14 逃走じゃない、誘導だ!(......と思いたい俺がいる)
不思議なことに、貫かれた肩の方から痛みは感じない。
『どう? ボクの魔法で痛覚をほとんどなくして、傷ついたところを片っ端から治癒をしていってるけど⋯⋯』
『あと、私の魔法で身体能力を強化しておいたから』
なるほど、ちゃんと2人の魔法は俺に届いているわけか。
「あら? あまり効いていないみたいね⋯⋯じゃあ」
直後、俺の肩を激しい痛みが襲った。まるで肩から引きちぎられるかのような、鮮烈で強烈な痛みだ。
「があああああああああああああ!!!!?」
慌てて手刀で刺さっていた茨の蔓を切断し、フローラさんから距離をとる。
「魔法耐性がないと痛みつけるのが楽でいいわねぇ⋯⋯加減が分からないのが玉に瑕だけど。まあ、いっか。しょーちゃんは確か不死身だし」
『ごめん! 痛覚を元に戻されたみたい。あと、毒の侵食が速いから、ボクの方は傷口の再生で手一杯になるかも』
フローラさんの狂気を含んだ声を聞き流しながらも、夏蓮からそんな悲しい報告を受ける。
くそぉ⋯⋯。たとえ不死身でも、そんな何度も死んでたまるかよ!
「う、うぅ⋯⋯」
震える脚で、足ずさりをする。
「あら? 逃げるのかしら?」
「⋯⋯そうだよ」
ボソリと、吐き捨てるように言ってから、俺はフローラさんに背を向けて、脱兎のごとく駆け出した。
どうすればいいどうすればいいどうすればいい!? あの人を止めるには!? あの人と真っ当に話をするには!? どうすればいいんだ!?
走りながら、俺は現状をどうすれば切り抜けられるのか、ただそれだけを考えていた。
幸いなことに、フローラさんは俺をじっくりと殺し(?)たいようで、あまり必死には追ってこない。
(まあ、あまり距離を取ると、コレット達の方へ向かうかもしれないから、常に一定の距離を維持しなければいけないんだが⋯⋯)
(少しスピードを上げるぞ翔太、追いつかれてきた。)
げっ⋯⋯まじかよ。
ちなみにこれでも、今の俺には結構限界だったりする。
「ハアハア⋯⋯」
そろそろ息が切れてきた。この上の階に、パーティ会場があり、そこまで無事にフローラさんを誘導出来れば、俺の仕事は終了だ。
⋯⋯だが。
「? ⋯⋯待てよ」
目的地のある階への階段を1段飛ばしで登り切った瞬間、俺はふと思いつく。
「なあ、レンにコレット⋯⋯もし将来結婚して、旦那が浮気をしてたってわかった場合どうする?」
『『ええ?!』』
この土壇場での唐突な質問に、2人は困惑する。
それでもこれだけは確認しておかなければならない。
「悲しいか? 他の幸せそうな夫婦が妬ましくなるか?」
『『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』』
2人の沈黙は、「そんなこと言われても⋯⋯」という意味だろう。それでも俺は根気強く待つ。
『まあ、多分そうなるんじゃない?』
『うん⋯⋯多分だけど』
よし、じゃあここからが本題だ。
「なら、少し話を変えるが⋯⋯」
俺は今まで見聞きしてきた事を思い出しながら口を開く。
「もし、旦那が浮気をしていないのを知っている上で、浮気だなんだと騒ぎ立てる理由は、なんだと思う?」
俺の仮説が、当たっていることを祈る。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
……気がつけばこんな時間(23時半)になってしまいました。
急いで書いたので、後で変更する部分が出てくるかもしれませんが、そこはご了承の程よろしくお願いします。




