3 ここに来てか!?
「翔ちゃん⋯⋯ちょっと」
「ん? なんです?」
フローラさんに手招きされ、俺は部屋を出る。⋯⋯俺に用事なんて珍しいな。
「なんだフローラ。私に用事か?」
「うーんとね⋯⋯正確には2人に用事かしら」
「?」
「ここでは話しづらいわ、ちょっとこっちに来て」
案内されたのは、いつか使ったことのある会議室だった。
「まずはこれを見てちょうだい」
「⋯⋯これは、」
見せられたのは、紙で出来た名刺サイズのカードだった。
「⋯⋯反応に困るんだが」
「確かに」
カードには「龍娘♡」と書かれており、如何わしい雰囲気を醸し出している。
「この⋯⋯カードが⋯⋯! 出てきたのは! 最近のことでね⋯⋯!!」
言いながら、フローラさんはカードをミシミシと握り締めていく。
「ま、待てフローラ! これだけじゃまだわからないだろ!?」
俺のおかげ(?)で知らなくてもいいことを色々と知ってしまったシルフがフローラさんを宥めている。
「じゃあこれも見て!」
「⋯⋯う、うわあ」
「⋯⋯⋯⋯」
次に見せられたのは魔王がいつも着ている服の1つだった。⋯⋯そこに、キスマークがある。
それは、俺にはまだ早いと思います。そしてシルフに至っては頬を真っ赤に染めて黙ってしまっているんですが⋯⋯。
「あと! あの人の通話履歴を見てみたら、知らない女の名前が出てきたのよ!?」
う⋯⋯魔王は確か自分の端末にパスワードを入れていたのに、開けられたのか。「誰にもわからないだろうな!」とか得意げに語っていたはずなんだけど⋯⋯。
「ということで! あなた達には、あの人の身辺調査を依頼します!!」
(⋯⋯自分でやらないのか)
(お、おう⋯⋯確かにな)
「もちろん、私も別で追うわ」
な⋯⋯なるほど、別々で動くのか。
「いい? この作戦は絶対に遂行しなければならないミッションよ」
「は⋯⋯はい」
フローラさんの必死な形相を見て、シルフが怪訝な顔をして尋ねる。
「それで、報酬は? ⋯⋯そこまでの任務なら、さぞかしすごい代物を用意してくれるんだろうな?」
「そんなものはないわよ」
スバっと、彼女はそう言い切った。
「⋯⋯は?」
これには俺も驚く。「依頼する」と言ったのに、報酬がないとは。
「その代わり、脅迫するわ」
「?」
「??」
2人して頭に疑問符を浮かべたのを確認して、フローラさんは懐から何かを取り出す。⋯⋯そして、それに付いていたボタンを1つ押した。ピッと。
『うええん! しょうた〜』
『泣くなシルフ、大丈夫だって!』
『だって! だって⋯⋯白くて苦いの飲んじゃったよぉ〜』
『「ボディーソープ」な! 頼むから紛らわしいこと言わないでくれ!!』
⋯⋯しばしの沈黙。
それを破ったのは、フローラさんだった。
「ちなみに、マッサージの時の音源もあるけど⋯⋯聞く?」
「よし引き受けた! 風の大精霊の名にかけて必ず完遂させてみせよう」
「⋯⋯あの、俺の拒否権は?」
「「ない!!」」
「ですよね」
今、初めてフローラさんのヤンデレ属性に触れた気がした。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
毎度毎度、遅筆ですみません。
次回は1日空けての投稿になると思います。
ちなみに、「幕間 魔王城編」にて、ボディーソープのくだりは登場しています。




