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9、デキ女 ブリジット

 課題提出から数日すると、家の中の大体の仕事は既に完璧にこなせるようになっていた。 


 普通なら完璧に業務をこなすことができるようになるまで

1ヶ月かかるような業務を、彼女の手にかかれば1日、多くても2日で事足りていた。

そのため、大体のメイドが行なっている業務を一人でブリジットがこなすこともできるのだ。


 そこに気づいたジーンは、ジーンのみが行なっている仕事をブリジットに教える事に決めたのである。

それが家庭薬の調合や、怪我をした際の治療である。


 特に薬の調合などは、〝調合師〟という資格がないと調合することができない。

 家庭薬の調合も、この調合師の資格がないとすることができない。

そのため、資格を取ろうとする使用人も多いのだが、人体に関わる資格のため合格率が非常に低い。

毎年100人受けて1人合格するかどうか、の確率とも言われている。



 だからこの資格を持っている人が屋敷に一人でもいれば、街に薬を買い出しに行く必要もなくなり、

必要な時に必要な分をすぐに作成できる、という点で非常に利点があった。



 この資格があればその分給料も高くなるのだが、調合師に定められている最低給与が非常に高値なため、調合師兼メイド(もしくは執事)を雇える財力を持っているのは、公爵家だけなのである。



 ついでに言うと、資格を持つ者と一緒に作成すれば薬と認められる。

 ジーンも調合師の資格を持つ一人であり、調合や治療に関しては彼女が全てを請け負っている。

だからジーンがブリジットに調合の仕方を教えることも可能なのである。



「ブリジットには、今後調合師の資格を取ってもらいます。その為の調合の仕方を今日から教えますので・・・」



 ふと、ヨハンに渡された手元の資料を見てジーンが止まった。何故ならーー



「ブリジット、貴女・・・調合師の資格を取るために昨年試験を受けているの!?」

「はい、合否はまだきておりませんが・・・」



 ジーンは驚愕した。

先ほど言った通り、調合師の資格であっても100人中1人が合格するかどうかの難易度である。

 

 それだけではない。

資料には、調合師の資格以外に医師の資格も取るために勉強に励んでいると書かれている。

調合師の資格取得を目指しながら、医師の勉強もすることは凡人には難しい。

 この二つは超難関資格とされており、この二つの試験に合格している人は王都に1人しかいないと言われているくらいである。

 

 ジーンも調合師の資格取得後、何度か医師の資格に挑戦したが、合格することはできなかったのだ。


 ちなみにこの二つの資格は、資格を持つ者の下で弟子として働いていればーーー何年かは掛かると思うが、取得することができるのだ。

だから大抵は医師や調合師の下で修行して受けるものが多い。


 しかし独学で受けるとなると100人、いや200人に1人の難易度になってしまうのである。



「貴女には調合師や医師の師匠は、いたのかしら?」

「いえ、いません。独学でした。」



 しかしーーとブリジットは話し続けた。


「以前あるお方とこの二つの資格についてはお話する機会が多かったので・・・その方を師匠と言うのかもしれませんが・・・弟子としてついたことはありませんでした。」



 驚きで口を開けたままだったジーンに、さらに追い討ちをかけるかのようにブリジットが話し始める。



「ちなみに以前その方に見て頂いて作成した薬も部屋に置いてあるのですが、お見せしますか?」

「え、ええ。」



 その言葉を聞いたブリジットは軽く例をして部屋に戻って行く。

そんな時、呆然としていたジーンに声を掛けた者がいた。



「ジーン、ブリジットさんはいるかい?」



 ヨハンである。手に何やら封筒を持っている。

その封筒はジーンが見たことのある封筒だった。そう、調合師の合否判定の封筒だ。

 


「学園から送られてきた封書だ。ブリジットさんに渡しておいてもらえるかい?」

「え、ええ。」



 いつもより歯切れの悪いジーンに首を傾げながらも、業務に戻って行くヨハン。

入れ替わりにブリジットが声を掛けてきた。



「メイド長、こちらをお持ち致しました。」

「ああ、では見させてもらうわね。あとこれを渡しておくわ。貴女宛てよ。」



 調合師の合否判定の封筒をブリジットに渡す。

薬を見ている間に、確認しなさい。そうブリジットにジーンは伝える。

 そして彼女の持ってきた薬を手に取り確認する。



・・・これは寸分の違いなく材料の調合が正しく出来ているわね。これが間違っていたらこのような綺麗な濃い緑色にならないわ。



 ブリジットが持ってきた薬は風邪薬として使われているのだが、成功すると緑色になる。

しかも色が濃くなれば濃くなるほど、その薬は効きやすくなるのだ。

反対に赤や黄色になってしまった場合、分量が違ったり、調合の仕方が間違っている可能性がある。


 ジーンは手に取った薬を自身の持っていた瓶の中に入れ、ブリジットに渡した。

手に取った、つまり沢山空気に触れさせてしまったのである。

 薬は変化しやすく、空気に触れただけでも変化する可能性があるので別物に入れたのだ。



「お気遣い、ありがとうございます。」

「いえ、私も調合師の端くれよ。むしろ薬をまじまじと見て申し訳ないわ。」



 とジーンが謝るのだが、ブリジットにしたらどう返事をしたら良いか迷ったらしい。

少しの間、気まずい時間ができてしまったのだ。

 そこで気まずいながらも、ジーンは結果を確認することにした。



「ちなみに結果はどうだったのかしら?あ、私が聞いても良いのなら・・・だけど」



 ブリジットは報告義務があることに気づいたのだろう、

どうぞ、ご覧ください、と言って二つの書類をジーンに渡す。



 その書類に記載されていたのは


ーーー汝、調合師の資格を持つことを認める



 合格通知であった。

ブリジットのデキジョっぷりが分かってもらえると嬉しいです(o^^o)

今のところ、メイド道に関しては完璧を貫いてます。

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