許されることと許されないことがあるんだぞ。
許すけど。
「いや、気にしないでくれ。ちょっと蚊にかまれただけだ」
つづく
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