7、メイドは・・・ ①
とうとうフランシスと出掛ける日になった。
さて、着替えよう。と考えていたブリジットの元に、ジーンとヴェラが訪れて着替えさせたり、ベル達がアクセサリーを持ってきたりとてんやわんやしていた。
着飾ることをあまりして来なかったブリジットにとっては苦痛だったのだが、皆があまりにも楽しそうに着飾っているので、雰囲気を壊す事のないよう無表情でやりすごしていた。
何度も言うようだが、残念ながらブリジットはデートだと思っていない。そこが他者との温度差につながるのであろう。
着飾った後、待ち合わせていた玄関にブリジットが向かうと、すでにヨハンが待ち構えていた。
フランシスから先に馬車にいるように、と言われているとのこともあり、先に馬車に乗る事にした。
そんなブリジットに声を掛けるものがいる。
「ブリジット、今日も綺麗だねー!」
モニカである。彼女は先ほどの着替えには居なかった。
理由は、ブリジットの馬車に乗る手伝いをしたいとジーンに迫ったからである。
勢いに負けて、ジーンは彼女に手伝いをするよう伝えたのだが、それはブリジットの知らない話だ。
「ありがとう、モニカ」
「以前はミントグリーンのドレスだったよね?それも似合っていたけど、今回の色も似合ってるねー」
そう、今回着ていたのは、赤色のワンピースだ。首から胸元にかけて白いレースが3重にあしらわれ、首元には赤いリボンが飾られている。そして背面の腰の部分には大きなリボンが付いており、可愛らしく魅せていた。
これはイチコロだー、と勝手に納得しているモニカを他所に、褒められて嬉しいブリジットは俯いて顔を赤くしている。だからモニカの独り言は聞こえていなかったようである。
「あ、そろそろ旦那様が来るよ!準備をしないと」
との声で馬車に乗り込む準備を始めたのだった。
遅れて馬車に着いたフランシスも乗り込み、王都に向かう。
馬車の音はいつも変わらないのだが、今日は心なしか馬車の音も軽やかに聞こえる。
フランシスはブリジットの対面に座っている。
馬車の音とは反対に、少しだけ二人の間には気まずい雰囲気が漂っていた。
その雰囲気を打ち破るように、フランシスが話しかける。
「そろそろ王都だが、行きたいところはあるか?」
「いえ、私は旦那様に着いていきます」
「‥‥そうか、じゃあ商業区に足を運んでみよう。ブリジットは何か好きなものはあるのか?」
そう聞かれて悩み始めるブリジット。
ーーーそういえば、好き嫌いはあまり無かった気がするわ
と考えていたことを知っているのはブリジットだけだ。
流石に無言のままではいけないと思ったブリジットはこう答える。
「では、メイド長が教えて下さったお店があるのですが‥‥」
「ジーンが?ジーンのお勧めの店なら美味しいだろう。行ってみるか」
「はい」
その店の場所と名前をフランシスに伝えたのだった。
その後もまた静かな馬車内だった。ブリジットは姿勢良く窓の外を見つめている。
そんな彼女の姿をフランシスは目の端で捉えていた。
その時、何かが太陽の光に当たったのだろう、キラリと光った事に気づく。
不思議に思い、フランシスは声をかけた。
「ブリジット、その髪に着いているのは?」
声をかけられたブリジットは、一瞬考えたようだが、何のことか気づいたようでにこりと笑う。
その笑顔にフランシスがドキッとしたことは言うまでもない。
「この髪飾りは以前旦那様より頂いたものです」
フランシスからは光っていてよく見えなかったのだが、ブリジットが彼に見せるために後ろを振り向くことでしっかり見えた。
以前領地で買った髪飾りだ。
「戴いてからは出掛ける機会が無かったもので、今回付けさせて頂きました」
実はジーンやヴェラたちは色の問題で最初は渋っていたのだが、フランシスから貰ったものだと伝えると、
「それは付けていかなければなりませんね」と太鼓判を押したのだ。
「この髪飾りは、前世の時に戴いたものにそっくりでした‥‥‥だから見覚えがあったのだと思います」
少しだけ思い出した記憶の中に、ブリジットが持っている白紙の本と髪飾りがあったのだ。
「‥‥そしてこれが凄く大切なものだったことは思い出したのです」
首を傾げてさらに笑うブリジットを他所に、フランシスの心の中ではそわそわしている。
勿論、顔にはその気持ちを現すことなく笑顔で対応しているのは言うまでもない。
何故そわそわしたのか、と思うだろう。
その理由は、その髪飾りを送ったのはフランシス(の前世)だったからだ。
後は今どう思われているかである。
ブリジットは心が暖かいまま、フランシスは心が騒ついたまま、王都に向かうのであった。
最近、アニメも始まっているとのことで、
なろう作品で有名な「転生したらスライムだった件」や「オーバーロード」を小説で読んだのですが、
感情移入しながら読める作品って読んでいて楽しいなと思います。
私もそういう作品を作ることができるように、精進いたします。




