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魔王城へようこそ!  作者: 大和(大)
「浮気調査」編
85/233

5 エンカウント・ドラゴン



 ⋯⋯開店30分前。


「すごい列だね」


 夏蓮が感嘆の声をあげている。

 開店まで時間があったので、適度に間隔を空けながら見張っていたのだが、ゾロゾロと人が1列に並んでいる。


「ああ、人気みたいだな」


 魔王もやれば出来るということなのだろうか。


「とはいえ、これだけの人気だ。中に入るには相当苦労しそうだが⋯⋯なんで、私達は列に並んでないんだ!?」

「いや、だって俺⋯⋯こういう店に入ったことないし。魔王が外に出てきたの時にでも事情を訊きにいこうかなーなんて思ってて⋯⋯」

「この小心者(チキン)が!」


 シルフに叱責をもらう。


「ぐっ⋯⋯。流石に幼女に(ののし)られても嬉しくねえな」

「⋯⋯別に、喜ぶものでもないと思うけどね」


 まあ、そうなんだけども。



 雑談も程々にして、俺はこの状況でも出来ることをしておく。


「⋯⋯この店って、大元の企業があるんだよな」

「? そうなのか?」

「おう。従業員の半数以上が竜らしい」

「ほう。()か⋯⋯珍しいな」



 この世界には、3つの種族がある。

 繁栄の象徴である人。

 恩恵の象徴である精霊。

 そして、恐怖の象徴である龍だ。

 とは言っても、こう言われていたのはずっとずっと昔の話で、今はあまり関係がない。



「とりあえず、今抑えておくべき情報は、竜は人のような姿に変化(へんげ)出来ること⋯⋯だな」

「へー。じゃあ人と竜には変化してても違いがあるの?」

「おう。尻尾と角はどんなやつでも残るらしい」


 俺は、誰かに知識をひけらかすという貴重な場面に浸る。⋯⋯だが、今更ながらに気づいた。


(あれ⋯⋯? じゃあなんでチトセは完璧(かんぺき)に人になれるんだ⋯⋯?)

(⋯⋯さあな。私は深く関わってないから知らないが⋯⋯今から来るあいつなら、よく知っているだろうな)

(あいつ?)


 そこで辺りが急に騒がしくなったため、俺は顔を上げる。


「おい、聞いたか!? 今からあのお方が来るらしいぞ!?」

「何!? あの人が!?」

「みんな逃げろー!!!!」


 店に列を作っていた人々が一目散に逃げ出す。手を取り合って、とにかく速く。店の前から去っていく。


「なになに!? どういうこと!?」

「話してる暇はなさそうだな。⋯⋯来るぞ! 爆風に備えろ!!」


 シルフが言った直後⋯⋯彼方の空から、()()が落ちてきた。それも、超高速度で。


「う、うおおお!!」

「くっ! これで押し負けるとは⋯⋯!」

「なに!?? ていうか、あの人誰!?」


 超高速度で落ちてきたそれによって巻き起こった爆風に、俺とシルフは踏ん張るだけで手一杯だ。唯一、魔法で多少余裕のある夏蓮も、未知の展開で戸惑っているようだ。



 ⋯⋯⋯⋯やがて、風が吹き止み、この風の発生源が視界に入る。


「⋯⋯え? もしかして⋯⋯⋯⋯」

「そう、龍じゃよ。そしてドラゴニア・カンパニー(仮)の代表取締役じゃ」


 俺の疑問に間髪入れずに目の前の彼女が答える。


「ふむ⋯⋯お主があの()が言っていた鈴木翔太か」


 出る所は出ていて、引っ込む所は引っ込んでいる体型。それでも、最も目を引くのは、見るからに硬そうな鱗の付いた尻尾と、角だった。


「初対面の相手をジロジロ見るとは⋯⋯ぶちのめされたいようじゃな?」

「あ、いえ、口調が誰かと似てるなーと思っただけ―――」


 そこから先、俺の意識は少し、途切れる。



ここまでお読みいただきありがとうございます!

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