14、暴露る
フランシスも有能編
執務室での話は終了し、ブリジットとヨハンが執務室を出ようとする。
その後ろ姿にフランシスは声をかけた。
「ヨハン、話があるから少し残ってくれ」
失礼します、とブリジットの声が掛かったあと、静かにドアが閉められた。
使用人として、マナーも礼儀も非常にレベルが高いことにフランシスは満足気である。
そんないつもと違うフランシスに疑問を持っているヨハンに彼は話しかけた。
「最近、調べて回っている様だが。」
一瞬、何の事か分からなかったヨハンだったが、ブリジットの事だと気づき固まる。
そんなヨハンに無表情で話しかけるフランシス。
先程ブリジットに見せていた笑みはもう既になりを潜めている。
それもそのはずだ、これが彼の素なのである。
「別に怒っているわけでは無い。彼女に対する私の態度を疑問に思ったからだろう?」
そこまで見抜かれていたのか、と頭を抱えそうになった。
ヨハンがブリジットを調べていたのは、念のためとフランシスの態度に疑問を持ったからだ。
そして調べた期間はフランシスが屋敷に滞在していなかった2週間の間だけである。
結論としては、全くの無駄であった。
気づかれないように調べていたが、まさか筒抜けだったとは、とヨハンは思う。
「まあ、これでも外交官をしていると色々情報が集まるからな。」
これまた無表情でヨハンに話しかけるフランシス。
ヨハンも、フランシスが二重人格なのでは無いか、と疑うくらい今は無表情だ。
そんな無表情のまま彼は話し続ける。
「何故彼女に拘るか、だが、彼女が例のあの人だからだ。」
その言葉にヨハンは驚きの表情を隠せない。
「・・・以前仰っていたことですね」
「そうだ。」
そう言われて少し納得したようなヨハンであるが、まだ疑問は残っている。
「では何故、彼女にあの様な話し方をされるのでしょうか・・・?」
ヨハンの疑問に答えるフランシス。
その回答を聞いたヨハンは、バツが悪いような複雑な顔をして執務室から出て行った。
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次の日朝礼。
ジーンには昨日の話が既に伝わっていたのだろうか、社交パーティーの役割分担を指示していた。
「まず表に出る者は、シリルとエルマン、グレンを予定しています。
そしてパーティーの際の給仕はベル、エリーヌ、ジョゼとブリジット。補助でヴェラが入ります。」
その言葉を聞いた瞬間、驚きの声と納得するかのように首を上下に振るものとの2種類に別れた。
が、その後の全員の思いは一緒だったに違いないーーーやはり、そうか。と
その中で一人だけ、フランシスが何故ブリジットに拘るのか理由が分かるヨハンは苦笑いをしていた。
昨日の件については、全てをジーンに話していない。話したのは、給仕の件だけだ。
ヨハンはブリジットを給仕に入れると聞いて、大丈夫なのだろうかと心配していたのである。
しかし、ブリジットが入ると知ったジーンは満面の笑みで計画を練っていた。
そして今の全員の反応である。ブリジットならやってくれる、と誰もが思っているようだ。
ーーーまあ、これであれば問題ないだろう
彼女は期待を裏切らないはずだ、と心の中で思いながら彼は自身の仕事に向かうのであった。
ヨハンも有能ですが、情報収集力はフランシスがヨハン以上に長けているようです。
フランシスは外交官に抜擢されたので、意外と腹黒かもしれませんね。
次回の投稿は予定では、明日時間は未定ですが、多分これくらいの時間になると思います。