5、初日 ②
投稿遅れました!
集合時間間近になると、広々としていた広間はあっという間に手狭になっていく。
集合した執事やメイドたちは、ジーンの近くにいる女性が新入りのブリジットだと言う事に気がついたのだろう。ブリジットに軽く挨拶をしながら、広間に入ってくる。
最初は緊張していたブリジットだったが、そんな周りの様子を見て一安心していた。
以前ブリジットが学生だった頃。
卒業した先輩メイドから「職場で新人イビリがあるところもあるから気をつけて」と注意されることがあった。
しかし今の様子を見ると、公爵家ではそのようなものは無さそうである。
働きやすそうな職場だと分かり、ブリジットは胸を撫で下ろした。
むしろ、挨拶した先輩メイドの中には「侍女科首席で卒業したんだって?!凄いねー!」と
ブリジットの手を取る人もいた。
余りにも満面の笑みだったため、ブリジットは少し照れてしまった。
そんな照れたブリジットを見て、皆心の中で可愛い・・・と思っているのだが、鈍いブリジットは気づかない。
集合時間になり、朝礼が始まる。
普段は執事とメイドは別々で朝礼と言う名の仕事分けを行う。
今日はブリジットが居たため、ブリジットの自己紹介から始まったが、当たり障りのない自己紹介で終わる。
ジーンからの説明によると、仕事は2人組みで割り振られるそうだ。
今回ブリジットと組む事になったのは、モニカである。
モニカは先程、ブリジットの手を取って褒めた張本人だった。
彼女はブリジットの前に勤め始めたらしいが、それでも4年は経っているらしい。
ブリジットよりも歳は一つ下、しかものほほんとした雰囲気が先輩っぽくないのだが、れっきとした先輩である。
「モニカとブリジットは今週、洗濯と旦那様の寝室を担当するように」
「「はい」」
「ブリジット、基本は学園と変わりませんが、この屋敷内には魔道具が多いです。使い方をモニカから聞いて覚えるように。貴女なら一週間もあれば覚えられるでしょう。」
ブリジットがはい、と返事をすると満足げにジーンは他のメイドに指示を出し始めた。
その為、二人は早々に広間を出て洗濯場へ向かっていく。
その途中に、横にいたモニカが少し驚いた顔で話しかけてくる。
「ブリジットさん凄いねー。もう洗濯場の場所を知っているの?」
「ええ、一応この屋敷の地図を頂いていたので、頭には入れています」
と受け答えをしたブリジットはモニカの方を見ると、モニカが少し頰を膨らませて眉を顰めていた。
ブリジットは受け答えが悪かったのだろうか、と心の中でそわそわしていたのだが・・・
「そんな堅い言葉使わなくていいよ!ブリジットさんとは仲良くなりたいしー」
どうやら、喋り方が不満だったらしい。さっきとは違い、捨てられた子犬みたいな表情をしているモニカにブリジットは言葉が詰まる。少し考えてから、
「二人の時だけなら・・・」
と譲歩案を伝えた。
流石に年下とはいえ先輩だ。いきなり敬語を外すのは躊躇われる。
それを分かっていたのだろうか、モニカも満面の笑みで答えていた。
ブリジットは、ほっと胸を撫で下ろした。
上下関係が厳しいメイド職であるから敬語を猛勉強したのだが、まさか最初から取っ払ってくれ、と言われるのは予想外だったからである。
そんな事をブリジットが考えているとは思わないモニカは、一人でブリジットに話し始めたのだ。
「それに初日から旦那様の寝室担当になる事なんて滅多に無いんだよねー。ブリジットさん、メイド長に凄い期待をされてると思う。」
期待、と言う言葉を聞いて、朝礼前のメイド長の話を思い出す。
「そう言えば、メイド長が〝即戦力になるよう鍛え上げます〟って仰っていたわ。」
「即戦力かあ。ブリジットさんならなれそうだね!その為には今日全力で頑張らないとー」
モニカのキラキラした目を微笑ましく見ていたブリジットが、ふとモニカの言葉に違和感を感じたのである。本当に些細なことであるが・・・
「ねえ、モニカさん。今日全力で頑張るって事はつまり・・・」
「ふふふ、流石ブリジットさん!考えている通りだよー」
・・・つまり今日の私の仕事振りで、教育方針が決まるわけですね。ならば受けて立ちましょう。
思わず表情を変えてニヤリと笑ってしまったブリジット。
モニカはそんなブリジットの微笑みを見て、ニコニコとしていた。
引き続き自己紹介で終わった気が・・・
今回出てくるモニカはオンオフがはっきりしているキャラの予定ですが
思った以上に天真爛漫担っていく気が(笑)