2、ギャフンと言わせたい
連続して載せました。
その瞬間、ブリジットはフランシスを目だけでキッと睨みつけた。
ブリジットにしてみたら、バカにされた様なものだ。
初対面に対する言葉遣いではない、と苛立ちを感じていた。
しかし、その睨みはフランシスに届く事なく無駄に終わる。
苛立っているブリジットを他所に、ヨハンとフランシスは明日以降のブリジットの仕事について話していた。
そんな二人を見ていたからか、少しだけ彼女は冷静になっていく。
数分も掛からないうちに、彼らの話し合いが終わったようだ。
話し合い自体もーーーまるでブリジットに対しての発言がなかった様に、非常に穏やかな雰囲気だった。
ブリジットでさえ、先ほどの発言は私の聞き間違えではなかったのか?と思うほどに。
しかしながら、その思いは次の瞬間に粉々に砕かれたのだ。
「では、明日からその高いプライドでぜいぜい頑張る様にな。」
と、鼻で笑う+見下す+上から目線コンボでブリジットに返される。
・・・なんだこいつ、どこが氷の公爵なの?!
邪悪な笑顔で見下すフランシスにブリジットは苛立つ。
しかし、ここで公爵に楯突くことになれば今後の我が身が危うくなる事は十分に理解していた。
だから彼女は最善策として、苛立ちが爆発する前にこの場から立ち去ることを選択する。
ヨハンもそう考えたのだろうか、軽く会話した後執務室から逃げるように二人は立ち去った。
二人が立ち去った後、パタンと小さな音を立ててドアが閉まる。
その頃にはフランシスの顔はまた無表情に戻っていた。
だが彼はその場に立ったまま、彼女たちが出ていったドアを名残惜しそうに見つめていた。
***
退出後、ブリジットはヨハンの後ろで顔を顰めていた。
顰めている跡が残りそうなくらい眉を近くに寄せて、苛立ちを抑えていた。
・・・ここにヨハンさんが居なかったら大暴れしていたわ。
ブリジットは苛立ちながらも、何故あの様な言葉を掛けられたのか原因を探りはじめた。
その様子に気づいたーーいや、気づいていたがあえて話しかけなかったヨハンが彼女に声をかける。
「ブリジットさん、これは独り言です・・・旦那様があの様に近づいて発言されたのは貴女が初めてです。旦那様は使用人に興味を持たれませんし、話されることもほぼありません。」
ヨハンの予想外の言葉に少しだけブリジットは面をくらった。
ブリジットが思う限りフランシスに粗相をした覚えがないのである。
だからブリジットは勇気を振り絞って、ヨハンに聞くことにする。
「ではなぜ・・・?」
しかしヨハンはブリジットの言葉の返事を返すことなく、黙って考え事を始めていた。
ブリジットはそんなヨハンに声をかけることができず、答えを聞く事がないまま別れたのであった。
その後ブリジットは、明日の仕事の準備を終え、ベッドに転がっていた。
与えられたベッドは実家で使っていた物よりも大きくふかふかである。
そのふかふかのベッドに癒されながら、今日の挨拶を振り返っていたのだが・・・
彼女にはフランシスが何を考えているかが分からなかった。
そして考えても、彼の言葉に苛立つだけで原因を探るのは無駄だと悟ったのだ。
だから彼女は一つだけ決める。
「公爵をギャフンと言わせてやる。」
そう心に決め、布団でゴロゴロしながら彼女は深い眠りにつくのであった。
ブリジットの1日目終了になります。
内心ではイライラMAXですが、顔に出ないようにするのは得意そうな主人公です。
次回の更新は明日の18時予定です。