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5、ポスフォード侯爵家 ①

「やあ、これから数週間よろしくね」


 目の前で気さくに話しかけるこの男、彼こそがポスフォード侯爵である。

彼の目の前には、モニカ、ブリジット、ヴェラの3人が立っている。表情は3人とも無表情であるが、その様子をフランシスの使用人が見たらこう思うだろう。


 ヴェラは疑わしそうな人だな、と相手にわからない程度に少しだけ眉を顰めている

 ブリジットは、侯爵に興味もないと言わんばかりに、無表情

 モニカはまるで能面を着けたのかのように、表情を失っていた


 そんな状況を知らないポスフォード侯爵は、表情を変えない点から使用人としての素質に満足したのだろう。にこやかな笑みを見せていた。


「カノヴァス公爵の使用人は優秀だと聞いているよ。期待しているね」


 彼の笑みに若干のきな臭さを感じながら彼女たちは彼の元を後にするのだった。



 3人はポスフォード家の使用人に紹介された後、3人がバラバラで仕事をすることになった。

ヴェラには大人しそうで可愛らしい女性が、モニカには身長が高くメガネをかけた女性、ブリジットにはニコニコと笑っている女性が当てられる。


「本日は彼女たちに付いて、仕事を行なってください」


 カノヴァス家のジーンとはまた違った雰囲気のメイド長ーー名前はシンディと言うそうだが

穏やかな笑顔で笑う彼女の指示のもと、仕事を行う。仕事自体はカノヴァス家とほぼ変わらないため、彼女たちは要領よく仕事内容を理解することができた。


 それに驚いたのは、ポスフォード家の使用人である。

元々交換制度自体事例が少ないため、カノヴァス公爵家の使用人が有能であるとは聞いていても、どれだけ有能か実態は知らなかった。

  だが、実際共に仕事をしてみると分かる。彼女たちは少ない労力で最大限のパフォーマンスを行うことができていた。例えば、窓を掃除する際もガラス一枚にかかる時間が圧倒的に少ないのだ。ポスフォード家の使用人が10分かかるところを、半分の5分で指紋ひとつない綺麗なものにしてしまうのだから。


 たかが公爵家の使用人が、と思っていた矢先のことである。彼女たち3人に付いたポスフォード家の使用人は、自身との格の違いを見せつけられたのだった。



 仕事も終わり、ブリジットたちは与えられた部屋へ向かう。ポスフォード侯爵家では部屋に空きがなかったらしく、大きめの部屋2人と小さい部屋1人に分けて部屋割りを組まれていた。

 今、大きめの2人部屋には3人が集まって話をしていた。



「二人とも、仕事はどうだったー?」

「そこまで難しいものではなかったわね」

「ええ、私もヴェラさんと同じく」



 ちなみに彼女たちは小声で話している。この部屋には音声を拾う魔道具や、この部屋を監視するための魔道具は置いていないようだった。だが、万が一のこともある。注意するに越したことはない。

 そのため念には念を入れて、小さい声で話していたのだ。


「今日は何かあったかしら?」

「別に何もなかったよー」

「こちらもありませんでした」


 聞いたヴェラ自身も何もなくあっさり終わったのだ。


「まあ、初日ですからね。何かあったらモニカもブリジットも教えてくださいね」

「はーい」

「勿論です」


 そして彼女たちは、今日取り組んだ仕事についての共有を行う。

彼女たちは公爵家の使用人として、有能であることを示すために。



 ちなみにその頃、カノヴァス家では。


「ジーン、どうしたんだい?」


 ため息をついているジーンに声をかけたヨハン。彼女の顔を見てなんとなく察しがついていた。


「彼女たちの基礎が思った以上にできていないようで……」


 はあ、とため息をついている。使用人とはいえ、侯爵家に勤めている者達だ。もう少し基礎が徹底されているものだと思ったらしい。


「ポスフォード侯爵家だからなあ」


 ヨハンも苦笑いである。そう、それは彼の仕入れた情報の一つにある。

 ポスフォード侯爵家の使用人は顔で選別されているーーという情報だ。


「だから、もしかしたらと思っていたけれど」

「今回来た人たちは、見習いレベルにすら至ってないのかもしれません。大丈夫なのかしら?」

「まあ、こちらはこちらでやるべきことをしようか」

「そうですわね……」


 こうしてジーンの頭痛の種は解消されることなく、引き続き頭を抱えざるを得ない日々が続くのであった。

 ポスフォード侯爵の笑顔はニヤニヤ、というイメージです。

でも一応ダンディなおじ様のため、貴族の女性の中にはファンもいる紳士。外見は。


次話も明日更新予定です!

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