表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/48

十一話 忍術って便利だね

 

 夜が明け、日が差し込み始める。

 目的地のリザードテイル島とはどんなところなのだろうか。ボニーを派遣してきた「ギルド」という組織があるらしいが、詳しい事は何も分からない。


 ……分からない事と言えば「呪い」についてだ。

 俺は確かにフィアールカから呪いを受けた。

 もしアヴァラス帝国兵たちがその「呪い」を外に出さないように守っていたのだとしたら……、どれだけ肯定的に考えても俺が命がけの厄介ごとに巻き込まれたことだけは間違いない。

 その事に思考を巡らせると、任務がうまくいったにも関わらず暗い気持ちにならずにはいられなかった。




 ボニーとフィアールカが毛布にくるまって寝ているのを眺めていると、不意に耳鳴りを感じる。

 合図だ。

 俺は懐から1枚の和紙を取り出した。

 風ではためくその紙は真っ白で何も書かれていない。

 それをしばらく凝視していると水滴が(にじ)み広がるかのように、ぼんやりと黒い(すみ)で書かれた文章が浮かび上がってきた。


 これは念を込めることによって離れた場所にいる相手と会話できる、

「忍法 文通の術」だ。

 手紙の主を見て俺は再び胃が痛くなってきた。

 ……狐塚総隊長である。


『ヤッホー元気? 死んでない? あ、死んでたら手紙読めないよねゴメンゴメン。

 聞くまでもないと思うけどフィアールカちゃんの救出作戦は上手くいったよね?

 上手くいったよね?

 分かっていると思うけどしくじったら即「死刑」だからね?

 ちなみに処刑人は僕だよ。

 君を殺した後で僕も切腹するけどね(笑)』




 俺の胃はキリキリと音を上げているようだ。

 軽く重い言葉を吐きやがる。


 しかし手紙はまだ続いている。


『あ、そうそう本題。

 フィアールカ・グラフを救出後リザードテイル島に向かえ。っていう任務だったじゃん? 実は猿渡君に直接伝えないといけないことが出来たから、リザードテイルに僕も向かうことにしたよ。今から会えるのが楽しみだね!

 猿渡君も楽しみだよね?

 じゃあまたリザードテイルで会おう!


 追伸

 フィアールカちゃんには絶対手を出しちゃダメだよ、お猿さん。いいかい? 絶対だからね。本当に絶対だよ? 何があってもだよ? いい? 絶対の絶対だからね? フリじゃないからね?』




 俺は胃が悲鳴を上げる音を聞いた気がした。

 手は出してない。手は出してないが結果的には同じようなことをしてしまった。

 その、口づけというか……。キッスと言うか……。

 ああ、ヤバい。到着したら総隊長から制裁を加えられる。




「ふぁ……」


 俺が一人でテンパっているとボニーが起き上がって来た。髪はボサボサで目もとじたままだ。


「カッペーおはよう。どうかしたのか?」

「おはようボニー。俺はこれからしばらくリザードテイル島に滞在することになるかもしれない」


 俺の言葉にボニーの目はパッと開き表情も明るくなる。


「本当か!? やった! ちょうどお前と離れるのは寂しいと思っていたところなんだ!カッペー、これからもよろしくな!」


 ボニーは両手で俺の手を握る。

 いきなり寝起きからテンションの切り替わったボニーに俺は戸惑ったが、その素直な言葉が嬉しかった。迷っているとき、落ち込んでいるとき、こいつは人に元気を与えられる人間だろう。

 俺も笑顔で手を握り返す。


「よろしくな、ボニー」


 その手は力強く、たのもしい。

 日は登り、黄色くなり始めた陽光が俺たちをまぶしく照らしていた。




 続く


お読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ