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24、当日 ② 

ブリジットの両親がでてきます。

「ああ、いいエントランスだね、カノヴァス公爵。」

「ありがとうございます、オードラン伯爵。」

「今日はよろしく頼むよ。」



 既に戦場は始まっていた。主人であるフランシスはエントランスで客人を出迎える。

下位貴族から順に席に着くことになっており、今は伯爵家の番なのだ。

まだ半分も席が埋まっていない状態である。それだけ招く人が多いのだろう。

今屋敷に来ている伯爵家の着席が終われば、侯爵家→公爵家の順で入場となるのだ。

 オードラン伯爵との挨拶も終え、次の出迎えに向かうと、そこにはブリジットの両親がいた。



「カノヴァス公爵、本日はお招き頂きありがとうございます。」

「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。」



 ブリジットは母親似であるようだ、とフランシスは感じていた。瞳は父親の色を継いでいる。

毎年彼は思うのだが、ブリジットの両親は裏表のない温かみのある人たちだ。

特に父親のセザールは温厚と言う言葉が似合う人であり、貴族らしくないところがある。

そのため、交渉ごとが苦手なのだが、そこを担当するのは妻であるカトリーヌだ。

 カトリーヌは王都で一番取引量の多いボワッソン商店の長女である。

ボワッソン商店とは彼の治めるカノヴァス領も取引を行なっており、様々な商品を取り揃えている一大有名商店だ。

 ベルジェ領は農業が盛んな為、商店がベリジェ領と繋がりを深く保ちたい、と言う思惑で嫁入りを許したとされている。が、実際嫁入りした理由はカトリーヌの一目惚れによるゴリ押しだった。

 

 ふと見ると、父親であるセザールがそわそわしているように見える。焦っているのだろうか。

少し不思議な顔をしたフランシスが隣のカトリーヌを見やると、そのことに気づいた彼女はにこりと微笑む。



「ほら、貴方。カノヴァス公爵様がお困りですよ?」



 その言葉でフランシスの様子に気づいたセザールは、意を決したのか力み始める。そして・・・



「・・・うちの娘のブリジットは、ご迷惑をおかけしていないでしょうか?」



 一瞬目が点になったフランシスも、単にブリジットが心配だっただけと気づき、少し微笑みながら



「はい、彼女の仕事ぶりには驚かされるばかりです。非常に頑張ってくれていますよ」



 と答える。

 その答えにホッとしたのだろう、力んだ肩の力を落とし、セザールはよかったと答えた。



「申し訳ございません、夫がまだ子離れできていないようで」

「いえ、ご心配になるのも当然のことかと。」



 ニコニコと話すカトリーヌとフランシス。と、その後別の伯爵家の馬車が到着したらしい。

外からの声を聞いたカトリーヌは笑顔で、セザールは真剣な顔でフランシスを見遣った。



「カノヴァス公爵、後でお時間いただけますでしょうか?」

「・・・どのようなご用件で?」

「ブリジットについてお耳に入れておきたいことが。」

「では、執事のヨハンを向かわせましょう。よろしいでしょうか?」

「ありがとうございます、助かります。」



 外から次の貴族が入ってくると同時に、カトリーヌとセザールは笑顔を作りお礼を伝え、席に向かうのであった。


 貴族としては可もなく不可もなくな気のいいお父さん

意外と好きです。


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