4、命令
フランシスが王家から手紙を賜わってから2週間程経つ。
フランシスの目の前には、ジョエルがおり、ジョエルと共に魔道具の改良版試作品の機能を試していた。
彼らは今フランシスの屋敷の地下にある研究室にいた。
「これで問題ない。きちんと動作すると思われる」
「ああ、忙しいのに助かる。ジョエル」
彼はフランシスの命じた通り、試作品ではあるがほぼ完成に近い魔道具を作成できていた。
彼の顔には疲れが残っているのか、目の下にクマができている。だが、その表情は晴れ晴れとしていた。
「なかなかに良い状態だと思うぞ、これは」
ジョエルは肩の荷が完全に降りたようだ。満面の笑みでフランシスに使い方の説明を始めた。
実際はシンプルな使い方ができるようにと考慮されているので沢山の説明は不要だが、自慢をしたいのだろう。ジョエルは意気揚々に話し始める。
そんなジョエルは気がつかない。フランシスが少しだけ困った顔をして愛想笑いを浮かべていることに。
自身が満足できる魔道具を作ると気持ちが高ぶる、これがジョエルの癖であることはフランシスは知っていた。
だから彼からすれば、また始まったか。と愛想笑いを浮かべるしかないのだが。いつもの状況に陥りつつあるため、フランシスは仕方がないな、と思いながらジョエルの話を遮る。
「本当に今回は助かった。ではこの試作品は彼女たちに渡すようにする」
語り足りなかったのだろう、口を尖らせたジョエルだったが
「ああ、何かわからないことがあれば言ってくれ」
と素直に返事を返すのであった。
ジョエルと別れ、彼は執務室に向かう。そして領地の仕事を行いながら、待っていた。
「旦那様、お二人を連れて参りました」
ヨハンが静かにドアを開ける。ヨハンの奥にはブリジットとヴェラが立っていた。
「疲れているところすまない。こちらに座ってくれ」
二人は返事をした後、素直に席に座ることにする。
「二人に頼みがある。少しばかり偵察をお願いしたい」
「……どう言うことでしょうか?」
ヴェラはフランシスの依頼に驚く。只の使用人である我らに、何を頼むのかと思ったに違いない。
「この度、ポスフォード侯爵家と使用人交換制度を使用して交流することとなった」
「交換制度、ですか」
「ああ」
ヴェラは顔を顰めるも、交換制度のことは知っていたのだろう。口を閉じて考え事をしていた。
「向こうで仕事をする際は別に普段通りに仕事をお願いする。もし何か侯爵家に不審な動きがあれば教えてほしい。だが無理に動くことはしないでくれ」
「……もし不審な動きがある場合は、どうしたらよろしいですか」
ブリジットはいきなりの依頼でも冷静であった。
「ヨハン、あれを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
ヨハンが席を立ち、彼の研究室からある物を取りに向かう。その間にフランシスは渡すものの説明をするのである。
「今から渡すものは、通信機と追跡魔道具。通信機は魔力を軽く込めれば、通じるようになっている。追跡魔道具は着けたら効果が発揮されるものだ。だから身につけておいてもらえると助かる」
説明が終わりフランシスが一息ついていたところに、ちょうどよくヨハンが戻って来る。そして彼女たちに道具を渡された。
「ポスフォード侯爵の交換制度で向こうに向かうのは、ヴェラとブリジットとモニカだ。だがモニカは突っ走る可能性があることを考えて、君たちだけにお願いをすることになった」
怪しまれないように、追跡魔道具と通信機に似た物は渡されるらしい。彼女はフランシスと連絡が取れないのであるから、彼女の情報も引き出す必要がある。
「無理をせず、何か問題があった時はすぐ連絡をしてくれ」
二人は顔を見合わせて、返事を返すのであった。
次からは交換制度編です!
彼女たちはどうなることやら……
次話はできたら明日投稿したいです!
 




